さまざまな「クラブ」への入会は富裕層コミュニティへの接触の手段となる(写真はイメージ)


「ロータリークラブ」という名前はもちろん聞いたことがあるはずだ。元々はアメリカで誕生した奉仕の精神を重んじて活動する親睦団体である。

 日本には現在11万人を超える「ロータリアン」(ロータリークラブ会員)がいると言われている。世界的に見れば100万人を超えるメンバーがいるようだ。実はかくいう私も、かつてロータリアンであったことがある。

 ロータリークラブの活動は、いわゆるフィランソロピー的な慈善活動に留まらない。場合によっては世界各国のロータリークラブと連携して基金を集め、学校を創設するなど、いわば主体者としての慈善事業を目指す団体にもなりつつあるようだ。

 寄付をするという行為に加え主体者の1人になるという発想は、以前、本コラムでも紹介した、寄付型の事業を興すベンチャーフィランソロピーという概念とよく似ている(参考「『お金持ちの役目』を果たすお金持ちが増えている」)。学校創設の例で言えば、教師やスタッフなどの雇用も生み出しているわけだから、篤志の表れとして理解しやすいケースの1つだと思われる。

世の中は「クラブ」だらけ

 さて、アジア富裕層マーケティングを考えていく場合、やはり「富裕層コミュニティはどこに存在するのか」という話に行きつくことが多い。私の通常のビジネスの中でもアジア富裕層のコミュニティを探し続けることは基本的な命題の1つだ。

 手始めに考えられるのが、ロータリークラブのような地元のクラブの情報を収集する方法だ。

 日本にいると感じにくいが、世の中は実は「クラブ」だらけだ。ロータリークラブやライオンズクラブはメンバーも多く、グローバルな組織となっている。

 例えば、東京には「東京アメリカンクラブ」という会員制社交クラブがある。いわゆるプライベートクラブであり、ビジネス活動の拠点の1つとしてクラブが提供している場所を活用する会員が多い。

 見方を変えれば、銀座のクラブも一件一件が小さな社交組織と言えなくもない。実際にお客さん同士でゴルフコンペをやることもあるくらいだから、実態としてはプライベートクラブに近いものがある。

ぜひ一度ビジター体験を

 ビジネスにつながるのは時間がかかるかもしれないが、急がば回れで考えれば、アジア進出とロータリークラブへの入会をあわせて考えるのは戦略の1つになるだろう。

 ロータリークラブの会員になるメリットを整理してみよう。感覚的に言えば、日本のロータリアンの過半数は富裕層ファミリーと言ってよいと思う。これが海外になるとさらに比率が高まる。アジア圏に目を移せば、ローカル富裕層だけでなく欧米のリタイヤ組も混在するので、顔ぶれは多彩で交流も楽しい。

 ロータリアンは他のロータリアンをよく家に招くので、海外では見たこともない大きな家に招待されることがある。ビジネスの話題にはなかなかならないが、そうした時間を何年か共有し続けることで、初めて仕事の話も普通にできるようになるというわけだ。

 ロータリークラブは少し荷が重いという向きには、プライベートクラブをお勧めする。東京には前述の東京アメリカンクラブがあるし、シンガポールには「タングリンクラブ」というローカルのプライベートクラブがある。ビジターとして訪れてみるとよく分かるが、メンバーは結構な頻度でクラブのレストランや喫茶、会議室などを利用している。

 香港やシンガポールには、イギリス統治時代の名残として多くのプライベートクラブがあるので、ぜひ一度ビジター体験してみることをお勧めしたい。アジア富裕層マーケティングに打って出る際の、最もコスト効率が良く中身のある現地調査となること請け合いだ。

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筆者:増渕 達也