「そもそも、中国米を混ぜるなんて……。いま中国米は1キロ249円ほど。でも1キロ260円で滋賀県産こしひかりが買えるんです。わざわざ(安くはない)中国米を買って混ぜるなんて、そんなリスクを犯す理由がありません」

語気を強めて語るのは、JAグループ京都の米卸業者『京山』の担当者。この『京山』が販売していた国産こしひかり4袋を産地判別検査したところ、そのうち3種に中国産米が混入されていたと、『週刊ダイヤモンド』2月18日号が報じたのだ。

週刊ダイヤモンドが検査を依頼した研究所では、米に含まれる、同じ元素でありながらわずかに重さが違う“安定同位体”と呼ばれる物質の構成比から、産地を調べている。

同誌によれば、『京山』が販売する「魚沼産こしひかり」は10粒中4粒が中国産米と判定。「滋賀こしひかり」は同6粒が中国産米と判別された。

『京山』はJA京都の傘下にある米卸業者。JAをも巻き込む、ブランド米の“産地偽装”疑惑に米業界は騒然――。だが本誌の取材に猛然と反論するのは、記事で「黒」のレッテルを貼られた『京山』の担当者。

「あの検査結果は絶対に間違っています!ウチには普段から農水省の抜き打ち検査もあり、また外部機関である穀物検定協会の人間も常駐していて、外部のチェック機能も働いているんです。そもそも、“安定同位体”による検査は、まだ技術が完全には確立されていません。だから正式な産地検査には、米のDNAを調べるのです。ダイヤモンドさんが頼んだ研究所ではDNA検査もやっているのに、なぜか今回、そちらの結果は記事に出ていません。おそらくDNA検査では国産米という結果が出ているのでしょう。裁判で、ダイヤモンドさんからこのDNA検査の結果が開示されれば、必ず我々の身の潔白を証明できると思っています」

専門家は、今回の記事をどう見ているのか。元農水省の食品Gメンとして食品偽装の監視、摘発を行ってきた『食の安全・安心財団』の中村啓一事務局長は、こう話す。

「正直なところ、まだ(真偽は)わからないですね。記事で疑問なのは、農水省の発表では、13〜15年度の中国産うるち精米短粒種の輸入実績は“ない”とされているのに、では混入されているという中国産米は、どこから手に入れたものなのかと。農水省の立ち入り検査の結果が出るまでは、何とも言えない状況ですね」

天下の大スクープか、大誤報か――そういう状況だというのだ。

記事が出て2日後の2月15日、『京山』とJA京都は、記事を“事実無根”として損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。本誌は、『京山』側の反論について、発行元のダイヤモンド社に回答を求めた。

「私どもとしましては、記事の内容、取材は正当なものと考えております。京山側が提訴したという報道は目にしておりますが、現時点では、お答えできることはありません」(総務部担当者)

何よりも気になる“食の安全”。一日も早い解明を――。