マサチューセッツ工科大学(MIT)が出版している技術誌MIT Technology Reviewが、「2017年に知っておくべき10個の革新的技術」をピックアップしています。2016年版と同じように、2017年も期待の次世代技術をGIGAZINE内の記事を中心にまとめてみました。

10 Breakthrough Technologies 2017

https://www.technologyreview.com/lists/technologies/2017/

◆01:Reversing Paralysis(麻痺の逆転)

脊髄を含む中枢神経系は、末梢神経と異なり一度損傷すると修復・再生されることはありません。そのため、脊髄などを損傷し、手足の運動能力や痛覚などが麻痺すると、これを治療することは非常に困難になります。そんな、麻痺に対する有効な治療法として期待されているのが、脳に直接チップなどを埋め込む脳インプラント技術です。

実際、脳インプラントの実験は既に行われており、2016年4月には総合科学誌のNatureで、脳にチップを直接埋め込むことで脊髄を介さずに脳の信号をバイパスして右腕を動かす、という事例が報告されています。

脳にチップを埋め込んで四肢麻痺の人が腕を動かすことに成功した「神経バイパス」とは? - GIGAZINE



他にも、脳にチップや電極を埋込み、機械の腕を動かすという取り組みも行われています。

「考えるだけ」でロボットアームを自在に操る女性がステルス戦闘機F-35を飛ばすことにも成功 - GIGAZINE



チップを埋め込んだ脳とコンピューターの接続に成功し四肢麻痺の人が「感覚」を取り戻す奇跡 - GIGAZINE



ただし、脳インプラントを用いた「神経バイパス」技術の実現にはまだまだ超えなければならないハードルが高いようで、MITは実現には「10年から15年ほどかかる」とみています。

◆02:Self-Driving Trucks(自動運転トラック)

「自動運転」と聞けば、Googleやテスラなどの名だたるIT企業がこぞって開発を進める自動運転カーを想像しますが、MITは2017年に注目すべき技術に「自動運転トラック」を挙げています。実際、自動運転技術がトラックに採用されれば、既存の物流を大きく変える可能性があるということで、ドイツに本拠を置く自動車メーカーのダイムラーは自動運転トラックの走行試験を進めています。

世界で初めて商用の自動運転トラックが公道での走行を認可される - GIGAZINE



物流を劇的に変え得る自動運転トラック「Freightliner Inspiration」の試験走行をダイムラーが公開 - GIGAZINE



また、ヨーロッパでも自動運転トラックに関する研究が進められており、複数台のトラックが互いに通信して隊列走行する「Platooning」という技術の大規模実験が行われました。

互いに通信して隊列走行できる自動運転トラックが欧州横断に成功 - GIGAZINE



さらに、オンラインタクシー配車サービスのUberが自動運転トラック技術の開発を進めるスタートアップ「Otto」を買収し、完全自動運転のトラックで荷物の輸送実験を行っていることも報じられています。

Uberが自動運転トラックの「Otto」買収&ボルボと共同で自動運転タクシーを今月中に稼働 - GIGAZINE



Uberが初の自動運転トラックでの輸送に成功、運んだ荷物はバドワイザー4万5000缶 - GIGAZINE



このようにさまざまな企業が自動運転トラックの開発に力を注いでいるわけですが、アメリカには全国で170万人ものトラック運転手がおり、自動運転トラックが登場すれば大量のドライバーが失業してしまうということで問題にもなっています。

自動運転トラックの登場で大量のドライバーが失職の危機 - GIGAZINE



なお、MITは5〜10年で自動運転トラックが実現すると予測しています。

◆03:Paying with Your Face(顔で支払い)

中国のスタートアップ「Face++」が開発する、顔認証APIは双子を判別できるくらいに高精度な技術です。Face++のように、顔認証技術は近年急速に進歩しており、Googleが顔パスで買い物ができる決済サービス「Hands Free」を計画していたり……

スマホがあれば「顔パス」で買い物できる決済サービス「Hands Free」をGoogleが2015年中に開始予定 - GIGAZINE



Amazonが自撮り認証で支払いが可能になる新技術の特許を出願していたりと、決済サービスでの活用が模索されています。

Amazonが「自撮り認証」で支払いが済ませられるようになる新技術の特許を出願 - GIGAZINE



また、中国では顔認証システムを用いたハイテクパトカーが登場しており、パトロールするだけで半径60メートル内にいる犯罪容疑者を見つけ出すという、プライバシー問題はさておき、近未来を感じさせるテクノロジーの活用法が提起されています。

顔認識システムを搭載し周囲をスキャンするだけで犯人を見つけ出すハイテクパトカーが登場 - GIGAZINE



さらに、パスポートの代わりに顔認証を用いる計画がオーストラリアで推進されており、世界的にさまざまな分野で顔認証機能が用いられるようになる可能性は十分にあります。

顔認証&指紋スキャンをパスポートの代わりにする計画をオーストラリアが推進中 - GIGAZINE



なお、Windows 10に搭載されている顔認証ログイン機能「Windows Hello」一卵性双生児を見分けることができるのかを検証実験する、という試みもあります。

Windows10の顔認証ログインは一卵性双生児を見分けることができるのかを検証実験 - GIGAZINE



◆04:Practical Quantum Computing(実用的な量子コンピューティング)

コンピューターの「物理的な限界」を超えることが可能と言われるのが、量子コンピューターです。量子コンピューターがどのように従来のコンピューターと違うのか、そもそも量子コンピューターとは何ぞや?といった疑問は、以下の記事を読めば解けます。

従来のPCの1億倍高速な量子コンピューターはどのような仕組みで動いて物理的限界を突破しているのかがわかるムービー「Quantum Computers Explained」 - GIGAZINE



総合科学誌のNatureでは、「2017年は量子コンピューターが『研究』という段階を超えて『エンジニアリング』の領域に移行する年になる」と語られており、より実用的な量子コンピューター登場に向けた節目の年になると考えられています。

量子コンピューターは2017年に「研究」から「開発」の段階に移行するとNatureが発表 - GIGAZINE



なお、実用的な量子コンピューターの登場まで4、5年とMITは予測しています。

◆05:The 360-Degree Selfie(360度自撮り)

2013年頃から多く見かけるようになっていった360度カメラは、文字通りカメラの周囲360度を全て撮影可能なカメラです。360度カメラはさまざまなメーカーがリリースしており、それぞれ異なる特徴を持っています。

360度カメラの代表格である、リコーの「RICOH THETA」は過去にGIGAZINEでもレビューしています。難しい操作なしで、ボタンを押すだけでその場の空間をそのまま撮影してしまうかのような360度写真は、撮影したものを見てもらうよりも実際に自分で撮影した方がそのすごさを実感できるかも。

周囲360度を捉える全天球カメラ「RICOH THETA」を使ってみました - GIGAZINE



プロ顔負けの全天球写真・ムービーを簡単に撮影できる「RICOH THETA m15」レビュー - GIGAZINE



360度全方向を捉えて夜間・長時間露光撮影に対応、ライブストリーミングも可能な高機能天球カメラ「RICOH THETA S」実機レビュー - GIGAZINE



低価格なのに簡単かつ高画質な360度写真の撮影が可能な「RICOH THETA SC」でどんな写真が撮れるのか確かめてみた - GIGAZINE



球状の360度カメラである「Bublcam」も過去にGIGAZINEでレビューしています。

周囲360度の風景をそのまま切り取って映像まで撮れるカメラ「Bublcam」を使ってみた - GIGAZINE



Samsung初の360度カメラ「Gear 360」は、VR用の映像も撮影可能です。

目玉のような前後2つのレンズ搭載でVR映像も撮影できる360度カメラ「Gear 360」が登場 - GIGAZINE



また、動画共有サービスの最大手であるYouTubeは2015年に360度ムービーに対応済。ムービー再生時に画面をドラッグして視点を切替えられるムービーは、360度カメラで撮影されたものです。

YouTubeがついに360度カメラの映像アップロードをサポートへ - GIGAZINE



360度カメラの流行を支えそうな技術のひとつに、「VRヘッドセット」があります。ゲーム分野での躍進がすさまじいVRヘッドセットですが、360度カメラで撮影した写真をVRヘッドセットで見れば、まるで写真を撮影した場所に立っているかのような没入感が味わえるため、その相性は抜群。

実際、VR向けに360度4Kムービーを撮影可能なカメラも登場しています。

360度VRムービーを4K画質で撮影可能なカメラ「Orah 4i」 - GIGAZINE



なお、360度カメラはそのほとんどがファインダーや撮影した写真を確認するためのディスプレイを持っていないため、スマートフォンと連携して使用するものばかり。技術の進歩に伴い360度カメラの価格帯も低下してきているため、将来的にはスマートフォンで360度カメラを使った自撮りができるようになるかもしれません。

◆06:Hot Solar Cells(ホットな太陽電池)

テスラの屋根タイルと全く見分けがつかない太陽光発電パネル「ソーラールーフ」など、市場にはさまざまな太陽電池が存在します。

テスラが家庭用バッテリー「パワーウォール2」と屋根タイル一体型太陽光パネル「ソーラールーフ」発表 - GIGAZINE



しかし、太陽電池はまだまだ非効率なものが多いそうです。太陽電池のエネルギー効率を高めることは、ソーラーパネルの普及ひいては代替エネルギーの推進につながる、地球のエネルギー問題にとって重要な取り組みでもあります。そんな中、MITは通常のシリコン太陽電池と比べ約2倍効率よく発電可能な太陽電池の開発に取り組んでいるそうです。

MITの他にも既存の太陽電池よりも優れたものを開発しようという動きはあり、イリノイ大学シカゴ校の研究者は「大気中の二酸化炭素を燃料に変換可能な太陽電池」を開発し話題となりました。

二酸化炭素を太陽光だけで燃料に変えられる画期的な太陽電池 - GIGAZINE



◆07:Gene Therapy 2.0(遺伝子治療 2.0)

極めて稀少な疾患であるアデノシン・デアミナーゼ欠損による重症免疫不全症(ADA-SCID)の治療法となる「Strimvelis」や、リポプロテイン・リパーゼ(LPL)遺伝子をLPL欠損症患者の治療薬とする「Glybera」など、近年、遺伝子治療が大きな躍進を遂げています。

著名な遺伝子治療法以外にも、人間の老化に対する初の遺伝子治療が成功した事例などが確認されており、2017年は遺伝子治療がさらに大きく進歩する年になるかもしれません。

人間の老化に対する初の遺伝子治療が成功か - GIGAZINE



◆08:The Cell Atlas(細胞の地図帳)

「細胞」の名付け親であるロバート・フックも驚愕すること間違いなしな、何百万とある個々の細胞を現代の最先端技術を用いて撮影・観察するという次世代のメガプロジェクトが計画されています。このプロジェクトの目的は「人体は実際にどのように作られているのか」を包括的に明らかにすることで、そのために「細胞の地図帳」つまりは「人間の体細胞マップ」を構築することが計画されているそうです。

このような地図を作ることは人体の特徴をより正確に分析するのに役立つそうで、何百人もの脳データを基に、脳を180の部位に分けた新しい脳地図を作る、というマッピング計画も存在します。

新しい脳地図作成によって人間の脳の部位や特徴をこれまでより正確に分析できる可能性 - GIGAZINE



◆09:Botnets of Things(モノのボットネット)

2000年には既に存在していたボットネットですが、近年では悪意のあるハッカーがモノのインターネット(IoT)と呼ばれるインターネットにつながったデバイスを利用し、ボットネットを形成して史上類を見ない規模の分散型サービス拒否攻撃(DDoS攻撃)を行う事例が報告されています。

セキュリティカメラをハッキングしてボットネットを形成し、1秒間に3万5000回ものHTTPリクエストを送信するDDoS攻撃や……

世界中の防犯カメラを駆使して行われる大規模DDoS攻撃の存在が明らかに - GIGAZINE



毎秒1テラビットを超える驚異的なトラフィックのDDoS攻撃などが実行されました。

毎秒1テラビットという史上空前のDDoS攻撃が発生、攻撃元はハッキングされた14万5000台ものウェブカメラ - GIGAZINE



セキュリティ専門家いわく、「インターネットに接続している端末が潜在的な脅威を生み出している」とのことで、IoT製品の危険性が問題視されているのですが、IoT製品を扱う側にも問題があるようで、「セキュリティがザル」としか言いようのないユーザー名やパスワードが使用されていたことも明らかになっています。

50万台のIoTデバイスを乗っ取ったDDoS攻撃「Mirai」の引き金になったダメすぎるパスワード60個 - GIGAZINE



◆10:Reinforcement Learning(強化学習)

人工知能関連の用語としてよく耳にする「ディープ・ラーニング」は、2013年度のMITが選ぶ注目すべき革新的技術10選まとめに選出されていました。しかし、2017年は「ディープ・ラーニング」ではなく「強化学習」に注目すべきとのこと。

Googleが開発したゲーム専用の人工知能「DQN」や、Google DeepMindが開発する人工知能の学習形態も「強化学習」です。

Googleの人工知能「DQN」が人間より上手にプレイできるゲームとできないゲームの境界線 - GIGAZINE



Google「DeepMind」の人工知能は赤ん坊のように「触って覚える・判別する」能力を学習したとの発表 - GIGAZINE



人工知能の進歩にとってなくてはならない要素としても、「強化学習」が挙げられています。

さまざまな分野で大活躍の「人工知能」で注目すべき5つのポイント - GIGAZINE