日産を電撃退任したカルロス・ゴーン氏(UPI/アフロ)

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 仏自動車大手のグループPSA(旧プジョーシトロエングループ)は、米ゼネラル・モーターズ(GM)の欧州子会社、独オペルの買収を検討し始めた。実現すれば、新車の販売台数は410万台となり、仏ルノーを抜き独フォルクス・ワーゲン(VW)に次ぐ欧州第2位に浮上する。GMは欧州から事実上、撤退する。オペルの英国ブランド「ボクソール」も買収対象だ。

 2014年、ルノーの元最高執行責任者(COO)、カルロス・タバレス氏がPSAの最高経営責任者(CEO)に就任して再建を進めた。その後、業績は上向いてきたとはいえ、16年の年間販売台数は315万台にすぎない。世界市場は、「1000万台クラブ」に入っているメーカーが主導している。それは独VW、トヨタ自動車、GMの3社だ。PSAのライバルであるルノーは、日産自動車からの配当で息をついているような状態だが、日産・ルノー・三菱自動車のトライアングルで「1000万台クラブ」入りを目指している。PSAとしても、生き残るために是が非でも500万台は売りたいところだ。

 タバレス氏といえば、ルノーCEOのカルロス・ゴーン氏に「早く席を空けてくれ」と迫り、逆に切られてPSAに移った経緯があるだけに、ルノーに対する闘争心は半端ではない。PSAがルノーを超えて欧州第2位の自動車会社になれば、タバレス氏を切ったゴーン氏の経営者としての“目利き”が問われることになる。

 PSAのタバレスCEOと独メルケル首相は2月21日、電話会談した。独政府によると、タバレス氏はメルケル首相に対し、オペル買収後も「オペルの独立は保ち、工場、投資、雇用は保証する」と述べたという。タバレス氏は欧州の自動車再編で、中心人物のひとりになった感がある。

●日産のEVは売れていない

 一方、GMはオペルを売却して欧州市場から事実上、撤退する。16年12月期(通期)の欧州事業は2億5700万ドル(約291億円)の赤字で、前期の8億ドルの赤字からは改善したが、お荷物であることに変わりはない。英国の欧州連合(EU)離脱に伴うリスクが顕在化する。2月7日のGMの決算記者会見でチャック・スティーブス最高財務責任者(CFO)は、「離脱決定がなければ(16年12月決算で)経営目標の赤字脱却を達成できていた」と述べた。GMは17年12月期(通期)も欧州での赤字脱出を目標に掲げているが、欧州ではブランド力がない。17年通期も英国のEUの離脱で3億ドルの費用が予想される。

 GMにしてみれば、独VWと販売トップの座を争う中国市場と、ドナルド・トランプ政権下で投資増を強いられることになる米国に経営資源を集中したいところだ。欧州事業の売却によって得た資金は、自動運転車など次世代技術への投資に充当する考えだ。

 GMはPSAと12年2月に資本・業務提携し、PSAに対して7%出資した。だが、PSAは仏政府や中国・東風汽車集団の支援を受けたことからGMとの資本提携を取り止め、欧州での小型車開発など業務面での提携に限定してきた。そんなPSAが今回、GMから欧州事業を買収することを検討しているのだ。

 対する日産・ルノー・三菱自グループは、16年の世界販売台数が15年比で17%増え、996万1347台になった。16年10月に日産が34%出資した三菱自が連合に加わったため、伸び率が大きくなったようにみえる。会社別の内訳は、日産が2.5%増の555万9902台と過去最高で、ルノーは13%増の318万2625台、三菱自は3%減の93万4013台だった。

 そんな日産・ルノー・三菱自グループの主力商品はEV(電気自動車)だ。ゴーン氏はEVをエコカー(環境車)の本命と位置づけ、その開発に5000億円を投入して10年12月に世界初のEV「リーフ」を日米で同時発売した。

 だが、日産・ルノー・三菱自グループ全体の16年のEV販売台数は、8%増の9万4265台だった。これは、三菱自の「アイ・ミーブ」シリーズを含めての販売台数だ。

 日産は16年末までにリーフを「25万台以上を販売している」と、EV先駆者としての実績を誇るが、6年間で25万台ということは年平均で4万台強だ。日産・ルノー・三菱自グループのEV累計販売台数は、16年末で42万4797台。EVは日産の“戦略カー”のはずだが、苦戦は明らかである。
(文=編集部)