■ネット銀行最大の課題「セキュリティ問題」はいかにして解決されたか

当時、浮上した課題の主だったものを紹介しよう。

・災害時などインターネットが使えないときはどうするか
・暗証番号はハッキングされないか
・本人確認は正しく行なえるか
・不正に口座はつくられないか

これらの課題解決にあたり、中心的な役割を果たしたのが、現在、ジャパンネット銀行のリスク管理部長を務める早川浩功氏だ。

早川氏が陣頭指揮をとりつつ、災害時のリスクについては、インターネットの他にダイヤルアップ(電話回線に繫ぐ)の方法を設けることで対応。また、ログイン時のパスワード流出リスクについては、ユーザーが入力したら即、暗号化し、データベースに登録するという仕組みで対応した。

そして、もっとも手を焼いたのが、本人確認の作業だった。これについては、当時、日本初だったワンタイムパスワードを導入することで解決したという。

この技術は、本人以外の人間が口座情報などを盗めないよう、本人がパスワードを入力から一分が経過すると、そのパスワードが無効になってしまうという「使い捨て」のもの。当時、セキュリティ技術の主流だった「乱数表」に対して指摘されていた脆弱性の大部分を解決したのが、このワンタイムパスワードだった。

上記のエピソードがおさめられている、『12人で「銀行」をつくってみた―――「いつでも、どこでも」、便利な日本初のネット銀行はこうしてできた。』(ダイヤモンド社刊)。

本書では早川氏以外にも、立ち上げ期から関わり、現在は四代目の代表取締役社長を務める小村充広氏をはじめとして、「日本初のインターネット専業銀行設立」に奔走したメンバーが登場する。

今まさに新規事業の立ち上げに奔走しているビジネスパーソンはもちろん、現状をどうにかして打破したいと思っている読者にとっても励みになる一冊だろう。

(新刊JP編集部)

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