琴奨菊が優勝した時もそうだった。果たして、次の場所も期待していいのだろうか? という点だ。案の定、琴奨菊の次の春場所は綱取りどころか8勝7敗と勝ち越すのがやっとの状態だった。それからというもの、優勝どころか二場所連続負け越して今年春場所では大関陥落の憂き目を見た。

 もうそれは過去の事とばかり、新横綱となった“稀勢の里フィーバー”は、一向に収まる気配を見せない。横綱昇進からすでに半月以上経ったというのにだ。
 2月9日には郷里の茨城県に凱旋し、県民栄誉賞の授与式が行われたが、会場の茨城県庁には男女ノ川以来81年ぶりとなる同県出身の新横綱をひと目みようと、1200人ものファンが押し掛け、大変な盛り上がりようだった。
 その後、出身地の牛久市に立ち寄ったが、こちらには500人あまりの市民が集まり、稀勢の里も「たくさんの方々に来ていただいてありがたい。本当に嬉しい」と喜びを隠さなかった。

 この4日前の5日には、3月12日から始まる春場所(エディオン大阪アリーナ)の前売り券が発売されたが、15日間分すべてが即日完売。春場所も綱取りを決めた初場所に負けない稀勢の里旋風に包まれるのは確実だ。
 「マスコミもかなり過熱気味です。2月1日からまわしを締めて本格的な稽古を開始したのですが、稽古初日に詰めかけた報道陣はなんと40人。これには稀勢の里本人もビックリしたようで、『見ない顔が多いなあ』と目を丸くしていました」(担当記者)

 心配なのは、この過熱する一方の人気に振り回され、自分を見失ってしまわないかということだ。昨年、一足先に優勝し、綱取りに挑んだ2人の大関、琴奨菊と豪栄道がそうだった。その中でも、日本出身力士として10年ぶりの優勝を成し遂げた初場所の琴奨菊フィーバーはすごかった。
 「本人も、このフィーバーに乗らなきゃ損だとばかり、各種のイベント、テレビなどに出まくりました。千秋楽から春場所の番付発表までのおよそ1カ月で、完全オフはたった1日。『たくさんの方に励まされたので、全然疲れはない』と話していましたが、その反動なのか、その次の春場所は綱取りどころか8勝7敗と勝ち越すのがやっとでした」(部屋関係者)

 豪栄道も優勝した翌場所は9勝に終わっている。稀勢の里は彼らの二の舞にならないのか…。
 救いは先代師匠(元横綱隆の里)の徹底した指導で、「後援者断ち」「友だち断ち」「イベント断ち」が身に染みていることだ。茨城に凱旋した翌朝も、しっかり稽古場に降りていた。
 この姿勢を貫く限り、横綱稀勢の里に気持ちの緩みはないはず。冒頭にも述べたが、最も怖いのは連続優勝を期待するファンへのプレッシャーかもしれない。稀勢の里“旋風”が“落胆”に変わらないことを願うばかりだ。