関東選抜Aを優勝に導いた流経大の渡邉。3得点・1アシストの活躍を見せた。写真:竹中玲央奈

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 各地域の大学選抜が集まって王座を争うデンソーチャレンジカップの第31回大会は、決勝戦で全日本選抜を破った関東選抜Aが優勝を果たした。この大会は3日間で3試合が行なわれるというハードな日程が組まれており、選手たちにとってはパフォーマンスを維持するのは簡単ではない。レベルも強度も高い試合が続くなかで、必然的に肉体的な疲労はやってくる。
 
 とはいえ、休んでいるわけにはいけない。試合に出て結果を残すことによって地域選抜から全日本大学選抜への“昇格”を勝ち取るチャンスがあり、何よりも多くのJクラブのスカウトが選手の視察にやってきている。プロを目指す者にとって、この大会で活躍するということは非常に大きな意味を持つのだ。
 
 そんななか、出場したすべての試合で高いパフォーマンスを発揮して目を引いた選手がいる。優勝した関東選抜AのFW渡邉新太だ。アルビレックス新潟ユース出身の彼は170センチと小柄なほうだ。ただ、その身体からは想像できない迫力のあるドリブル突破とクロスに対して点で合わせる嗅覚、そして左右両足から放たれる精度の高いシュートを武器とする“万能”型のストライカーだ。古巣・新潟のキャンプにも帯同して「攻撃面では通用した」と自信を付けた渡邉は、今大会でも自身の価値を大きく高めた。
 
 初戦の中国・四国選抜戦では先制された後、自ら奪ったPKと右サイドからのクロスに頭合わせて2得点を記録し、わずか2分で逆転をもたらす。
 
 続く準決勝の関西選抜戦でも、1-1で迎えた62分、左サイドを抜け出してGKを引き寄せ、中央へ絶妙なボールを配給。ディサロ燦シルヴァーノ(法政大)がこれを無人のゴールに蹴り込み勝ち越し点としたが、渡邉のパスで“勝負あり”だった。さらにその6分後にはディフェンスラインの背後に抜け出し、GKとの1対1を冷静にサイドネットに流し込んで試合を決定付けるなど、2試合連続でチームを勝利に導く大仕事をやってのけた。
 
 この連勝の中で3ゴール・1アシストを記録し、チームも全日本大学選抜との決勝戦へ駒を進めることが決まった。ただ、その時点でも「これは通過点ですね。全日本に勝つのが目標だし、勝たなければ何の意味もないと思う」と自らのパフォーマンスと、残した数字に満足することはなかった。
 
 というのも、かつては自身も全日本大学選抜の一員であり、“落選”を経験していたからだ。彼にとってこの大会は、全日本へ戻るためのリベンジの舞台だった。
 
「大学で一緒に練習をしている選手が入っていて、全日本が遠征に行っている間、自分は自チームで練習をしていて、あいつらはいない。そういう中で悔しい思いをしながら練習をしていたので、見返したい思いがあった」
2◆
 そして迎えた決勝戦で、渡邉は自身の武器をいかんなく発揮した。前半から圧巻の前への推進力とゴールを脅かすシュートを立て続けに見せる。しかし、全日本大学選抜のGK永石拓海(福岡大)の好セーブに遭いネットを揺らすことはできなかった。そのままピッチを後にし、チームがアディショナルタイムの決勝点で勝利を手にした際にはベンチでその模様を眺める形となった。
 
 最後は直接的に勝利に関与することはできなかったものの、大会を通じて見れば彼の活躍無くしてチームの優勝はなかっただろう。しかし、大会後に発表された2月末からのドイツ遠征のメンバーリストに渡邉の名前は載らなかった。
 
「今日点をとっていれば良かったんですけどね……。それが最後、遠征メンバーに入れなかった要因かなと」
 
 会場を後にする際にはその表情には悔しさが滲み出ていた。ただ、まだ本番までには時間は残されている。全日本への“返り咲き”を心に決めて臨んだ今大会で出色のプレーを見せたことを考えれば、この悔しさがさらに彼の成長を加速することは間違いないと言えるだろう。
 
 新潟が生んだ小柄なストライカー、流通経済大の渡邉新太が臨む大学ラストシーズンに、注目してほしい。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)