「鹿児島ゆアルテッドFC」のポスター。鹿児島は源泉数、公衆浴場数では全国トップクラスを誇る。画像提供:鹿児島ユナイテッドFC

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 鹿児島ユナイテッドFCは、鹿児島の温泉銭湯をPRしている。
 
 クラブ名の鹿児島「ユナイテッドFC」をもじって、「鹿児島ゆアルテッドFC」として各方面からスポンサードしてもらい活動。「湯」がないのではなく、「湯」がある鹿児島として、地元の「湯」をPRしている。
 
 僕の住居からゆっくり歩いて8分の所にも「太陽ヘルスセンター」という湯処があり、たまに汗を流しに利用している。
 
 ある日、そこのサウナでNHKの「しぶ5時」という番組を見ていたら、脳に障がいを持つバイオリニストの式町水晶さんの、バイオリンを通しての生き方がクローズアップされていた。
 
 サウナは長くて10分、しかし彼が登場したそのコーナーが興味深く、出られないまま20分弱を我慢して水風呂に……。
 そんな彼のメンタリティに共感できた。
 
 彼は学生時代、「いじめ」にも遭い、それをバネに障がい者として健常者に負けたくない、見返したいという気持ちでバイオリンを追求していったという。
 
 こうして文字で書けば簡単で軽く感じるかもしれないが、画面から伝わってくる彼の熱に感じさせられる物が多かった。「自分は弱いからと先に進もうとしない、やろうとしない」という人が少なくない世の中で、障がい者として健常者に闘争心むき出しでコンプレックむき出しであったと語るのである。
 
 スポーツでは当たり前の「負けて闘争心を持つ、認められず解雇され、レギュラーを外され闘争心が芽生え、変わる」などといったことはよく聞く話であろうが、脳に障がいを持つ少年が将来、未来に向けてバイオリンを通して健常者に負けたくないという気持ちを強く持ち、自分を支える。
 僕は凄い奴だと画面に釘付けになり、聞き入ることになった。
 
 その彼は「格闘技も大好きで……」と語りつつ、ある出来事を紹介した。
 
 それは式町さんのバイオリンを聞いた健常者である少年の手紙だった。その手紙には「僕も水晶さんのようになりたい」とあったそうだ。
 
 すると、健常者の少年からの言葉に、式町さんを支える「健常者への闘争心」に変化があったと……。
 そしてバイオリンを教えてくれた先生のもとを訪れると、その演奏に先生は「すべてがあなたの音なのよ」と語りかけ、今の闘争心が少し抑えられた音も、彼を支えることになった強い反骨心、闘争心も同じ素晴らしい音なのだ、という言葉に彼は涙していた。
 
 きっと、式町さんはいつも健常者という周りに氣を取られていた自分から「自分自身が何をしていくか?」「自分自身が何をしたいか?」と、矢印が自分に向けられたのだと思う。
 選手たちのサッカー人生も同じであろう。小学生の頃から隣の街にはライバルがいて、ちょっと遠くの離れた所にもライバルがいて、日本中にまだ見ぬ敵がたくさんいて……。「そいつらに負けないぞ!」とやって来たはずだ。
 
 それがいつの日か、氣になる対象がライバルの存在から自分自身となり、さらに自分自身さえよければいいという考えから、今度は人のために何ができるかと考え出す。
 
 サッカーの世界であれば、「日本サッカーの発展のために何ができるか?」であったり、監督であれば「ひとりの選手が、選手としてどう成長し続けられるか?」「もっとサッカーを愛する人間になってもらうために」……と人のためにと変わってくる。
 
 しかし、一方で「闘争心」なくしてはどんな世界でも成長はない。式町さんを見ていると、「生きる」ということにおいて、健康で生まれて来ただけでは健康とは呼ばないのではないかと思えてくる。
 
 強い闘争心を持って生き続けようとし、その道を一歩でも踏み出した人が健康であり、成功者に近づけるのでは。もっと「リバウンドメンタリティ」を、「この野郎、こんちくしょう」と見返すという気持ち、根性を持たなくてはいけない。
 
 サッカー界もそうだ。決して優勝しなければいけないという意味ではないが、ワールドカップに出場していれば安泰、ではいけない。
 
 何でもそうだが、忘れてはいけないことがある。日本もかつてはヨーロッパ諸国に二桁も得点されていた時代があったのでは……。最近であれば2014年ワールドカップだ。コートジボワールに負けて、コロンビアに歯が立たなかったことを覚えているだろうか?
 
 相手ではなく自分軸で進む事の許される日本サッカー界になりつつあるからこそ、もっとリバウンドメンタリティを強く持って進むべきだ。
 
 忘れてはいけないことに強い闘争心で向かっていかなくてはならないのだ。いたる場面で、心の弱さを多く感じるこの頃。
 
 脳に障がいを持つ彼のように、「絶対に負けたくない」という精神をもう一度思い出さなくては、と自分自身にも言い聞かせた。
 
 サウナに行って良かった(笑)。
 
2017年2月22日
三浦泰年