ブロッコリーやホウレンソウなどに多く含まれるルテイン(depositphotos.com)

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 <大事なスケジュールを忘れる><さっきまで持っていた財布やカギをどこに置いたかわからなくなる><資格に挑戦しても試験勉強が全然頭に入らない>......。

 40代にもなれば、昔のように頭が働かないと感じる人は増えていく。このまま脳は年とともにサビ付くばかりなのだろうか。

 しかし、中高年の頭脳には、若者に引けを取らない能力がある。それは「結晶性知能」と呼ばれるものだ。そもそもヒトの知能活動は、「流動性知能」と「結晶性知能」とに大別され――。

結晶性知能は60代頃にピークを迎える

 まずは流動性知能について説明しよう。これは、計算力や暗記力、集中力、さらに状況に即座に反応し素早く判断する知的反射神経のようなもの。この流動性知能は、18〜25歳くらいがピークで、その後は年齢とともに落ちていく。

 一方、結晶性知能とは、知識や知恵、経験知、判断力など、経験とともに蓄積される知能のこと。こちらは20歳を過ぎても年齢とともにどんどん伸び、通常は60代頃にピークを迎える。

 70〜80代にはなだらかに低下するものの、それでも20代に近いレベルを持続していける。

 そうでならば、ヒトとしての「円熟味」にも通じる結晶性知能を磨くことのほうが、知的な人生を過ごせるはず。

 そして最新の研究によると、ホウレンソウやブロッコリーなど、ごく身近な食品が、この力の維持に役立つことがわかったと、加齢医学専門誌『Frontiers in Aging Neuroscience』(電子版)の2016年12月6日号で発表された。

賢者は血中に「ルテイン」が多い

 研究を手がけたのは米イリノイ大学のチーム。今回、研究チームが注目したのは、「ルテイン」というカロテノイド色素が高齢者の知能に与える影響だ。

 ルテインは緑色の葉物野菜や、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜や卵黄などに含まれるが、とりわけホウレンソウに含有量が多い。

 ルテインを含む食品を多く食べると、高齢者に多い白内障などの目の病気のリスクが低減される可能性がある。また皮膚に過酸化脂質が蓄積することを防ぎ、肌のうるおいを保つ働きもあるといわれる。

 そして、研究者によれば「ルテインはおそらく脳に蓄積し、脳神経を保護する役割も担っているのではないか」という。

 研究チームは、65〜75歳の健康な高齢者122名を対象に、結晶性知能を測る標準的な試験(今回は特定の言葉の定義や理解力のテスト)を行った。

 さらに血中のルテイン濃度を測定するとともに、脳の各部の体積をMRIで調べ、特に結晶性知能を保つために重要だといわれている脳の側頭皮質に焦点をあてて評価した。

 その結果、血中ルテイン濃度の高かった人は結晶性知能の検査成績が高い傾向が見られ、その濃度の高かった人ほど右脳の「海馬傍皮質(かいばぼうひしつ)」の灰白質が厚い傾向が見られたという。

 「今回の分析から、右脳の海馬傍皮質の灰白質は、ルテインと結晶性知能をリンクさせている可能性が示唆されました」と主任研究者のアーロン・バーベイ教授は説明する。

 そして「推測の域を出ませんが、ルテインが脳に良いのは抗炎症性によるものか、あるいは細胞間の情報伝達を助けているためかもしれない」とバーベイ教授。今回の知見は、特定の栄養素が脳の加齢に影響し、認知機能の低下を遅らせることを初めて示したものだという。
アタマの伸び代にはホウレンソウが効く?

 結晶性知能は年を重ねるごとに蓄積され、結晶化して輝きを増して行く。情報を統合して理解する能力や分析力、コミュニケーション力なども含み、いわば人間の認知機能の総合力のようなものだ。

 年齢とともに脳細胞自体の数は減っていくが、結晶性知能が磨かれて、経験によって得た知識が連動するようになれば、より深い洞察や画期的なアイデアも誕生する。当然ながら高齢者の認知のみならず、ビジネスマンにも大切な能力なのだ。

 結晶性知能は80代でも伸ばすことは可能とさえいわれている。食生活でそれをサポートできるかもしれない今回の研究は、私たちを大いに元気づけてくれる。

 ちなみに研究チームのアロン・バービー博士は論文の中で「ルテインの血中濃度が高い人は、長年にわたりルテインを食事で摂取してきた蓄積だと思われる」とコメントしている。

 つまりサプリメントに頼ったり、三日坊主はダメ。普段からホウレンソウなどの緑黄色野菜や卵をたっぷり食べる食習慣をつけ、続けることが大切だ。人生の後半を知的に生きるためにも、まだ若い今から心がけたい。
(文=編集部)