(c)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

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 音楽のチャートでも、狭い範囲のファン以外にはほとんど認知されていないアニメ関連の作品がいきなり1位をとって一般の人を驚かすことはよくあるが、今週の動員ランキングは、映画も同じような状況になりつつあることを示している。「音楽シーンは他の業界の先行指標になる」とはよく言ったものだ。

参考:『劇場版 ソードアート・オンライン』はなぜ、現実と虚構を等価に描いた?

 今週の動員ランキングで初登場1位となったのは『劇場版 ソードアート・オンライン −オーディナル・スケール−』。驚かされるのはその数字。土日2日間の動員30万8376人、興収4億2576万2760円という成績は、先週1位の『相棒−劇場版IV−』が記録した今年の週末最高興収を早くも塗り替えるもの。これを全国151スクリーンで叩き出しているのだから恐れ入る(単純計算すると、先週末は1日に1つのスクリーンに1.000人以上が押しかけたことになる)。

『ソードアート・オンライン』は川原礫によるライトノベルのアニメ映画化作品。2012年と2014年に、いずれも半年間にわたってアニメのTVシリーズが放送され、アニメファンの間で幅広く支持されてきた未来のゲームを主題とするSF作品。今回の作品は、テレビアニメの映画化作品にありがちな過去の総集編的な作品ではなく、完全な新作となっている。

 この『ソードアート・オンライン』、昨年夏にはハリウッドのスタジオ、スカイダンス・プロダクションズが実写作品としてテレビシリーズ化することを発表済み(映画化の権利も同時に取得)。スカイダンス・プロダクションズといえば、『ミッション:インポッシブル』シリーズ、現行の映画版『スター・トレック』シリーズ、『ワールド・ウォーZ』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』などの製作で知られる大作中心の大手プロダクション(例に出して申し訳ないが、『バイオハザード』シリーズを製作している低予算作品中心のスクリーン・ジェムズなどとは製作会社として格が違う)。しかも、そのパイロット版の脚本を手がけているのは、『アバター』のプロデュースや『シャッター・アイランド』の脚本で知られるハリウッドの大物、レータ・カログリディスだという。先週末のランキングを最初に見て、「えっ? 『ソードアートなんちゃら』ってなに?」となったこちらの不勉強を恥じるしかない。

 3位に初登場したのは『1週間フレンズ。』。土日2日間で動員12万5000人、興収1億5300万円という数字は、2015年の『ヒロイン失格』以降の山賢人もの(と名付けたくなるくらい類作が多い)の中では最も鈍い出足となっている。女子中高生を対象とする事前のアンケートなどではかなり高い期待値が出ていた作品と聞いていたが、これは作品の評価、主演俳優への支持以前の問題として、一連の少女マンガ原作を中心とするティーン・ムービーというここ数年の人気ジャンルそのものに、そろそろジャンルとしての疲弊がきていることがうかがわれる。

 近年、女子中高生が複数の友達と連れ立って映画館に足を運ぶという行動形式が日常化したことで(例えば中年の男が一人で映画館に足を運ぶ洋画のアクション大作などと比べて)動員を膨らませてきたティーン・ムービーだが、毎週のように同じようなジャンルの作品が公開されれば、おのずとそこで選ばれる作品は限られてくる。自分はティーン・ムービーというジャンル自体に先入観や偏見を持たない立場であるが、今後はその作品内容と、何よりも製作本数に対して、よりシビアな判断が求められているのかもしれない。(宇野維正)