発表会で披露されたオレンズネロ。それぞれ芯径0.2、0.3タイプ

写真拡大

 オフィスや学校に欠かせない文房具「シャープペンシル」。単なる仕事や勉強の道具としてだけでなく、書きやすい、高性能のシャープペンシルはそれだけで作業効率も高めてくれるものだ。

 そんなシャープペンシルは、中高生の減少による少子化にもかかわらず、売り上げ自体は増加傾向にある。

 要因は、’14年度以降、市場には「折れない」「ノック不要」といった高機能・高付加価値を訴求した新商品が続々と登場。製図用を中心とする1000円以上の高価格帯シャープペンシルの需要が活発化しているためだと言われている(参照:矢野経済研究所)。

 そんななか、老舗文具メーカーぺんてるが、今月16日から出荷を開始させているのが、同社が「半世紀にわたり追求してきたシャープペンシル技術を結集した、究極のフラッグシップモデル」の、折れないシャープペンシル「オレンズネロ」だ。

◆「オレンズネロ」の書き心地は?

 発売に先立って行われたプレス向け発表会では、実際に「オレンズネロ」の試し書きイベントが行われた。

 記者も早速、実物を試させてもらったところ、握った時にずっしりとした重量感がある一方、書き心地はかなり滑らか。何より自動で芯が出るため、ノックを1度するだけで連続して書き続けられる点がラクラクだった。

 そんな「オレンズネロ」のお値段はずばり3000円(税抜き)。シャープペンシル1本の値段としてはなかなか手が出しにくい金額だが、そのワケを開発担当者らに聞いた。

◆月産わずか3000本の理由とは?

「通常、もっとも一般的なシャープペンシルは10前後の部品で構成されています。しかし、この『オレンズネロ』は合計28個もの部品で構成されており、また、生産数も100円のシャープペンシルが何万〜数十万本作られているのに対して、月産で3000本と1本1本手作りにこだわって生産しています」(マーケティング推進部の田島宏氏)

「『オレンズネロ』の開発のきっかけは、0.1の超極細シャープペンシルの技術を活かせる商品を作りたい!というところから始まっています。その点で、マーケティングではなく、これは”技術”ありきの商品です。なので、ターゲット設定もあえて行わず、『これを使いたい』『持ちたい』と思ってくれる人にだけ使ってもらいたいです」(デザイン室の伊藤智明氏)

 通常の3倍近くの部品で組み立てられたマーケティング度外視の逸品。それが3000円という高価格帯の理由である。しかし、それ以外にも「オレンズネロ」には、さまざまなこだわりが込められているという。

◆こだわった”筆記感”

 減り具合に合わせてペン先のパイプがスライドし、最後まで芯を折ることなく書き続けられる「オレンズシステム」。そして、ペン先のパイプが紙面から離れるたびに自動で芯が出てくる「自動芯出し機構」。この2つを搭載した「オレンズネロ」だが、開発部の担当者によれば、ぺんてるすべての商品にも共通する”あるこだわり”も「オレンズネロ」に込められているという。
 
「ぺんてる社内では、シャープペンシルの書きやすさのことを特別な言い方で”筆記感”と呼びます。これはうまく数値化できない指標なのですが、何度も繰り返して書き心地を確かめることにより、どの商品も書きやすい、筆記感に優れた商品になるようこだわっています」(シャープ企画開発部の伊藤好和氏)

 そう語るとおり、まさにこだわり抜いたぺんてるの逸品「オレンズネロ」。大量生産が難しいため、発売からしばらくは大型店600店舗で限定販売になるとのことだ。

 昨今のメールやSNS文化の浸透にもかかわらず、いまだに売上を伸ばしているシャープペンシル。その背景には、メーカー各社の絶え間ない技術革新が隠されているようだ。

<取材・文/井野祐真>