『宇宙戦艦ヤマト』完全新作:神田沙也加が語る、声優の醍醐味と覚悟

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アニメーション史に燦然と輝く不朽の名作『宇宙戦艦ヤマト』。そのリメイクである『宇宙戦艦ヤマト2199』の、ファン待望の続編となる完全新作シリーズ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』が二週間限定で劇場上映され、新たなる全七部作の伝説がついに幕を開ける。

その本作で、宇宙の平安を願い続ける伝説の女神テレサ役を、女優の神田沙也加が演じる。近年、声優としての活躍も目覚ましい彼女が、「本当の意味での声優デビューになる」と言った本作の話題をはじめ、声優という仕事の醍醐味や覚悟についてなど、赤裸々に語った。

―本作が「本当の意味での声優デビューになる」というコメントを拝見しましたが、出演が決まった時はどのような心境だったのでしょうか?

わたし自身もちろん知っているシリーズでしたし、根強いファンの方がたくさんいらっしゃいますよね。小さい頃などカラオケで大人が「宇宙戦艦ヤマト」の曲を歌っていて、名前をずっと聞いてきました。それがまた新たなプロダクトとして登場することは、大きいことですよね。そこに自分みたいな声優一本で活動してきたわけじゃない人間が入って、こういう大事なキャラクターを演じさせていただくことになって、今回はとても恐縮しました。

―日本人の間ですでに浸透している感、がヤマトはズバ抜けていますからね。

そうなんですよね。しかもファンの方の想いが、とても深い気がしました。以前ファンの方とお話した時に、「もうヤマトはですね!」と語気が強くて(笑)。そういうことを知れば知るほど、みなさんの想いが深ければ深いほど、恐れ多くなりますね。また、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のサントラが、『アナと雪の女王』が出てくるまでずっと一位を取り続けていたそうなので、それだけ長く愛されて続けている作品なのだと思います。それだけに重みや厚みを感じますね。


(C) 西粼義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

―「役作りが壮大すぎて」ということも言われていたそうですが、テレサのキャラクターの理解は大変でしたか?

そうですね(笑)。普段役作りをする際に、どういう背景があるのかなど読み込みをします。たとえば明るい、おとなしい性格などは理解しやすいですが、神様は見たことがないので、創造の範囲が広いですよね。誰も見たことがないキャラクターだけれど、ヤマトという世界観においては非常に象徴的な存在でもあるので、どういう声のトーンでインパクトを残そうかなとか、アフレコの初日までいろいろ考えて、考えて。緊張しました。

―あえて言葉で説明すると、どういう感じでしょう?

アフレコでは、「もっと神々しく」というリクエストがありました。神々しいって、難しいですよね。かわいいということではないので、十分に間をたっぷりととって、あまり抑揚をつけずに抑えて、抑えて、達観している感じというか、そういうことを表現しました。それでOKをいただいたので、波があるドラマチックじゃないほうがよかったみたいです。

―過去のシリーズ作品との連続性などは意識しましたか?

今回は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の姿に近い、何もまとっていない感じで登場するんです。だから、実際に新しく作られているものが、『宇宙戦艦ヤマト2』の方なのか『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の方なのか、気になっているファンの方も多いと思います。わたし自身も気になっていましたが、どこまでレギュラーの登場人物と関わっていくかも見所ではありますよね。そこが新しい展開となるかもしれません。

―アフレコも皆で集合して行うことは、初めてだったそうですね。

実技で練習していた養成所の時以来でした。本当にプロフェショナルの、今まで出演されている作品を拝見してきたような大先輩の声優さんたちと一緒だったので、迷惑をかけないようにしていました。皆さんの進行を妨げたくない気持ちが強かったので、リハーサルでとにかくつかみたくて、頭を柔らかくして現場に行って。テストで言われたことを本番で即座に体現できるように、ということに気をつけました。

―アフレコに正解はなさそうですが、その時に一番感じたことは何ですか?

人のカタチをしていて人でないものを演じることが初めてだったので、そういう意味では、アニメーションの世界では非現実的な役になることも可能ですよね。いろいろな自分の中の引き出しに今回は神というものを作らせていただいて、もう少しそれが構築されていったら、わたしにはこういう役柄の引き出しもあると言ってもいいのかなって。魔法を使ったり変身したり、そういう役柄にも挑戦して行けるかなと思いました。


(C) 西粼義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

―自分の中の可能性や選択肢が広がったような感覚ですね。

そうですね。想像できないような、実生活では経験できないような役柄にチャレンジできるかなって欲は出てきました。テレサと出会う前はどちらかというと、日常を切り取った役柄が多かったですし、アナも魔法を使うわけではなかったので、想像しうる人としての動作でしたが、自分が今まで観てきたアニメーション作品に出てくるような、変身する女の子のような話はいいなあと思います。

―そういうファンタジックな存在の場合、自分の経験や体験や知識、考え方などを頼りにするのでしょうか?

いえ、今回のテレサの場合、反対に自分自身をそぎ落としていく感じでしたね。シンプルに、シンプルに、本当に急がずに波を立てずに、フラットに、フラットに演じました。少しでも幅が振れると人間っぽくなる、生身っぽくなってしまうので難しかったですね。

―ヤマトは男子ウケするイメージが強いですが、女子の視点ではどこが魅力ですか?

今回のオファーを受けた後、さかのぼって過去の作品を観ましたが、女性側の気持ちも描かれていると思いました。『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』の森雪さんなどは、待って忍ぶ女性の姿も見せていて、これは女性の立場だったら辛いなあとは思いました。

―確かに、女性ならではの視点と感想ですよね。

そういう点でヒロインに感情移入したら、古代さんのことをもっと応援したくなったり、逆に男性特有の心理も理解できるようになったりするのかなとも思います。古代さんはカッコいいけれど、自分のパートナーだったら危なっかしいなと感じると思うので、そういう視点で本作を観ても楽しいと思います。

―そういう視点でヤマトに入っていく女子が増えていくといいですよね。

難しいとは思わず、気軽に観てほしいですね。現代はアニメーションの技術も進化しているので、映像的にも楽しめると思います。初めて知るような専門用語的な言葉もあると思いますが、その点は説明的なシーンもあるので、心配なく観ていただければと思います。


(C) 西粼義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

―以前のインタビューで、最近でもアナやガンバ、今回はテレサと、演じたキャラクターを背負ってしまうというお話をさせていただいた際に、「そういう覚悟があります」とおっしゃっていて。そこは変わっていないとは思いますが、今改めていかがですか?

そういう経験が増えていくことはうれしいし、自分があこがれている声優さんたちは、「この方といえば、この役」というものをお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。その役柄の声を出している姿を拝見すると、わーっと当時のことを思い出して「本物だ!」と思う、そういう感覚あるじゃないですか。だから、「この人だったら、この声だよね!」って思うキャラクターが自分の中に増えることは、うれしいことだと思っています。だから、「何々の声をやって」とか子どもやファンの方に言われたいほどです。

―声優としての意識が強くなったということですね。

それは自分でもわからないほど難しい感覚ではあるんです。ただ最近、いろいろな番組などに出させていただく時に、女優・声優という肩書きで紹介されることが増えました。それってうれしいことではありますが、声優としてはまだまだ一人前ではないので、まだまだプロと言ってはいけないような気もしています。そういう意味では、まだまだ新人。勉強中です。難しいです、声のお芝居(笑)。

―最後にうかがいますが、声優をしていて、何が一番楽しいですか?

年齢や背景やキャラクターの特徴が、神田沙也加の人生だけではなれないものが多いので、演じることで変身願望がちょっと満たされるという点がいいですね。今回は、いままで演じてきたキャラクターに比べて一番低い音程を使っていて、わたしは普段そこまで高く話さないので、よりしっとりした声色を出していることも楽しいところではありますね。

それと今回、アフレコの現場でも緊張感が違いました。ピリピリしているというわけではなくて、ものすごい空気のなかキャラクターそのものが生きている感じがしました。だからアフレコ中は、早くわたしも自分のテレサが生きていけばいいなあと思っていました。そういう感覚になることも、声優をしていて楽しいことではありますね。


SAYAKA KANDA
神田沙也加 1986年10月1日、東京都出身。女優・声優としてキャリアを重ね、「ピーターパン」「レ・ミゼラブル」「赤毛のアン」などの舞台に多数出演。声優としては、ディズニー映画『アナと雪の女王』日本語吹替版でアナ役に挑み、大きな注目を集め、第9回声優アワード主演女優賞を受賞。また、2002年には、歌手としてデビュー。近作では、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(2017年2月25日劇場上映予定)でテレサ役を演じるほか、ミュージカル「キューティ・ブロンド」(2017年3月21日〜シアタークリエ、4月5日〜全国公演)では、主演のエル役を務める。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第一章「嚆矢篇」
監督:羽原信義
原作:西崎義展
声:小野大輔、桑島法子、鈴村健一、大塚芳忠、麦人、神田沙也加ほか
2017年2月25日(土)より上映。
http://yamato2202.net/