「アナと雪の女王」など数々の作品で手腕を発揮

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 マイケル・ファスベンダーとアリシア・ビカンダーが夫婦役を演じたラブストーリー「光をくれた人」のトークイベントが2月22日に都内で行われ、本作の字幕翻訳を手がけた松浦美奈氏が魅力を語った。

 全世界で40以上の言語に翻訳されたM・L・ステッドマン氏によるベストセラー小説「海を照らす光」を、「ブルーバレンタイン」のデレク・シアンフランス監督が映画化。2度の流産を経験した灯台守のトム(ファスベンダー)と妻イザベル(ビカンダー)は、ボートで漂着した赤ん坊を逡巡(しゅんじゅん)の末に自分たちの娘として育て始める。だが4年後、赤ん坊の本当の母親ハナ(レイチェル・ワイズ)が現れたことから、夫婦を苦悩が襲う。

 字幕翻訳家として、「アメリカン・スナイパー」から「アナと雪の女王」、実写版「美女と野獣」(4月21日公開)まで幅広く担当する松浦氏。「ものすごく雄大な映画。身につまされるような話にもかかわらず、昔の映画のような雄大な景色、素晴らしい音楽にひたすら圧倒されました」と本作にぞっこんで、「私たち(字幕翻訳家)は、最初に台本のチェックを兼ねて、これから自分が翻訳するセリフを3秒4秒ごとに印をつけていく“箱を割る”という作業をするんです。ですが、今回は仕事そっちのけで見入ってしまった。翻訳しているときは、セリフがないところは飛ばしてしまうことも多いんですが、この作品はセリフがないところも全部見て、しかも何度も同じシーンを繰り返し見ながら仕事していました」というほど。「最初はグレーの海だったのが、どんどん光を持っていって色も変わり、きらめきが違っていく。雲や太陽の色も変わっていくし、景色が主人公の1人でした」と映像美に魅了されたと語った。

 松浦氏は「セリフが簡単とか難しいとかではなくて、優れた映画というのは止まらない。どんどんセリフが生まれてくるんです」と独自の“良作の条件”を挙げる。「(優れた映画は)翻訳をやっていても、“また同じセリフが出てきちゃったな。違う言い方しなくちゃいけないわ”っていう風に悩まないで済むんです。アクション映画とか“何度も『Come on.』って言うなよ!”って思うし、出てこない人物のことをセリフで全部説明しちゃう作品はかえって困るんですが、本作は違う」と映像や音楽を含めた表現の豊かさに太鼓判を押した。

 主役の夫婦だけでなく、ワイズ扮するハナに触れ「原作ではもう少しヒステリカルに取り乱す描写が多いんですが、映画ではそうじゃない。レイチェル・ワイズの抑えた演技とデレク・シアンフランス監督がハナをこういった役柄にしたところがこの作品を感動させるところだと思う。1番泣かせますよね」と考察。「誰1人責めないのがこの作品の素晴らしいところ。今ってすぐ怒るし責めるけれど、この作品は寛容ですよね。脇役たちの、それぞれの良心に訴えかけるような目線や演技が素晴らしい」と作品に深みをもたらした出演陣をたたえていた。

 「光をくれた人」は、3月31日から全国公開。