トップリーグMVP、サンウルブズでも活躍が期待されるWTB中逈隆彰  昨年、世界最高峰のプロラグビーリーグ「スーパーラグビー」に新たに加入した、日本を本拠地とするサンウルブズが2年目のシーズンを迎えようとしている。2月25日、東京・秩父宮ラグビー場で昨年の王者ハリケーンズ(NZ)と開幕戦を行ない、6月の代表月間を挟んで、7月15日まで15試合を戦う。

 スーパーラグビーとは、1996年にニュージーランド(NZ)、オーストラリア、南アフリカのワールドカップ優勝国3ヵ国で始まった国境を越えたプロリーグだ。12チームで始まったが、参加チームは増え続けて、昨年からアルゼンチン、日本のチームも加わり18チームへと拡大した。

 なぜ、日本を本拠地とするサンウルブズがスーパーラグビーに参入したのか。昨年は1勝13敗1分の最下位と厳しい戦いを強いられたが……。

 日本代表は世界の強豪と頻繁に対戦することが難しく、トップリーグのレベルも、年々上がってきたとは言え、世界のトップに肩を並べているとは言いがたい。そこで、より高いレベルでの経験を増やし、2019年に日本で行なわれるワールドカップを見越して、日本代表を強化することを目的に、日本チームがスーパーラグビーに参戦したというわけだ。

 ただ、先頭に立ってサンウルブズのスーパーラグビー入りを推し進めていたエディー・ジョーンズ元日本代表HC(ヘッドコーチ)が日本を去ってしまった。さらに2015ワールドカップに続いて、トップリーグ、スーパーラグビーと試合が続いていたこともあり、昨年の開幕前、43人のメンバーの中で日本代表経験者は15人(うち2015年のワールドカップ組は10人)しかいないという状態だった。

 しかも、サンウルブズにはサモア、アルゼンチン、アメリカ、南アフリカといった各国の代表を経験した選手もおり、日本代表の強化を目的に結成されたチームだったはずが、昨年においてはサンウルブズ=日本代表という状況ではなかった。

 それでも昨年、キャプテンを務めたHO(フッカー)堀江翔太、CTB(センター)立川理道、WTB(ウィング)山田章仁ら、ワールドカップで南アフリカを倒した日本代表戦士たちが、文字通り体を張ってチームを引っ張った。そして、ファンの声援を背に、ホームで記念すべき1勝を挙げたことは、日本ラグビー界にとって大きな一歩となった。

 2年目を迎えようとしているサンウルブズは、昨年と大きく違う点がある。それはサンウルブズのメンバーが53人に増え、そのうち34人が日本代表経験者で、残りも1人を除く18人が、今後、日本代表になれる、もしくは日本代表になる意思を持った選手ということだ。昨年までスーパーラグビーの他チームに所属していたSH(スクラムハーフ)田中史朗、FB(フルバック)松島幸太朗といった日本代表の中軸メンバーもサンウルブズでプレーすることになった。

 つまり、今年はサンウルブズ=日本代表という形が実現したというわけだ。

 サンウルブズの53名、そして2月18日に強化試合でサンウルブズが対戦したトップリーグオールスターズのメンバー、さらに現在、サンウルブズ以外のスーパーラグビー各チームに所属しているFL(フランカー)リーチ マイケル(チーフス/NZ)、FLツイ ヘンドリック(レッズ/豪州)、No.8アマナキ・レレィ・マフィ(レベルズ/豪州)といった総勢70名ほどの選手が、ほぼ2019年のワールドカップに出場する日本代表の中核を担う。つまり2019年の日本代表候補選手と言っていいだろう。

 2年目にして、2019年のワールドカップに向けて、こうした理想的な状況を作ることができたのは、ひとえに昨年9月、日本代表の指揮官にジェイミー・ジョセフ氏が就任した影響が大きい。現役時代はNZ代表、そして日本代表(※当時は2つ、3つの国にまたがって代表選手になれた)でもプレーしたジョセフHCは、2015年にハイランダーズ(NZ)をスーパーラグビー初優勝に導いた、世界も日本も知る名将だ。

 サンウルブズの指揮は、昨年のコーチだったフィロ・ティアティアHCが執るが、他のコーチ陣は日本代表のコーチ陣が兼務し、戦略、戦術は日本代表と共有する。と同時にジョセフHCが、サンウルブズを日本代表の強化の礎に置き、「チームジャパン2019総監督」という立場で、サンウルブズを含めた日本代表の強化、育成にあたることになった。

 常に、日本代表の指揮官が目を光らせており、年間試合数などを含めて選手の身体的、メンタル的コンディションに配慮しながらも、サンウルブズで活躍すれば、すぐに日本代表に招集される環境になった。”2019年”への道筋が選手にとってもファンにとっても明確となったのだ。

「フィロ(・ティアティア)とはこの3ヶ月間、コミュニケーションを取ってきました。サンウルブズが強くなればなるほど日本代表も強くなるので、連携には重きを置いてやっています。トップリーグ、サンウルブズ、日本代表があり、試合数が多い選手がたくさんいるので、選手ごとに、そのあたりを調節するのが自分の役割だと思っています」(日本代表ジョセフHC)

 サンウルブズの遠征メンバーは27名で、メンバー外となった選手とトップリーグなどの若手選手は、国内でジェセフHCのもと合宿することも決まっており、サンウルブズ、そして日本代表の底上げも図る。

 サンウルブズのメンバーには2016年度のサントリー2冠に貢献し、トップリーグのMVPにも輝いたWTB(ウィング)中逈(なかづる)隆彰、リオデジャネイロ五輪の7人制日本代表で奮闘したWTB後藤輝也、昨年のU-20の世界大会で活躍した東海大のWTBアタアタ・モエラキオラなどもおり、スーパーラグビーの出来次第では、すぐに桜のジャージーに袖を通すことになるだろう。

 ただ、いいことばかりではない。サンウルブズはホームという扱いで、3試合シンガポールで試合を行なわなければならず、アウェーは南アフリカのチームだけでなく、NZ、アルゼンチンでの試合もあり、1シーズンでの移動距離は18チーム中トップの2万kmにも及ぶという。また優勝したハリケーンズや田中の古巣であるハイランダーズなどNZの5チームとの対戦もある。昨年、NZ勢は特に好調で、4チームがプレーオフに出場しており、厳しい戦いが予想されている。

 また、今年は昨年よりもメンバーを増やしたことで、特に、日本代表の主力は交替で休みをもらいながら、サンウルブズの試合に出場することになるだろう。スーパーラグビーを経験することは育成という観点から見ると大きな意味を持つが、メンバーをあまり固定して戦うことができず、プロチームとして、どこまで結果を残すことができるか不安もある。ティアティアHCは選手を鍛えながら、勝利を目指すという難しい舵取りを任されており、その手腕の見せどころとも言えよう。昨年は1勝だったこともあり、最低でも2勝が、まずは現実的な目標だ。

 いずれにせよ、2019年のワールドカップに向けて大きな柱ができた。サンウルブズ経由で、日本代表の新たなスターが生まれてくる可能性も大いにある。世界最高峰リーグに挑戦するサンウルブズの成長と進化が、2019年の成功のカギを握っている。その過程を今年からラグビーファンと同時に幅広いスポーツファンにも味わってほしい。

■ラグビー 記事一覧>>