このオフのストーブリーグにおいて、最大の話題と言えば、横浜F・マリノスの”顔”だった中村俊輔のジュビロ磐田への移籍だろう。その注目の中村がいよいよ新天地でベールを脱ぐ。はたして、元日本代表の天才レフティーは、磐田でどんなプレーを披露し、どれだけ活躍するのか、日本中から熱い視線が注がれている。

 中村の磐田移籍が正式に発表されたのは、1月8日だった。その直後から、まずはピッチ外で”俊輔効果”が見られた。

 1月13日の新体制発表会見には、例年の2倍近い41社、100名のメディアが集結。さらに、翌14日のチーム始動日には、昨年の3.5倍となるおよそ700人のファンやサポーターが訪れた。おかげで、練習場では通常使用されていないスタンドまで開放された。

 試合のチケットの売れ行きも好調だ。昨年は5000席に届かなかったシーズンチケットが、今季は約5800席も売れた。ファンクラブの会員数やグッズ販売の売り上げも、クラブの予想を超える伸びを見せており、クラブ幹部は「中村選手の加入効果が大きい」と驚きつつ、早々に表れた”俊輔効果”に満面の笑みを浮かべる。

 ピッチ外もさることながら、当然期待されるのはピッチ内での”俊輔効果”だ。昨季のチーム得点王、FWジェイが退団したが、「それを補って余りある」とチームスタッフは口をそろえる。

 その言葉の真実味は、キャンプインしてから随所で示された。特に実戦の中で”俊輔効果”が際立ったのは、DAZNニューイヤーカップ・鹿児島ラウンドのロアッソ熊本戦(1-1)だった。

 中村は70分間出場し、得点に絡む場面こそなかったものの、今季名古屋グランパスから移籍してきたFW川又堅碁へ絶妙なパスを連発。熊本のDF陣を翻弄した。

 試合後、「(中村からは)確実にチャンスボールをもらえる」と表情を緩ませた川又。2013年シーズン、アルビレックス新潟時代に23得点をマークした新FWとのホットライン誕生に、周囲も期待を膨らませている。

 ゴールの可能性が高まったのは、もちろん川又だけではない。前線の選手たちは「俊輔さんがボールを持った瞬間、こちらがうまく動き出せば、必ずいいボールがくる」と、皆同じコメントを発し、”俊輔効果”を認める。

 その結果、いくつかのホットラインが出来上がれば、ジェイひとりに頼っていた得点力も埋め合わせができる。そうして全体的な破壊力が増せば、昨季の年間37得点は優に上回ることができるだろうし、順位も昨季(年間13位)以上の成績が見込めるはずだ。




チームメイトと積極的にコミュニケーションを図っている中村俊輔(右)。左は上田康太 また、中村の加入はポジション争いに挑む若手にも好影響を与えている。鹿児島キャンプでは、宿舎での”お風呂タイム”などで若手選手たちへの『俊輔講座』が開かれていたようだ。そこで、若手選手たちは中村から、ピッチ内でのプレー、動き方などを細かくアドバイスされたという。

 その際、「一字一句、聞き逃さないようにしていた」という2年目のMF荒木大吾は、DAZNニューイヤーカップのギラヴァンツ北九州(J3)戦で決勝ゴールを上げた。

 さらに、中村と同じ桐光学園高出身で「(中村から)FWとして、考えて動き出すことを学んだ」と話す2年目のFW小川航基は、DAZNニューイヤーカップの鹿児島ユナイテッドFC(J3)戦で終了間際に貴重な同点ゴールをゲット。”先輩”からの教えをすぐに実践して結果を出した。

 シーズンに入ってから、本当の意味での”俊輔効果”が期待される今季、当面の目標はJ1残留となるが、「上の4チームまでには及ばないだろうが、昨年以上の成績を残したい」と語る名波浩監督。そのためのポイントとして、「昨季、マイナス13点だった得失点差を、最低限ゼロにすること」だと言う。

 それには、「競争と融合」が不可欠だと話す。それぞれのポジションで常に競争があり、切磋琢磨することでチームの底上げにつながる。そして、若い力と経験豊富な選手との力がひとつにまとまれば、より大きなパワーを生み出し、それがチーム全体の力になる――名波監督が期待するのは、そこだ。

「俊輔の加入は、必要なポジションに必要な選手を補強しただけ」と、淡々と語る指揮官。しかしその補強こそ、指揮官が求めるものに近づく最良の策だったということが、今季の結果とともに証明されるに違いない。

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