「偏食」はやっぱり悪い? 健康そうな人もいるけど…

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執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ


ピーマンが苦手、肉を食べない、パンしか食べない、と食の偏りといってもその程度はさまざま。

スポーツ選手や芸能人にも偏食を公表している人もいますが、偏食は悪いことなのでしょうか。

身体への影響から健康に食事をするポイントまで解説していきます。

偏食とは?

偏食とは、食べ物の選択が極端に偏り、必要とする栄養素に偏りが生じる食事を言います。

好き嫌いも偏食につながりますが、ある程度の好き嫌いは誰にでもあります。

ある特定の食品が嫌いで食べなくても、栄養学的に代替えできる食品を食べれば問題はありません。

だからといって偏食があっても良いというわけではありませんが、1食、1日に摂るべき栄養素が偏る好き嫌いは身体に悪影響を及ぼす可能性が高く、見直す必要があります。

必要な栄養素と食品群

人が生きる上で欠かすことのできない栄養素を「5大栄養素」と言います。

炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルがそれにあたります。

どの食品でどの栄養素を摂っているのかを考えることは難しいかもしれません。


食品を栄養別に分けて考える「6つの基礎食品群」を紹介します。同じグループでは代替えできると考えましょう。

○第1群:たんぱく質(魚・肉・卵・大豆・大豆食品など)

○第2群:ミネラル(乳製品・海藻・小魚など)

○第3群:脂溶性ビタミン(緑黄色野菜)

○第4群:水溶性ビタミン(淡色野菜・果物)

○第5群:炭水化物(ご飯・パン・麺類・芋類・粉類)

○第6群:脂質(植物油・バター・脂質の多い食品)

たとえば、魚嫌いでも肉や卵、大豆、大豆製品などを食べることで、必要な栄養素を補うことができるということです。

人の身体は大変賢く、身体の中で栄養素を作り出したり、溜めこんで少しずつ使ったりと、「不足しない工夫」が備わっています。

つまり、偏食があっても生きていけるのです。

しかしそれが長く続くと、作り出す原料が不足したり、貯蓄がなくなってしまいます。毎食・毎日ですべての食品群をそろえることを意識することが大切です。

偏食の影響

発育不全や老化促進


細胞やホルモンなど、成長に必要な物質が正常に作られないと、発育が正常に行われなかったり、老化を早めてしまいます。

免疫力低下


免疫力はさまざまな栄養素によって維持されているため、免疫力が低下し、風邪をひきやすくなったり、がんなどの病気になるリスクも高まります。

便秘


便秘の原因として食物繊維不足はよく知られていますが、糖質や脂質は腸内環境を良くしたり、便の水分を保つのに働いたりと、さまざまな栄養素が関係しているのです。

生活習慣病


エネルギー源の過不足は、肥満ややせを引き起こします。そうすると、普段は一定に保たれている血液中の成分は、コレステロールや血糖が過剰になったり、反対に不足状態になったりして、バランスを崩し、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になるリスクを高まります。

ホルモンバランスの乱れ


ホルモンを作り出したり、またそれを機能させたりするのには、さまざまな栄養素が関わっています。

女性の場合は、女性ホルモンが月経や妊娠をはじめとする全身状態をコントロールしているため、月経不順や不妊症、更年期障害の原因になります。

また、脳の機能もホルモンが関わっていて、うつ病や認知症になるリスクも高まります。

このように偏食の影響を見てみると、目では見えない不調や先々の健康リスクを高めることが多く挙げられます。

見た目では健康そうに見えても、偏食の影響を受けている可能性があるのです。

毎日の食事が身体を作り、機能させています。栄養の過不足によって不調が起こることは言うまでもありません。

嫌いな食べ物を無理やり食べることをしなくても、基礎食品群を参考にしながら、自分なりの栄養バランスのとり方を見つけてみるといいでしょう


<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供