アイスランドのケフラビーク空港で、同国に到着したシリア難民の第1陣のジュムア・ナセルさん(右端)。隣はシグムンドゥル・グンロイグソン首相(2016年1月19日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】冷たい風が吹きつけ、降り積もった雪を雨がゆっくり溶かしていく。北極(Arctic)に近いアイスランド。住み慣れたシリアの首都ダマスカス(Damascus)から遠く離れた地にありながら、ジュムア・ナセル(Joumaa Naser)さん一家が極地の寒さを気にする様子はない。安全に暮らせるだけで十分幸せなのだ。

 火山と氷河、間欠泉に囲まれて33万人が暮らすアイスランドは、内戦を逃れたシリア難民の移住先としては珍しい国だ。それでも2015年以降、118人のシリア人がこの島国での穏やかな新生活に希望を見いだしてきた。

 彼らの大半は首都レイキャビク(Reykjavik)かその周辺に移り住んだが、中には北極圏(Arctic Circle)の南70キロほどにある北部の町アークレイリ(Akureyri)で新たな生活を始めた人たちもいる。ナセルさんもその一人だ。

 そして今、彼と妻、5人の子どもたちは、アークレイリを「ふるさと」と呼んでいる。

 アイスランド政府はナセルさん一家に対して、1年間の家賃のほか、生活費も支給している。さらに赤十字(Red Cross)は、アイスランドの言語や文化を学べる講座の授業料を提供している。

 きれいに整えた口ひげをたくわえ、ダウンジャケットを着込んだナセルさんはAFPの取材に、北欧の気候などには適応していけるが、唯一の悩みの種がアイスランド語の習得だと語る。「言葉だけは少々複雑です。完全にものにするには時間がかかるでしょう」

 もっとも、子どもたちは友だちやサッカーなどのスポーツを通じて新たな母国になじみ、アイスランド語も父親より速く習得しているという。

■反移民政党にそっぽ

 地中海(Mediterranean Sea)に面するシリアの都市ラタキア(Latakia)から逃れてきたムスタファ(Mustafa)さん(30)とバスマ(Basma)さん(28)夫妻は、レイキャビク郊外の住宅地に住んでいる。

 ムスタファさんは、アイスランドでも「人種差別主義者」に出くわすことはあるが、他の国々よりも少ないと言う。

 アイスランドではシリア難民が到着し始めた2016年初頭に、反移民を掲げる政党「アイスランド国民戦線(Icelandic National Front)」が設立された。しかし、これまでのところ支持は広がっていない。

 昨年10月に行われた総選挙で国民戦線の得票率はわずか0.2%。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が昨年9月に実施した調査では、難民の受け入れ拡大を支持する国民が85%超に達した。

 ムスタファさんとバスマさんにとって、アイスランドはほとんど未知の国だったという。ヒジャブで髪を覆ったバスマさんは「私たちはここに来るまで、アイスランドのことなんて聞いたこともありませんでした。どんな場所なのかほとんど知りませんでした」と話す。

 ただ、ムスタファさんが仕事を見つけるのは簡単ではなかった。シリアではタクシーの運転手や自動車修理工、料理人、塗装業者、電気工として働いたことがあるムスタファさんだが、アイスランド語も英語も話せないからだ。それでも、レイキャビク中心部にある中東料理店になんとか職を見つけた。

 妻のバスマさんは第一子となる男の子を妊娠しており、近く出産予定だ。バスマさんは「息子がこの美しい国で、安全に生まれてきてくれることを誇らしく思う」と目を輝かせる。

 アイスランドでは昨年、791人が難民認定を申請し、その大半がバルカン(Balkan)半島諸国の出身者だった。しかし、そのうち申請を受理されたのはイラク人25人、シリア人17人、イラン人14人を含む100人にとどまっている。
【翻訳編集】AFPBB News