平壌中心部、平壌駅からも近い高麗ホテルの隣に朝鮮郵票(切手)展示館がある。私は北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国のグッズなら何でも大好きなのだが、切手だけはなぜか食指が伸びない。写真は北朝鮮の竹島切手。筆者撮影。

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平壌中心部、平壌駅からも近い高麗ホテルの隣に朝鮮郵票(切手)展示館がある。私は北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国のグッズなら何でも大好きなのだが、切手だけはなぜか食指が伸びない。過去5度訪朝して5回寄っているが、ここで余り買い物をした記憶がない。

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しかし、世界の切手マニアにとって「北朝鮮の切手」はともかくレアで垂涎の的らしい。「世界中の方が訪れて買って行きますよ」と案内員も胸を張る。北朝鮮もその点熟知していて、様々な記念切手を発行している。それは貴重な外貨取得の手段となる。そのため、この朝鮮郵票展示館は、外国人が訪朝の際必ず立ち寄る、立ち寄らされる場所だ。

竹島の領有権問題がまた騒がしくなってきた。慶尚北道の金寛容知事が1月25日午前に竹島に上陸し、菅官房長官も強い不快感を示した。また2月22日の竹島の日に合わせ、内閣官房領土・主権対策企画調整室と島根県と島根県隠岐の島町が、竹島についての啓発ポスターを作成している。

竹島について私は、当然日本固有の領土であると考えているが、竹島問題の対世界戦略については韓国と北朝鮮にうまくやられていると感じる。韓国の巧妙な戦略のひとつが必ず天気予報で竹島の天気を伝えること。「なぜ同じことを日本はしないのだろう」と大学時代の恩師は嘆いていた。

北朝鮮も竹島の領有権を主張している。先に述べた朝鮮郵票展示館では、竹島の領有権を主張する切手を販売していた。切手を使い、マニアを通して世界に領有権を訴えているのだ。この切手を数年前に手に入れた。共著で執筆した本を読んだ読者の方が、感想と共に直接渡して来たのだ。すぐ横にいた編者である大学の恩師に判断を仰いだ。「貰っておけば」という恩師の一言に複雑な想いを抱きつつも頂いた。

特にネット上では日韓関係の緊張と相まって韓国と断交せよ、竹島の実効支配を続ける韓国の部隊に対して自衛隊を派遣し制圧すべしと言った勇ましい文章がみられる。それよりも簡単に出来ることがある。まずは全国の天気予報で必ず竹島の天気を伝えること。次に、竹島切手を発行し郵便局に加え外国人が多く訪れるお土産店で販売すること。さらに空港の広告枠を買って大々的に外国人に竹島の領有権をアピールすること。ポスターでの啓発も一定の効果は期待できるが、世界に向かって声を上げる。けれどなるべく過激ではない表現と方法で。ユーモアなアイデアと地道な努力が求められている。

「独島(日本名・竹島)はどっちの領土だ?」数年前、ソウルでタクシーに乗った途端運転士に聞かれた。「ここじゃなくてハーグで話そうぜ」私がうんざりした声で国際司法裁判所のある都市の名前を出すと、運転士は「なぜ我が国固有の領土なのにハーグで話さなきゃならんのだ」と言い放ち超高速の韓国語で話す。うんざりして「竹島は韓国人にとって焼酎のつまみじゃないのか?日本人に一方的に早口で話してさ、何も言えないのを見て『今日、チョッパリ(日本人の蔑称)に竹島はどっちの領土だ?と聞いたら何も言えなかったぜ』とでも言って焼酎で乾杯するんだろ?」となんとか返すと運転手は興奮し、さらに早口になった。

日本で韓国人の友人たちにタクシーでの出来事を話すと「大変でしたね」と労ってくれた。私の周りの韓国人の友人たちは政治的な話題を避ける。もちろん私も同じだ。政治と宗教の話はしないというルールを守り良好な関係を作っている。

だがその日は友人たちとくだらない話を続けた。島の領有権を5年更新にする。島の横にスーパーメガフロート(海上に浮かべる浮体式構造物)を浮かべ、サッカー場を作るのだ。日韓だけなら野球でもいいけど、北朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国も領有権を主張している。彼らがかわいそうだからサッカーにしよう。そして竹島の領有権を賭けて日韓朝でサッカー大会をするのだ。

審判と管理は中国とアメリカとロシアにお願いしようか。日本が勝ったら島の名前は竹島とし日の丸を掲揚する。韓国が勝ったら名前を独島とし、島に太極旗をぶっ刺せばいい(2006年、09年のWBCの皮肉を込めた。友人たちは爆笑した)。北朝鮮が勝ったら金日成主席の銅像を立てればいい。でも5年経ったらチャラ、中国とアメリカとロシアが責任をもって日の丸や太極旗、銅像をいったん撤去する。

酔いも手伝い韓国の友人たちも「日本からの画期的な建設的提案ですよ」と大笑いしていたが、最後は少し真面目な顔でこういった。「日本はいいかも知れませんが、韓国はダメです。負けたら選手は生きて帰れません」。そこでまたどっと笑い声が起こった。私も散々笑った。楽しい夜だった。

数年前、色々問題はあったけれどここまでお互いの国の関係が悪くなることなんて想像もつかなかった。ギリギリのブラックジョーク、のんきな話題で散々笑った夜の記憶は、もうすっかり遠いものとなっている。

■筆者プロフィール:北岡裕
76年生まれ。東京在住。過去5回の訪朝経験を持つ。主な著作に「新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮」。コラムを多数執筆しており、朝鮮総連の機関紙「朝鮮新報」では異例の日本人の連載で話題を呼ぶ。講演や大学での特別講師、トークライブの経験も。