手形交換高・交換所推移

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 2016年(1-12月)に全国で振り出された手形の交換高は424兆2,244億円で、 2011年以来、5年ぶりに増加した。ただ、ピークの1990年の4,797兆2,906億円に比べると91.2%減の大幅減少し、手形減少の流れに変わりはない。また、手形交換所は2016年に4カ所廃止され、全国では109カ所と1997年の185カ所から41.0%減少している。
 2013年2月にスタートした全国銀行協会の電子記録債権(以下、でんさい)の2016年の発生記録請求金額(以下、でんさい額)は11兆1,683億2,000万円と、2015年より39.6%増加した。ただ、利用者登録数は2015年1月に40万社を超えたが、2016年12月末は44万4,025社にとどまり伸び悩み傾向もうかがえる。
 経済成長に伴い手形は企業の代金決済の中心として右肩上がりで増加した。しかし、1990年を境に一気に減少へ転じている。企業が手形印紙税や保管要員の人件費などコスト削減に取り組んだことが大きな要因だ。特に、大手企業が率先して進めた現金決済が中小企業にも波及し、手形の減少につながっている。
 一方で、手形の減少は中小企業の資金調達にも変化をもたらしている。中小企業は手形割引や裏書譲渡など手形のメリットがなくなり、資金力に乏しい企業ほど金融機関への依存度を高めている。ただ、激減したとはいえ手形交換高は424兆円にのぼり、今でも手形決済が中小企業の資金繰りに重要なことを示している。


  • 本調査は、一般社団法人全国銀行協会の全国手形交換高・不渡手形実数・取引停止処分と、でんさいネット請求等取扱高を対象に分析した。「でんさいネット」は、全国銀行協会100%出資で設立された電子債権記録機関「株式会社全銀電子債権ネットワーク」の通称で、「でんさい」は同社の登録商標である。

手形交換額はピーク時の1割

 2016年の手形交換額は424兆2,244億円で、2015年(299兆322億円)より41.8%(125兆1,922億円)増加した。これは大阪手形交換所の手形交換額が7.1倍(28兆6,848億円→205兆7,941億円)に急増したことによる。
 大阪手形交換所の扱い高を除くと、全国的な減少傾向に変化はない。

 手形交換額はピークの1990年に4,797兆2,906億円を記録したが、バブル崩壊の91年以降急激に減少。2015年はピークの6.2%にまで減少した。
 また、手形振出の減少に伴って2016年には手形交換所が4カ所廃止され、全国の手形交換所は109カ所と、ピークの1997年の185カ所から41.0%(76カ所)減少している。

 手形交換は、金融機関が手形や小切手などを持ち寄って交換する民間の決済制度だ。
 明治12年に開設された大阪手形交換所を皮切りに、手形や小切手の流通増につれて全国各地に手形交換所が開設された。
 高度経済成長期の1968年には100カ所を超え、1987年、1988年、1997年に最多の185カ所を数えた。その後は商慣習の変化や銀行の統廃合、手形交換事務の合理化などで減少に転じ、2016年は109カ所まで縮小している。

「でんさい額」は前年比で4割増

 2013年2月に運用が始まった全国銀行協会の「でんさい」は、2016年(1-12月)の金額が11兆1,683億2,000万円と、2015年の7兆9,994億300万円から約4割(39.6%)増えている。
 スタート元年となった2013年(11カ月間)の1兆495億1,000万円と比べると3年で10.6倍(964.1%増)に拡大している。
 業種別の金額は、2016年は「卸売業・小売業」(構成比41.6%)と「製造業」 (同40.0%)で、約8割を占めている。

 利用者登録数は2016年12月末で44万4,025社を数え、スタートした2013年2月末(4万5,583社)の9.7倍(874.1%増)に増えている。だが、2015年12月末の42万9,117社と比較すると3.4%増にとどまり、伸びは鈍化している。
 でんさい額はスタートから右肩上がりで伸びているが、2016年12月末で手形交換額の3.3%に過ぎず、従来の手形に代わるには浸透度が今一歩の状態にある。

 2016年の手形交換額は、大阪手形交換所の大幅増で5年ぶりに減少に歯止めがかかった。だが、大阪分を除くと全国で減少をたどっており、趨勢としてこれまでの流れに変化はない。
 手形や「でんさい」は半年間に2回の決済不履行(不渡り)を起こすと取引停止処分のペナルティが科され、事実上の倒産に追い込まれる。大手企業を中心に手形離れが定着し、中小企業でも手形決済が減少している。さらに、現金決済はペナルティもなく、支払不履行は当事者間での事情にとどまる。こうした事を背景に、現金決済の広がりは種々の要因の他、手形取引の基本ルールであるペナルティを避ける意味合いもあるかも知れない。
 「でんさい」の発生記録請求金額は年々伸びを見せているが、手形交換額とは37.9倍の開きがあり、遠く及ばない。利用者登録数の伸びも鈍化している。普及の障壁は各社で異なるが、高い利便性は周囲の環境が整ってこそ発揮できる。導入を巡るシステム整備や取引先の合意、さらに経営者のPC操作の習熟度など、環境整備にはまだ時間を要するだろう。
 印紙税や管理の煩わしさはあっても、「手形」は利用に際し心理的な負担は少なかった。「でんさい」も売掛債権の分割や割引が可能だが、まだ利便性の訴求力に課題を残している。
 中小企業には資金力と信用が乏しい企業も多い。手形払いから現金払いへのシフトには一時的な資金負担を伴う事もあり、さらに支払サイトの長い受取手形の扱いには考慮が必要だ。政府は2016年12月、下請事業者の保護を目的に「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」の運用基準や「下請中小企業振興法」の振興基準を改正している。支払決済の現金化や手形期日の短縮(60日以内)、手形割引料を支払元が負担するなど、これまでになかった下請中小事業者の取引条件改善を盛り込んでいる。
 売上増による資金需要への対策は中小企業ほど深刻だ。手形や「でんさい」の普及は、中小企業の成長と資金繰りを支える重要ファクターでもある。それだけに今後、休・廃業や事業再生など多様な動きに向けて、手形や「でんさい」の持つ意味はより大きくなっている。