福田正博 フォーメーション進化論

 いよいよ2月25日にJリーグが開幕を迎える。ここ2シーズンで実施されてきた2ステージ制ではスタートダッシュや勢いが重視されたが、今シーズンから1シーズン制に戻ったことで、1年を通して安定した戦いを続けられるチームの「体力」が重要になる。


セビージャからC大阪に復帰した清武など、大物の移籍が相次いだJリーグ そこでポイントになるのが「選手層」だ。主力選手が故障や出場停止などで試合に出られない、または調子を落とした時に備え、開幕前にどれだけの準備ができたかが最終順位を大きく左右する。

 ただし、いい選手を補強できても、本当に選手層を厚くできたかどうかは、外部から見るだけではわかりにくい。監督が思い描く戦術によって使いどころがなくなる選手が出てきたり、逆に、起用してみたら意外にチームにハマったという「嬉しい誤算」もあったりするからだ。

 今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドがいい例だろう。2016‐17シーズンから監督がジョゼ・モウリーニョになったことで、「戦力になるのか」と疑問視されていたファン・マタやマルコス・ロホが、シーズンが進むにつれて完全に戦力として機能している。こうしたケースは、Jリーグでも十分に起こり得ることだ。

 そういった、始まってみなければわからない点をふまえても、昨年のJ1王者である鹿島アントラーズは盤石の補強をしたと言っていい。昨シーズン試合に出ていた選手がベンチを温める状況になることが「いい補強ができたか」の判断基準のひとつとなるが、今年の鹿島はほぼすべてのポジションでレギュラー争いが起きるほどの補強をし、リーグとACLを戦う過密日程への対策もできている。

 とりわけ、アルビレックス新潟からレオ・シルバ、ヴィッセル神戸からペドロ・ジュニオールを獲得したことは大きい。彼らの加入によって、鹿島の「個の力」は確実に伸びている。性格が真面目なレオ・シルバがブラジル人選手と日本人選手とをつなぐ役割を果たせれば、昨シーズンのようなチームの一体感を生み出すことも可能だろう。

 唯一の不安はCB陣。ファン・ソッコが中国リーグの天津泰達に移籍し、植田直通と昌子源の代わりを務められる選手が現状では見当たらない。そんな、DF陣の戦力が落ちたところに、韓国Kリーグの全北現代からGKのクォン・スンテが加入したことは心強い。33歳の彼は、国内リーグで2014年から3年連続ベストイレブンに選ばれるなど、実績・経験ともに十分。DF陣とのコミュニケーションが欠かせないポジションではあるが、積極的に日本語を覚え、環境に馴染む努力もしている。

 今年で38歳になる守護神の曽ヶ端準は、昨シーズン終盤こそいいプレーをしていたものの、1年を通して見ると不安定な面もあった。ふたりのどちらが正GKになるにしても、競争が生まれることによる緊張感が、昨シーズン以上の安定感をもたらすに違いない。

 鹿島と同じくACLを戦うクラブでいうと、川崎フロンターレとガンバ大阪にも注目している。(「浦和は?」という読者もいるだろうが、それはまた次回の記事で触れたい)

 昨シーズン、年間勝ち点2位となった川崎Fは、4年半でチームをリーグ屈指の強豪に育て上げた風間八宏監督が名古屋グランパスに移り、長らくチームを支えてきた鬼木達(とおる)コーチが新監督に就任した。ACLの試合が続くシーズン序盤に、圧倒的な存在だった風間監督との違いをどのようにチームに浸透させていくのかをまずは注視したい。

 選手に関しては、エース・大久保嘉人が抜けた代わりに、大宮アルディージャから獲得した家長昭博がチームにフィットするかどうかが気がかりだ。大宮で存在感を示していた家長の実力は疑いようがなく、川崎のスタイルにも順応できる選手だと思っている。ただ、これまでの彼のキャリアを振り返ると、チームの中心に据えられた時は力を発揮できるが、ほかの選手を中心に作られたチームではプレーにムラが出る傾向もある。

 新体制に移行したとはいえ、今シーズンも中村憲剛を中心に据えたチームになることは明白だ。憲剛と家長が共存できれば、ものすごい化学反応を起こすことも期待できるが、逆に「1+1」が2にならずにマイナスに作用する可能性も否定できない。しかし、これこそが補強の難しいところであり、醍醐味でもある。鬼木新監督がその点をうまくマネジメントできれば、今シーズンも優勝争いに加わる可能性は高いと見ている。

 昨シーズン勝ち点4位のガンバ大阪は、今季からCB陣が一新された。新たに獲得したファビオ(←横浜F・マリノス)と三浦弦太(←清水)に、丹羽大輝を組み合わせながらシーズンを戦う。昨年はCBが安定せずに苦しんだが、スピードと高さのあるファビオと、空中戦に強い三浦の加入によって大きく改善されるだろう。

 特に、ファビオの獲得は大きい。スピードのないCBだと裏のスペースを狙われることを警戒してラインを下げてしまうことが多いが、ファビオのスピードがあればDFラインを高く保つことができる。FWからDFまでの距離感をコンパクトにすることで、選手がチェイスなどで走る距離を減らすことができ、ACLも戦うシーズンでは疲労度に大きな差が出ることになる。

 CBが落ち着いてくれば、MF井手口陽介を中心としてバランスのいい戦いができるはずだ。G大阪はスロースターターな面があるものの、過去3シーズンでは終盤にきっちりと上位争いに絡んできているだけに、今年は優勝を狙いたいところだろう。しかしそれには、攻撃陣の駒が1枚足りないように感じている。U‐20代表候補の堂安律など、才能豊かな若い選手は多いので、彼らの台頭が待たれる。

 昨年の上位陣のほかに、今シーズンの躍進を期待できるのが、セレッソ大阪とFC東京だ。

 J2からJ1に昇格したセレッソ大阪は、セビージャから清武弘嗣が復帰を果たした。清武を呼び戻すためにクラブは約7億円を支払ったと言われているが、このご時世、日本人選手を獲得するためにこれだけの移籍金を用意するのは簡単ではない。ここからも、C大阪の「本気度」が伝わってくる。

 清武とキャンプ中に話をする機会があったが、とてもスッキリした表情をしていたのが印象的だった。移籍前には「もっと海外のクラブでプレーしたい」「いい状態の時にJリーグに戻ってプレーしたい」と気持ちが揺らいだものの、W杯出場へ日本代表を導かなくてはいけない使命感もあり、古巣復帰を決めたようだ。

 個人的には清武の復帰以上に、ユン・ジョンファン新監督の指導力に注目している。C大阪はもともとポテンシャルを秘めたチームで、才能豊かな選手が揃っているものの、若さゆえの脆さも併せ持っていた。実際、2014年シーズンはJ1で17位に沈んでJ2に降格している。

 ボランチの山口蛍は安定しているが、柿谷曜一朗や杉本健勇ら攻撃陣とDF陣は調子の波が大きかった。そうしたチームに、サガン鳥栖で2011年から2014年途中まで采配を振るい、結果を残したユン監督が就任した。攻撃陣は柿谷や杉本に清武が加わったことで活性化するだろうし、課題の守備もハードなトレーニングを積んでいるので強化されるはず。個々の選手が持っているポテンシャルは高いだけに、ユン監督のもとで安定感が身につけば、上位に躍進しても不思議ではない。

 わかりやすい補強をしたのが、昨シーズン勝ち点9位のFC東京だ。GKに林彰洋(←鳥栖)、FWに大久保嘉人(←川崎)、MFに高萩洋次郎(←FCソウル)を獲得してセンターラインを強化した。3選手とも日本代表、海外クラブでのプレー経験があるだけに、ピッチ上では厳しいこともはっきり口にする。これまでのFC東京はおとなしい選手が多い印象があったが、篠田善之監督がマネジメントして、新たに加入した選手をチームに融合させることができれば、これまでの殻を破るかもしれない。

 上位進出へのポイントは、キャンプを見た限りではボランチにあると思う。攻守の要となるポジションだけに、ここが不安定なままでは勝ち点を積み上げることは難しい。まだ外国人選手枠は空いているため、補強でそこを補えれば、さらにレベルアップして上位争いに絡んでくるはずだ。

 開幕前のJリーグで、今年ほど選手の移籍が話題になったシーズンはあまり記憶にない。今回紹介しただけでも、清武弘嗣や大久保嘉人など、多くの日本人トップレベルの選手たちが新天地を求めた。その選手たちはどれだけチームにフィットしているのか。開幕戦は、勝敗はもちろん、各チームの仕上がり具合にも注目したい。

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