FCソウルからFC東京に移籍した高萩洋次郎【写真:Getty Images】

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高萩、愛する韓国を離れてFC東京へ。移籍に秘めた思い

 FC東京は今年1月、元日本代表の高萩洋次郎を獲得したことを発表した。KリーグのFCソウルで1年半プレーし、韓国への愛着を語っていたことから、この移籍は驚くべきニュースであった。韓国ではタイトルも獲得し、地元メディアからも高い評価を得た高萩だが、FC東京移籍という決断に秘めた思いを明かしている。(取材・文:キム・ドンヒョン【城南】)

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 1月25日、元日本代表MF高萩洋次郎がFC東京へ完全移籍したことが発表された。FCソウルで2年間プレーし、2016シーズンだけでKリーグ優勝、国内カップ準優勝、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ベスト4といった結果を残した。

 このニュースは筆者にとって、このプレシーズンで最も衝撃的な移籍ニュースだった。一見ただの移籍ニュースだったのかもしれないが、驚いたことにはそれなりの理由があった。

 筆者は高萩へのインタビューを昨年6月から企画していた。Kリーグの日本人選手という企画の一環で、当時は蔚山現代に所属していた増田誓志や和田倫季とは順調にインタビューを進めることができだが、高萩はあいにくクラブの事情(監督交代など)で数回も断られていた。

 そうしていたら、瞬く間にシーズンが終了。インタビューをほぼ諦めていた1月中旬、高萩の代理人を通じてようやくインタビューを行うことができた。彼は「韓国が気に入ったようですね」という筆者の質問に対し、「正直、韓国も韓国人も気に入っている。今、子供が韓国の保育園に通っていて、韓国語がますますうまくなっています。今年はもっと上達すると思いますよ。契約のことは僕にどうにかできるものではありませんが、韓国で長くプレーしたい気持ちはあります」と答えていた。

「ソウルは住みやすいし、日本人として特別扱いされることも全くなかった」という返答からは、韓国への愛情さえも感じられた。しかし、そのインタビューから一週間も経たないうちに、彼は移籍してしまったのだ。

 取材後にFC東京からオファーが届き移籍決定という、あまりにも急な展開だった。それ故にこのビハインドストーリーを読者の皆さんに明かしておきたかった。

 移籍が決定した後、彼は代理人を通じて「ソウルでの2シーズンは本当に素晴らしい時間でした。監督からは残留を求められましたが、自分の海外での経験やパフォーマンスを高く評価していただき、熱意のあるオファーをいただいたFC東京で新たなチャレンジを決意しました」と理由を説明した。急な移籍にもかかわらず、高萩は最後までプロフェッショナルな姿勢を失っていなかった。

高萩が韓国で発揮した“日本人らしさ”

 2016シーズン、Kリーグでプレーした日本人選手は高萩洋次郎、増田誓志、渡邉大剛、和田倫季の4人だった。このうち、2017シーズンに韓国に残ったのは和田倫季のみ。ここに今季は名古屋グランパスから安田理大が加わった。

 もちろん人数が少ないといって、韓国で日本人選手の能力が重宝されていないわけではない。日本人特有のプレー、つまり長けたパス能力やゲームメーク能力は韓国でも高い評価を得ており、「日本人選手をチェックしている」と語るチーム関係者もいるほどだ。

 去年韓国でプレーした増田、高萩、和田は3人ともパス能力に長けているプレーヤーであり、この能力は確かに韓国でも高く評価されている。

 サンフレッチェ広島のユースを経てトップチームでプロデビューを果たした高萩は、まさしくこの“日本人らしさ”を発揮した選手だった。

 2015シーズン途中に加入してから、Kリーグを取材する多くのメディア関係者、サッカー関係者から高い評価を受けたのもこのパス能力だった。某大手スポーツ新聞記者は「パス能力だけでKリーグトップクラスになった選手」としながら、「フィジカル的にも発展した」と称えた。

高萩洋次郎は韓国で「進化」した

 確かに加入2年目となった2016シーズン、彼はさらにパワーアップした。移籍当初は体の当たり、いわゆる「線が細すぎる」という指摘もされるなどフィジカルがやや不安という意見もあった。

 しかし彼はパス能力に加え、それこそ闘争心あふれるプレーでFCソウルの中盤で最も中核的存在へと君臨した。2016シーズンの記録は1ゴール4アシスト。目立たない数字かもしれないが、ファン・ソンホン監督から期待されていた広い視野、そこから適材適所にパスを散らす能力を思う存分活かしたのはもちろん、ミドルから放つシュート能力も見せつけ、FCソウルの中盤をけん引した。

 全北現代の勝ち点没収があったとはいえ、長いリーグ戦でFCソウルが逆転優勝できたのはこの男の支えがあったからといえるだろう。この「進化」が韓国での成功につながったのは紛れもなく事実だ。彼の日本での2017シーズンにおいてポジティブな影響を与えるはずである。

 Jリーグよりも守備面でタフなKリーグで怪我なくフルシーズンを送った彼が、日本でもいい成績が残せると信じている。その進化した姿を、再び韓国のファンに披露する日が来ることを祈るばかりだ。

(取材・文:キム・ドンヒョン【城南】)

text by キム・ドンヒョン