自然の雄大な姿や動物の生々しい生態を克明に捉えるBBCとNHKの共同製作番組「プラネットアース」の最新シリーズ「プラネットアースII」が2016年末から2017年にわたって順次公開されます。前シリーズでも圧倒的なディティールを誇っていたプラネットアースですが、最新シリーズでは4Kハイスピードカメラなどの最新技術を使ってさらに高品位な映像が収められているとのこと。ニュース解説メディアのVoxはそんな番組の撮影に使われた技術について解説するムービーを公開しています

How the BBC makes Planet Earth look like a Hollywood movie - YouTube

2006年に公開された初代「プラネットアース」シリーズは、従来のドキュメンタリーを圧倒する内容と撮影技術で高く評価されていました。



そんなシリーズの続編とも言えるのが「プラネットアースII」です。



プラネットアースIIでは、撮影に4Kハイスピードカメラなどの最新技術を投入し、さらに圧倒的な臨場感を持つ作品に仕上げられているとのこと。



大空を埋め尽くすバッタの大群。最新作では、前シリーズではになかった「カメラの移動」という手法が取り入れられているとのこと。



その様子は、「シネマティック」とも表現されています。



その意味を語る番組エグゼクティブプロデューサーのマイク・ガントン氏。「我々が映画館で見る映画の撮影では、固定されたカメラが使われることはほとんどありません」



「カメラは安定化機構を持つカメラ台に据え付けられて滑らかに動いたり、空中を飛び回るように動かされています」



「我々は、この番組のアプローチにその手法を取り入れました。とはいえこれは映画のような作品にしたかったからではなく、そのような手法を使うことでより強く訴えかける映像が収められるからです」



番組を製作しているBBC Natural History Unitは、イギリスのブリストルに拠点を置いており、60年にわたる歴史を持っています。



その中でも特に有名なのが、日本でも放送されていたデイビッド・アッテンボロー卿による番組です。



BBCでは、長年にわたって自然の姿を収める活動を続けてきました。これは1956年に制作された「Zoo Quest」でのコモドオオトカゲの姿。



そしてこれが1984年の「The Living Planet」でのコモドオオトカゲ。映像が鮮明になっていることがわかります。



そして最新のプラネットアースIIではこんなに高品質な映像に。ややもすれば自然以上に誇張されているようにも見えてきますが、たしかにビビッドな映像からは強いリアリティが感じられます。



映像の進化の歴史は、カメラの進化の歴史でもあります。最初に使われていたのは、16ミリフィルムを使ったカメラでした。これも当時としては最新技術だったとのこと。



クリエイティブディレクターのニール・ナイチンゲール氏が当時の状況を語ります。



「当時のテレビカメラは巨大で、とても持ち出せるものではありませんでした」



「これはフィルムを使う映画の世界でも同じで、とてもジャングルに持ち込むようなことはできませんでした」



また、16mmカメラに対する厳しい目があったことも理由の一つ。当時のBBCでフィルム部を統括していた人物が「もしBBCで16mmフィルムの映像が放送されるようなことがあったら、それは私の屍を超えていったあとのことだろう」と、死ぬ気で16mmフィルムの使用を拒む言葉が残されているとのこと。



しかし、アッテンボロー氏は最初の海外ロケの時から16mmカメラの使用にこだわったそうです。



その結果、従来は撮影できなかった野生動物の克明な姿を収めることに成功。例えばこのインドリの姿を収めたのも16mmフィルムのカメラ。



そして2016年、同じインドリの姿をカメラに収める際には、単なる姿だけでなく、カメラを周囲で動かしながらの撮影が可能になっています。





その進化を支えた技術の一つが、「Stabilization (安定化)」。



カメラを手で持って撮影する時、必ずと言ってよいほど「手ぶれ」が発生します。ヘリコプターによる空撮でも同じ問題が起こり、特にカメラでズームアップした時にその悪影響が顕著に表れます。



この問題を回避するために、カメラマンはクレーンを使ったり……



タイヤを持つ車台「ドリー」の上にカメラを載せたり……



レールの上を移動させる「スライダー」などを使ったりして、安定した映像を収める工夫を凝らしてきました。



しかし、水中の撮影をのぞく大部分の撮影の際には、三脚の上にフィルムカメラを載せる撮影方法が使われてきました。



これに大きな変化が訪れたのは、2002年のことだったそうです。



この年、プラネットアースシリーズの撮影を開始するにあたり、BBCは撮影をフィルムからデジタルHDカメラへとスイッチしました。



これにより、撮影手法が大幅にグレードアップ。そのひとつが、ヘリコプターの機体の下にカメラをぶら下げる「シネフレックス・ヘリジンバル」と呼ばれる制震装置の導入でした。



これにより、同じヘリを使った撮影でも揺れのない鮮明な撮影に成功。



また、高い高度からの撮影を可能にしたことで、野生の動物に近づくことなく、自然な姿を撮影することを可能にしています。



この白いキツネが狩りをするシーンも、ヘリによる空撮。



シカを追いかけて仕留めるまでの一部始終が、ヘリを使った空撮によって収められています。これは、三脚を使った従来の撮影方法では絶対に不可能だったもの。



シネフレックス・ヘリジンバルのシステムでは、映像を捉えるカメラとデータを記録するレコーダーが別体になっており、自由なレイアウトが可能。これは、従来のフィルムやテープでは得られなかったメリットです。



よく知られているとおり、カメラ用ジンバルはX/Y/Zの3軸の動きを制御するシステムで、外部から加えられた揺れを相殺してブレや傾きを防止できる装置です。



そのため、ヘリコプターの機動による影響を受けず、常に安定した撮影が可能になりました。





そしてこの技術が、近年はドローンや手持ちタイプのジンバルに搭載されるようになりました。





そのため、迫力のある空撮や……



地を這うようなアングルでも安定した映像が可能に。



BBCではこれまでにも、古くから使われてきたステディカムを使って撮影していましたが……





小型軽量で性能も高い電動ジンバルは多くのメリットをもたらしています



ペンギンの群れの中に持ち込んだり……



街の中を跳ね回る小ザルの姿を近くで捉えたりが可能に。



そして何より、BBC Natural History Unitがこだわっっているのが、「ストーリー」を伝えること。



たとえば、プラネットアースIIに収められているオオトカゲとヘビの死闘もその一つ。ヘビの大群が追いかけるのは……



一頭のオオトカゲ。必至で逃げようとしますが……



複数のヘビに羽交い締めにされてしまいました。このまま締め上げられて一巻の終わりと思いきや……



うまくすり抜けて脱出に成功



そして再び追想劇が再開。このような自然の姿を目の当たりにできるのも同シリーズの醍醐味というわけです。



プラネットアースIIを巡っては、自然の素晴らしいところを理想郷的に取り上げるだけで、自然環境の問題など本当の姿を伝えていないと批判する声も挙がっていますが、自然の姿を克明に目の当たりにすることで親しみが湧くというアッテンボロー氏の見方も。いずれにせよ、世界最高峰の技術で撮影されたシリーズであることには疑いの余地はなさそうです。

NHKスペシャル プラネットアース供NHK 自然 Nature

http://www.nhk.or.jp/nature/feature/planetearth2/