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 ベネズエラ政府は15日、CNNのスペイン語放送「CNNエスパニョール」を放送禁止にしました。

 放送禁止となる前、CNNは、ベネズエラのタレク・エルアイサミ副大統領が不正なパスポート発給に関与したとする報道をしていました。放送禁止となったCNN曰く、ベネズエラのロドリゲス外相は、CNNの報道は「真っ赤な嘘」と批判したとしています。ベネズエラ当局は、CNNの報道が、「ベネズエラ国民の平和と民主的安定を脅かした」としています。

 今回のCNNの報道は、内部告発者の証言及び機密文書が大きな部分を占めています。

 証言したのは弁護士であるミサエル・ロペス氏。

 ロペス氏は弁護士としてイラクのベネズエラ大使館で2013年から2015年までの間に活動していました。ロペス氏はこの間、明らかとも思えるベネズエラによるビザ発給などでの不正の疑いがあることに気づきました。複数の機密文書や証拠品の写真を撮影、そしてこの不正を政権中枢部にいる人間にまで報告したわけですが、誰として動かなかったとしています。

 業を煮やしたロペス氏は、この資料をスペインにてFBIに手渡すことに。もちろん機密資料を手渡したということで、ロペス氏はベネズエラ当局から完全マークされ、今はスペインで自分と家族の今後を不安に思いながら過ごしているとしています。

 このロペス氏への独占取材部分は、内部告発者の声とだけあり、見ていて非常に心を揺さぶられる内容となっていました。

◆副大統領が関わっているとされる機密文書

 さらに独自の調査を継続したCNNは、173人のパスポートや身分証が中東出身者に発給され、その中にはテロ組織ヒズボラと関係ある人物もいたとする機密文書を独自入手。ここにタレク・エルアイサミ副大統領が関係しているとまで踏み込みました。

 エルアイサミ副大統領が関係しているという点が事実であると、これは実に興味深いことになってきます。

 エルアイサミ氏は、「副大統領」ではあるものの、その役割は重要で、マドゥロ大統領失脚の際は、その後継者となる人物となります。将来のベネズエラ大統領の最有力候補の一人なわけです。そんなエルアイサミ氏のスキャンダルは、将来のベネズエラのゆくえを大きく左右します。そのような中、ベネズエラ政府はCNNエスパニョールを放送禁止とし、「真っ赤な嘘」と批判したわけです。

 この点について、筆者はベネズエラ人の有識者複数名と意見交換したところ、総じて

「エルアイサミ副大統領は危険人物。彼がこのようなスキャンダルに関わっていてもまったくおかしくない」

という答えが返ってきました。国民の本音では、エルアイサミ副大統領は「クロ」と思っている人が非常に多いのが現状です。

 なお、エルアイサミ副大統領はCNNの報道とは比にならないほどのダメージを同時期に受けています。

 米財務省が13日、麻薬密輸で重要な役割を果たしたとして、 エルアイサミ副大統領に制裁を科したのです。米当局は数年もの間、この件を調査していたとしています。様々な麻薬密輸にエルアイサミ副大統領が関わっていたという話ですが、米当局は米国内にあるエルアイサミ副大統領の資産を凍結しました。

 いったいどれくらいの資産が凍結されたのか。米財務省の会見を聞いていたところ、ムニューチン財務長官が発した言葉、それは、

「数千万ドル」

 でした。日本円で「数十億円」です。凍結されてはシャレにならない金額となっています。

 ただでさえ仲が悪い米国とベネズエラ。今回の一連の騒動は、両国の関係悪化に拍車をかける可能性が高いです。

 米国とのさらなる関係悪化は、ベネズエラ経済に悪影響を及ぼすことでしょう。そして、これは国民の不満を高め、情勢の不安定化にもつながります。

<文・岡本泰輔>

【岡本泰輔】
マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。