昨季、クラブ史上初となるJ2でのシーズンを過ごした清水エスパルス。序盤こそ厳しい戦いを強いられたが、終盤に入ってから9連勝を飾るなど快進撃を披露し、降格時に掲げた「必ず1年でJ1に復帰する」という公約を見事に果たした。

 今季は、2年ぶりに国内トップリーグの舞台に挑む。開幕戦は、ホームのアイスタ日本平でヴィッセル神戸を迎え撃つ。当日のチケットは、自由席などをわずかに残すだけと好調な売れ行きを見せ、日本一を自認するサッカーどころの熱気は日に日に高まっている。

 昨季終盤の勢いに乗って、今季の目標を「9位以内」と設定したチームは、今回初めて沖縄キャンプで始動。その後、鹿児島で2次キャンプをこなし、最後は地元で調整を行なって、ここまで順調な仕上がりを見せている。

 鹿児島キャンプでは、小林伸二監督が「自分たちがJ1でどこまでやれるのか、その目安にしたい」と言って臨んだ柏レイソルとの練習試合で、1-0と勝利。昨季、J1年間8位のディフェンス陣を効果的に崩してチャンスを連発し、守備でも要所を抑えて完封した。

 その戦いぶりには、「(相手も)まだ仕上がっていない段階ではあるが、トップに強力な外国人選手をそろえている相手を無失点に抑えたことは大きい」と、小林監督も一定の評価を与えた。

 練習試合とはいえ、J1クラブ相手に勝利を挙げたことで、選手たちも自信を深めた。昨季のJ2得点王で、この試合でもゴールを決めたFW鄭大世は、「(J1では)個人の力だけで得点するのは難しいけど、組織で崩していけばチャンスは作れる」と、J1での戦いへの手応えを口にする。

 また、大宮アルディージャに移籍した大前元紀に代わって、今季から背番号10を背負うこととなったMF白崎凌兵が、この日は鄭のゴールをアシスト。大前の穴埋め役を全うし、新シーズンに向けて明るい見通しをこう語る。

「守備でバタバタした場面もあったけど、そこはチームで乗り越えられた。逆に、何度もチャンスを作れたのは大きい」

 開幕までに公開した3度の練習試合で、唯一負けたのは鹿児島キャンプでの京都サンガ戦(J2)だった。しかしそれも、主力組が出場していた時間は2-2のドロー。そうした結果を受けて、指揮官もかなりの好感触を得たようだ。

「昨季と選手がほとんど変わっていないので、選手間の連係が深まったし、戦術も確実に浸透してきた」


練習中、選手個々に細かな指示を与える小林伸二監督(左) このように、J1での戦いに希望が膨らむ仕上がりを見せる清水。ただ、一方で「降格圏を気にしながらの下位争いの可能性もある」といった懸念の声も少なくない。清水に詳しいある解説者は、補強の弱さを指摘する。

「(選手の)駒だけで言えば、大砲の大前が抜けた穴が埋まっていない。彼に代わる選手を補強できなかったことが、必ず響いてくると思う。J1のクラブを敵に回して、常にゼロで抑えられるような守備力もないので、(戦力的に)得点力が落ちた状態で、上のカテゴリーで戦うことには無理がある」

 別の解説者は、現状の戦力で難敵ぞろいの序盤戦を乗り切れるかどうか、心配する。

「白崎をはじめ、DF松原后(まつばら・こう)、FW金子翔太、FW北川航也ら元気な若手が多いので、開幕戦から連勝するようなら、勢いに乗って面白い存在になると思う。ただ、その序盤戦は、神戸、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズなど、厳しい相手ばかり。そこで黒星が続くことになれば、チームが若い分、浮上するきっかけをつかむのが難しくなるかもしれない」

 練習試合でまずまずの結果を残しているとはいえ、選手たちも決して楽観視はしていない。あるベテラン選手は、「(J1でも)なんとなくやれる気もするけど、実際に開幕してみないとどうなるかわからない。ほぼ同じメンバーで降格を経験したわけだから……」と、不安そうな顔を見せた。

 さらに別の選手も、清水と他のJ1クラブとの戦力を冷静に分析し、厳しい戦いになることを覚悟していた。

「少なくともJ1で上位を争うチームとは、個人の力量が絶対的に違う。その差が大きいことは、選手みんなが思っている。ならば、チームとしてどう対抗し、どう戦っていくか、ということになるけど、長いシーズン、いい連係をずっと維持していくのはなかなか難しいですよね」

 だが、小林監督はあらゆる不安の声も意に介さない。とりわけ、伸び盛りの若手選手への期待は大きい。

「大前が抜けた、という指摘は多いけれども、うちは個の力よりも組織的に戦うチーム。その力は一層強くなっている。それに、昨季も大前がケガで離脱したとき、代わって出場した若い選手たちが結果を出した。ベテラン選手も、彼らをうまく支えてくれた」

 上のカテゴリーに挑むにあたって、目立った補強がなかったのは、やはり気になるところ。しかしその分、指揮官は組織力アップを図って、チーム強化につなげたという。

 かつて一時代を築いた”オレンジ軍団”。はたして、名門復活への第一歩を刻むことができるのか。まずは開幕戦の戦いに注目したい。

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