Photo by at Will Work.


Sansan株式会社が行った「働き方に関する意識・実態調査」によると、『「働き方改革」の施策によって「業務に支障が出ている」』と答えた就業者は42.9%に及ぶそう。「ノー残業デーで別の日のサービス残業が増えた」などという話を耳にすることもあるように、働き方を変えることの難しさを実感することは多いはずです。

2017年2月15日に開催された『働き方を考えるカンファレンス2017』では、自宅などから働くことができ、働き方の自由度を上げてくれるものとして期待を集めている「リモートワーク」についての調査結果が紹介されました。自由な働き方を可能にするというメリットに期待がかかるリモートワークですが、この調査によると導入後に働く人や会社にとってデメリットとも見える影響が出ているようです。

リモートワークでも「長時間働く人」が出た


170220_slide_work_hours.jpgリクルートワークス研究所が全国の4万人強の個人を対象に実施した「全国就業実態パネル調査2016」より。回答者を性別と「働く場所を自由に選べる/選べない」でわけ、回答を集計した。なお同調査によると、正社員でリモートワークを実践する人は4.9%とまだまだ少ないが、就業者全体では12.8%とのこと。


リクルートワークス研究所が行った「全国就業実態パネル調査2016」によると、「働く場所を選ぶことができる男性の17.3%が週に55時間以上働いている」と回答しています。ライフハッカー[日本版]では、最近試験的にリモートワークを実践していますが、その中でも「定時がないので仕事の止め時がわからなくなって、ついつい働き過ぎてしまう」と述べる編集部員も。どうしてリモートワークだと働き過ぎてしまうのでしょうか?


170220prof.jpg調査を発表した、株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 主任研究員/主任アナリスト 萩原牧子さん。 Photo by at Will Work.


同調査を紹介した、リクルートワークス研究所の萩原牧子さんは原因は次のような点にあるのではないかと語りました。

萩原:「社員の管理ができないリモートワークだと、やっぱりダラダラ働く人が増えるよね」と思う人もいるかもしれませんが、私は「仕事の評価方法」の問題だと思っています。

私もリモートワーカーですが※、「早く成果を出さないとサボっていると思われる」と感じて、働きすぎにつながっているひとがいるだろうなと思います。リモートワークを形だけ導入するのではなく、「社員にどういう働き方をして、どういう成果を出してほしいのか?」も併せて議論する必要があるのではないでしょうか。いまは、その部分が抜け落ちているケースが多いと感じています。

※リクルートではリモートワークが導入されています。詳細はこちら(PR記事へのリンク)。

全社的にリモートワークを導入しているソニックガーデン社で「社員を評価しない」という方法が採用されていることも、「リモートで働く人をどう評価すべきか?」について会社として考えなければいけないことをうかがわせます。

これに対して、同調査の結果のうちで「自由に働ける女性は労働時間が短い」というのも興味深い点です。働く場所を選べない女性では、週の労働時間40時間未満は5.6%ですが、働く場所を選べる女性では12.6%になっています。家事や育児といった「無償の労働」を担当することが多く、非常に多忙と言われる日本の女性のほうが、自由な働き方を活用して時間を確保していくような働き方を追求するのかもしれません。


リモートワークをすると「転職」してしまう?


170220_slide_job_change.jpg

「転職意向がある」とは、「現在転職したいと考えていて、転職活動を行っている」あるいは「現在転職したいと考えていて、転職活動を行っていない」という状態を指す。


今回のリクルートの調査では、別の問題も浮き彫りになりました。リモートワークをしている男性の約1/4が転職を検討しているのだそうです。リモートワークをしていない男性では、転職を検討している人は1/5なので、リモートワークをする男性には転職を考える傾向があると言えそうです。

萩原さんにこの結果の意味を個別にインタビューすると、次のような回答をいただきました。

萩原:働く場所を自由に選べる男性の24.9%、選べない男性の20.1%に転職意向がある。働く場所を自由に選べる方が、転職意向がある人が多いという結果になっています。

とはいえ、これは平均した数字に過ぎません。実際のところは、「リモートワークの運用に成功している会社と失敗している会社がある」ということだと思います。リモートワーク導入によって社員の心が会社から離れてしまうのは、先ほどの評価の話に加えて、導入後のマネージメントの問題でしょう。今まで対面で行ってきたコミュニケーション、それに代わるコミュニケーションがないのかもしれません。

その一方で、萩原さんはこの結果を単なるデメリットとは考えていないそう。その背景には、自由に働ける人は仕事にかかわる知識や技術の向上に積極的に取り組んでいるという調査結果があります。

萩原:「自己啓発活動」についても調査を行いました。自己啓発活動とは、自分の意思で行う、仕事にかかわる知識や技術の向上のための取り組みのことですが、男女ともに「働く場所が選べた人」のほうがそうした活動を行っている傾向が高くなっています。自由に働けることが外で刺激を受け、自ら学ぶという結果につながっているのではないでしょうか。

外の刺激を十分に受けているからこそ、視野が広がり、社外に興味が広がっているということでしょう。


リモートワークをすると「仕事と生活への満足度」は上がる


170220_slide_satisfaction.jpg

「仕事そのものに満足していた」という問いに「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した人と、「生活全般」について「満足していた」「まあ満足していた」と回答した人の割合。


萩原さんが指摘するような評価とマネージメントについて会社としてどう考えるべきか、といった課題がうかがえる一方で、リモートワークを導入することで「仕事と生活への満足度」がかなり上昇します。リクルートの調査結果では、「仕事に満足している人」の割合は、男性ではリモートワークできている人のほうが15%ほど、女性では7%強、高くなっています。「生活への満足度」も男性で18%ほど、女性でも15%ほど高くなっています。

まとめると、「リモートワークには課題もあるが、社員の仕事や生活への満足度を上げる有効な方法」だということになるでしょう。



『働き方を考えるカンファレンス2017』では「働き方改革のための先進的な知見はもう十分揃った。あとはもう改革を実行するだけという段階に来ている」という見解を示す登壇者が多かったのですが、これはリモートワークについても言えることだと感じました。ライフハッカー[日本版]にも「リモートワークを実践する方法」が多数公開されており、参考にできる事例は本当にたくさんあるという状況です。先行事例を参考にリモートワークを実践するフェーズに入っており、フィードバックを重ねながら「うまく機能するリモートワーク」を会社ごとに構築していくことが本当の課題なのかもしれません。


全国就業実態パネル調査

(神山拓生)