写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●格安スマホの台頭で減る売上
好調な業績を記録する携帯電話大手だが、うちいくつかの企業では、業績のけん引役となっているのが携帯電話事業ではなく、光回線による固定ブロードバンド通信事業である。しかしなぜなぜ携帯電話事業者が固定通信に力を入れるようになり、それが業績好調へとつながっているのだろうか。

○格安スマホ人気で減少する売上を支える"光"

1月から2月にかけて大手携帯3社の決算が相次いで発表されたが、その内容を見ると、米国でも事業展開しているソフトバンクグループは、円高の影響を受けて前年同期比では減収となったものの、いずれも業績自体は伸びており、利益を大きく向上させるなど好調な決算となっていた。

主力の国内通信事業を見ても、3社ともに売上・利益共に高めており、総務省による端末の実質0円販売の事実上禁止措置や、MVNOなど低価格サービスの台頭などを受けてもなお、好調なようだ。だがその詳細を見ていくと、やはりそれらの影響が随所に出てきており、移動体通信事業に大きな影響をもたらしつつある様子を見て取ることができる。

例えばKDDIは、今回の決算からモバイルの契約数に関して、auの契約数に加え、UQコミュニケーションズやジュピターテレコムなど、連結子会社のMVNOの契約数も含めた「モバイルID数」を評価の対象とすることを明らかにしている。しかもその内訳を見ると、auの契約数は前年同期比38万人減の2530万人と減少傾向にある一方、MVNOの契約数は前年同期比29万人増の35万人と大きく伸びており、低価格サービスにユーザーが移っている様子を見て取ることができる。

またソフトバンクグループ傘下のソフトバンクも、ワイモバイルのユーザーが大きく伸びていることから、ARPUが前年同期比150円減の4530円となるなど、売上の基礎となるARPUが減少するに至っている。NTTドコモも1月27日に実施した決算会見で、昨年1月、2月頃からワイモバイルなどへの流出が多くなっていることを明らかにしており、端末価格の高騰などによる低価格サービスへの顧客流出が、各社に深刻な影響を与え始めていることは確かなようだ。

しかしそうした中にあって、キャリアの業績をけん引している事業がある。それは、光回線による固定ブロードバンド事業だ。中でも2015年よりサービスを開始したNTTドコモとソフトバンクは、いずれも光ブロードバンドが業績けん引に一役買っていることが、決算内容からも見て取ることができる。

「ドコモ光」を展開するNTTドコモの場合、今四半期の契約数は前年同期比2.7倍となる297万契約に達し、1月14日には300万契約を突破したとしている。またソフトバンクも、「ソフトバンク光」の累計契約数が前年同期比2.6倍の314万に達したという。ちなみにこの事業に関しては「auひかり」で先行しているKDDIも、今四半期の光ブロードバンド契約数は前年同期比5%増の388万と、小幅ながら伸びていることが分かる。

●光ブロードバンドのビジネス的意味
○利点は固定・携帯のセット割による解約率低下

光ブロードバンドの回線契約が増えれば、それだけ月当たりの売上が増えることから、これらサービスの伸びが携帯大手の売上向上に大きく貢献していることは確かだろう。だが携帯各社にとって、光ブロードバンドサービスの存在は、携帯電話事業にもプラスの効果をもたらす存在でもあるのだ。

それを証明しているのが、光やケーブルテレビなどによる固定ブロードバンドを先行して展開してきたKDDIだ。KDDIは同社、もしくは提携する固定ブロードバンドサービスと、auの携帯電話サービスを一緒に契約する契約することで、携帯電話側の料金を割り引く「auスマートバリュー」を2012年より開始しているが、このサービスが携帯電話の解約防止に大きな効果を発揮したことから注目を集めたのだ。

というのも、固定ブロードバンドは携帯電話と異なり、一度敷設した後は入れ替えをするのが容易ではないことから、長期間継続的に利用される傾向が強い。それゆえKDDIは、固定・携帯のセット契約による割引を提供することで、当時番号ポータビリティによる競争激化で乗り換えが激しかった携帯電話ユーザーの繋ぎ止めに成功したわけだ。

そうしたことから他の2社も固定・携帯のセット割を展開したかったのだが、固定ブロードバンド回線を全国規模で敷設するには携帯電話事業以上の莫大なコストが必要で、それを実現できているのはNTT東西の「フレッツ光」くらいしかない。KDDIは自社が持つ光回線に加え、全国各地のケーブルテレビ事業者を味方につけることで、投資コストを抑えつつ広いエリアをカバーできたが、ケーブルテレビ事業者は地域による制約が多いため、先行された他社は同様の手法をとることが難しくなっていた。

KDDI以外の企業が全国的にセット割を展開する唯一の方法は、NTT東西の光回線を何らかの形で用いることだが、そもそもNTTグループとライバル企業が提携するのは難しい。また同じグループのNTTドコモも、電気通信事業法の禁止行為規制によってNTT東西と一体での営業ができないことから、やはり長い間、セット割は実現できなかったのである。

だが2015年、NTT東西がフレッツ光のネットワークを卸売りする「光コラボレーションモデル」を開始。これによって自社でネットワークを持たないソフトバンクのような企業が光ブロードバンドサービスを提供可能になったほか、NTTドコモも他社と同じ条件で回線の卸を受けることで、同様のサービス提供が可能となった。そこでようやく2社が、先行するKDDIに追いつくべく固定・携帯のセット割を推進して販売拡大を進めたことで、光ブロードバンドサービスが急速に伸びているわけだ。

●今後も力を入れざるを得ない
○顧客流出に必死な3社は今後も光に注力

また今後の携帯大手の動向を考える上でも、固定・携帯のセット割はプラスの効果をもたらすものと考えられる。セット割によって固定通信を契約してもらうことは、他社だけでなくMVNOなど低価格なサービスへと安易に流出することを防ぐのにも、一定の効果があると考えられるからだ。

しかもここ数年来、大手キャリアは自社の顧客に向けたコンテンツサービスの充実度を高めており、2月8日にもNTTドコモがスポーツの動画ストリーミングサービス「DAZN for docomo」を開始するなど、動画コンテンツの充実を図っている。そうしたサービスをスマートフォンだけでなく、自宅のテレビやタブレットなど利用する上で、光ブロードバンドは必須となることから、サービスの幅を広げるとともに、それを顧客のつなぎ止めにも活用できるのはメリットだ。

また固定・携帯のセット割を前提とした一体販売によって、相対的にユーザー当たりの獲得コストが下がるというのもメリットになる。現在は獲得競争が激しいこともあって営業費用は拡大傾向にあるようだが、固定回線の契約は家族まとめての契約拡大にも結び付きやすいだけに、今後はメリットが一層大きくなると考えられそうだ。

総務省の方針によって端末価格は今後も一層高騰すると見られ、低価格サービスへの顧客流出は今後も加速することが予想される。だがその傾向を野放しにしておけば、携帯3社の売上はじり貧になってしまうだろう。それだけに、自社顧客の流出を可能な限り防ぎつつ、売り上げを高めていく上でも、携帯3社にとって光ブロードバンドの存在は重要だといえ、今後も各社は光ブロードバンドサービスの販売、ひいてはセット割の契約拡大に力を入れていくといえそうだ。

(佐野正弘)