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前回にも触れたように、ヘリコプターのエンジンはターボシャフト・エンジンが主流である。ヘリコプターに求められるのはローターを回す機能だから、ジェット・エンジンみたいに排気ガスを噴出して推進力を得るのではなく、排気ガスでタービンを回して回転力を得る。

○最大でも三発機

固定翼機だと、現役の機体では8発機というのがある。ボーイングB-52爆撃機がそれだ。過去にはドルニエDo X飛行艇という12発機(!!!!)まであった。エンジン1基当たりの馬力が足りない場合、数で補おうという話である。しかし、少なくて済むならそのほうがいい。数が増えれば重くなるし、コストは上がるし、整備も面倒になる。

これに対し、当節のヘリコプターは最大でも3発機だが、それとて少数派。普通は単発ないしは双発である。そして、エンジンはまとめて胴体上部に搭載する。トランスミッションやローター・ヘッドの近くにエンジンを置くのが合理的だから、そうなる。

そして、ターボシャフト・エンジンというのはビックリするぐらいコンパクトだ。コンパクトなエンジンだから、機体上部にトランスミッションと一緒に積み込めてしまう。航空関連の展示会があると、メーカーが現物を持ち込んで展示しているから、昨年の「国際航空宇宙展」あたりでターボシャフト・エンジンの現物を御覧になった人もいることだろう。

固定翼機とヘリコプターが違うのは、ヘリコプターでは複数のエンジンの出力が1つのトランスミッションにまとめて取り付くこと。だから、ヘリコプターで一部のエンジンが停止した場合は、トランスミッションに入る駆動力が減るものの、多発の固定翼機のような左右の不均衡は生じない。

固定翼機はエンジンごとに独立して推進力を発揮しているから、その一部が停止すると左右の推進力が不均衡になる。具体的にいうと、停止したエンジンがある側に機首が振られるので、反対方向にラダーを動かして機首を戻す必要がある。

○レシプロ・エンジン時代のあれやこれや

では、小型・軽量・大出力のターボシャフト・エンジンがモノになる前、レシプロ・エンジンを使っていた草創期のヘリコプターはどうしていたか。

例えば、シコルスキーCH-37モハーベという輸送ヘリコプターがある。胴体内に人や貨物を搭載するスペースを確保する必要があったので、そこにエンジンを納める場所はない。

そこで、胴体の左右に巨大な空冷星形18気筒エンジンを外出しする形で取り付けて、それをカウリングで覆った。エンジンの下には降着装置が伸びて、エンジンから胴体上部のトランスミッションに駆動軸がつながる。

これも相当に変わっているが、もっとビックリさせられるのが、同じシコルスキー社製のS-58。機首直後の胴体内に、ライトR-1820という空冷星形9気筒エンジンを搭載しているのだが、エンジンの向きは尻上がりである。だから出力軸は後ろ上方に向けて突き出ており、それが機体上部のトランスミッションにつながる。

S-58の機首まわりを見ると、鉢巻のように斜めにルーバーが開いているが、これはエンジン取付部の隔壁と角度をそろえたためだ。機首のカバーをガバッと外すと、前方斜め下を向いたエンジンが姿を現す仕組みになっている。

「機首をエンジンに占領されてしまったら、コックピットはどこに置くの?」という疑問が出てくるが、実はエンジン室の上方、トランスミッションの前側に狭そうなコックピットがある。エンジンより上に陣取っているので前方視界は確保できるが、その代償として機体は背高になった。また、コックピットへの出入りは面倒そうだ。なお、人や貨物を積み込むキャビンは後方である。

○3発機のエンジン配置

話を現代に戻すと。

双発機なら、トランスミッションの左右にエンジンを1基ずつ据え付ければいいので話は簡単だ。では3発機はどうするのか? 固定翼機だと、かつてユンカースJu52、あるいはフォード・トライモーターといった3発プロペラ輸送機があり、いずれも左右の主翼に1基ずつと機首に1基、エンジンとプロペラを取り付けていた。

ところが 、ヘリコプターだと話が違う。現時点でポピュラーな3発のヘリコプターというと、シコルスキーCH-53Eとレオナルド・ヘリコプターズAW101がある。

このうちCH-53Eは、先に双発型のCH-53Dがあり、パワーアップのためにエンジンをひとつ増やすという荒技(?)で作られた。そして、追加した3基目のエンジンは機体中央部の左舷側に押し込められた。

以下に、シコルスキー社の製品史としてH-53シリーズについてまとめたWebページを示す。下の方にスクロールしていくと、CH-53Eのトランスミッションや、駆動系の構造について描いた図が載っている。注意していただきたいのは、H-53シリーズのうち3発機はCH-53EとMH-53Eだけで、その他のモデルは双発というところ。

一方、AW101は外見や排気管の配置からすると、左右に1基ずつ、トランスミッション後方に1基、という配置になっているようだ。最初から3発機として設計した機体だから、こちらの方がきれいな外見にまとまっている。

プロペラ推進の固定翼機だと、中央のエンジンを後ろ側に配置した場合にはプロペラの設置場所に困ってしまうから、中央のエンジンは機首に置くしかない。しかし、ヘリコプターは出力軸がトランスミッションにつながっていればいいので、中央のエンジンを後ろ側に持っていくこともできる。

(井上孝司)