浦和レッズ・西川周作インタビュー

 浦和レッズの沖縄キャンプ。GK西川周作は、例年になく楽しそうだった。

「レッズに来て4年目ですけど、初めて最初からいい状態でキャンプに入れたんです」

 2014年にサンフレッチェ広島から移籍してきたときは、天皇杯決勝まで戦ってほとんどオフがなく、疲れが残ったままキャンプインした。2015年は日本代表としてアジアカップに挑み、チームへの合流が遅れた。昨年は天皇杯決勝後に左膝関節を手術。リハビリを経て、途中からチームに加わった。しかし今年は、オフが長かったこともあり、チームの始動から万全の状態でキャンプインすることができたのだ。


レッズに来て「一番いい状態」と語る西川周作 昨季のレッズは、チャンピオンシップで鹿島アントラーズに敗退。最大の目標となるJリーグ王者の座を逃した。それでも、リーグ戦では勝ち点74を挙げて年間勝ち点1位となり、ルヴァンカップを制した。10年ぶりにタイトルを手にして、2015年シーズンからまた一歩前進し、着実に成長している姿を見せた。

 西川はまず、その昨季について振り返る。

「レッズに来てから、昨季は一番手応えを感じたシーズンでした。年間勝ち点1位になりながら、シャーレを掲げることができなかったのは悔しかったですけど、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)ではグループステージを突破できたし、ルヴァンカップを獲れた。これまで”ここぞ”という試合に勝てなくて、『勝負弱い』と言われていましたが、そのレッテルを払拭できたと思います。しかも、選手全員が優勝するために何が必要かっていうことを理解できた。それは、今年につながると思います」

 西川は、10年ぶりのタイトル獲得による最大の恩恵は、優勝するために必要なことを全員で共有できたことだという。その「必要なこと」とは、具体的にはどういったことだろうか。

「昨季の総括をする場で、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督)から『大事な試合のときに、自分たちのスタイルを表現できなくて、自分たちらしさを失っていた』と言われたんです。ルヴァンカップのときは、最後はPK勝ちでしたけど、自分たちのスタイルを貫いて勝てた。でも、チャンピオンシップでは、ちょっと怖がったり、いつもやっていることをやらなかったり、できなかったりした。その結果、シャーレを手にできなかった。ミシャが言うように、何かがかかっている試合でこそ、(いつもどおりの)浦和のサッカーを貫くこと。それが、優勝するために必要なことです」

 昨季、レッズが躍進できた要因のひとつは、守備力の向上にある。それは、データ的にも明らかだ。失点は、2015年の「40」から2016年は「28」へと減少し、被シュート数も「325」から「240」まで減っている。とりわけ、被シュート数の大幅な減少から、守備の”質”が上がったことがよくわかる。

「失点が減ったのは、前線からうまくコースを限定し、高い位置でボールを奪ってくれて、相手陣内でプレーする時間が長かったから。プレスが機能して、カウンターを受ける危険もかなり減りました。被シュート数の数字を見ても、それがよくわかります。僕自身、仕事をしなくてもいい試合が多かった。それは、みんなのおかげだと思います。今年も、それをベースにして、さらに質を上げていければ、もっと失点を減らせると思う」

 セカンドステージでは、17試合で12失点しかしておらず、今季もこれを維持できれば、優勝争いに加わるどころか、間違いなく頂点が見えるだろう。

 また、この守備力アップは、同時に攻撃面に厚みをもたらした。前からボールを奪えるようになった分、相手を圧倒する試合が増えた。そうした試合の中から、西川がベストゲームをセレクトしてくれた。

「ミシャが言うのは、アウェーの横浜F・マリノス戦(ファーストステージ第6節)です。0-0だったんですけど、ワンサイドゲームというか、ほとんどの時間、相手コートに押し込んで数多くのチャンスを作った。実際、僕の仕事はほぼなかったですからね。ミシャは『相手コートでずっとプレーする』というのが理想なので、F・マリノス戦はまさにそんな感じでした。

 個人的には、セカンドステージ(第13節)の広島戦です。(ファーストステージ第16節の)アウェーの試合では完璧にやられて、2-4で負けたんです。すごい”誕生日プレゼント”をもらったなぁって感じだったので、次の試合では必ずリベンジしたいと思っていました。そして、迎えたホーム・埼玉スタジアムの試合では、ピンチもあったけど、それをしっかり止めて3-0で勝った。あれは、うれしかったですね。気持ちよくリベンジできましたから(笑)」

 今回のキャンプでは、ペトロヴィッチ監督が例年とは違う練習メニューを提示するなど、変化が見られた。例えば、フルコートでの紅白戦は過去5年間で1回しかやったことがなかったが、それを今回は実施した。また、新加入の選手たちにレッズのやり方を習得させるメニューや、それらの選手たちを生かすような戦術練習も行なった。そこから、攻撃の引き出しをどんどん増やそうとしているのが見て取れる。

「真ん中を使ってサイドへ、という展開はミシャがこれまでも言ってきたことですが、今年は中央から、という意識がより強いですね。最終的にはサイドでの仕掛けになるのですが、サイドで1対1の状況を作るために、真ん中を効果的に使いながら、1タッチ、2タッチで(サイドへと)打開していく。さらに『速く』という意識づけの練習もしているので、後ろから見ていると非常に頼もしいです。

 フルコートの練習も珍しいですよね。今まではハーフコートでの紅白戦がメインだったけど、フィジカル強化のためにフルコートでの練習を増やす、という話を聞いています。ミシャ(の頭の中)は、本当に奥が深いというか、いろいろな引き出しを持っているので、さらに強くなれると信じています」

 西川は今年の6月には31歳となる。GKとして円熟期に入ってきているが、これからより長く活躍していくために、何か特別にやっていることはあるのだろうか。

「GKコーチの土田(尚史)さんと話をして、30歳になってからもう1回体を作るというか、ベースを築いていこうということで、フィジカルに力を入れてやっています。できるだけ味方を助けて、攻撃にパワーを与えるようにするには、高いDFラインの背後を、いかに自分が守っていくかが重要になってくる。それには、自分が後ろで動けていないと話にならないですから。それに、土田さんには『GKは足が動かず、ステップワークができなくなると落ちていく』と言われていますし」

 西川がフィジカルを高め、GKとしての質を上げようと努力しているのは、もちろんチームの勝利に貢献するためだが、もうひとつ理由がある。今季、鹿島に加入したクォン・スンテをはじめ、ク・ソンユン(コンサドーレ札幌)、チョン・ソンリョン(川崎フロンターレ)、キム・ジンヒョン(セレッソ大阪)、キム・スンギュ(ヴィッセル神戸)など、Jリーグはここ数年で韓国人GKが一気に増加。このままだと、日本人GKが育っていかないと、西川は危機感を抱いているのだ。

「(韓国人GKが増える)この現状は、日本の将来を考えると、決して好ましい状況ではない。GKが育っていかないと、日本代表にも影響していきますからね。すごく危機感があるし、だからこそ、絶対に彼らには負けたくない。僕だけではなく、日本人GKは『何くそ』って思ってやらないといけない」

 いよいよ、西川にとってレッズでの4年目のシーズンがスタートする。今季の目標はどこに置いているのだろうか。

「ここまで着実に一歩ずつ成長してきたので、あとは目に見える結果だけ。正直、三冠(ルヴァンカップ、リーグ、天皇杯)、さらにACLも含めて、全部のタイトルを獲りたいですね。今までのうっぷんを晴らすには、タイトル1個では満足できない。そのために、自分はゴール前でどっしり守っていきたいと思います」

 西川をはじめ、誰もが万全の準備を整えている今季のレッズなら、タイトル総なめの可能性は十分にあるだろう。

■Jリーグ 記事一覧>>