【海外試乗】ポルシェ911GTS「圧倒的に扱いやすいがストレートはGT3を超えた」

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911カレラSと911GT3の間に位置するスポーティモデル

すでに紹介されているのでご存知だとは思うが、今年1月のNAIAS(北米国際自動車ショー=通称デトロイト・ショー)で、ポルシェはタイプ991 IIと呼ばれる現行911のスポーティバージョン、GTSシリーズをワールドプレミアした。

この新しいGTSは、スポーツというキーワードでいえば、ターボを別格にすると911GT3に次ぐモデル。クーペ、カブリオレ、そしてタルガの911シリーズすべてのボディタイプに用意される。GT3ほどスパルタンではないが、911カレラSよりもスポーティでポテンシャルが高いという位置づけだ。

もう少しわかりやすくいうと、新しくGTSの名前が与えられるのは、もっともベーシックな後輪駆動の「カレラGTS」、そのオープンボディ版となる「カレラGTSカブリオレ」、4輪駆動の「カレラ4GTS」、「カレラ4GTSカブリオレ」、そしてポルシェが1965年から綿々と作り続ける個性的なデザインとオープンエアモータリングを同時に楽しめる「タルガ4GTS」の5車種である。

このラインアップ数を見ただけでも、いかにポルシェがGTSを重要視しているのかが理解できるだろう。

そんな911GTSのファーストドライブは、南アフリカで行った。「これより先(南)には南極大陸しかない」というまさにクルマでいける最南端、地球の行き止まりといってもいいの喜望峰まで走った。

911GTSのタルガとカブリオレはそんな海辺のワインディングロードが似合うクルマだ。ホットバージョンと呼べるGTSだけにサーキットでの走りも気にはなるが、まずはロードカーとして評価するために一般道路をテストドライブした。

タルガとカブリオレで喜望峰を目指してドライブ

先にステアリングを握ったのは、他にはない電動ルーフのギミックが魅力のタルガだ。タイプ991になってからのタルガは、これまでのタルガよりもボディがしっかりとしているから、少々荒れた路面を走っても剛性不足を感じない。フロア部分がカッチリ作られていて無駄な揺れが少ないのが印象的だった。

先代GTSに搭載されていた3.8リッターの自然吸気フラット6(水平対向)は、ポルシェが「ライトサイジング」と呼ぶ3リッターのフラット6に排気量ダウンされたが、ほかの911と同じように自然吸気ユニットからターボに変更。

先代GTSに比較して20馬力アップの450馬力/6500rpmと出力を向上した。

ちなみにこの450馬力は、現行911カレラSと比較しても30馬力の出力向上となる。冒頭でGTSシリーズが911GT3に次ぐスポーティバージョンと紹介した理由もそこにある。

パワーアップしたエンジンに負けないボディのシッカリ感がもたらすこの快適さでオープンエアが味わえるなら、クーペとカブリオレの中間にあたるいいとこ取りのタルガは十分にアリだと思う。

走りの印象をそのままに、見た目でもノーマルの911よりもスポーティに感じるのは、新しくGTS専用にデザインされた前後バンパーをはじめ、ヘッドライトやテールレンズ、エアインテークやエンジンリッド、そしてサイドシルにもGTSに専用のデザインが与えられたからだ。

さらに911カレラSよりも10mm車高が低いスポーツシャーシの採用や、従来モデルと同様に駆動方式にかかわらず、すべてのモデルで4WDバージョンと同じワイドボディ、ワイドトレッドを採用したことも、そう感じさせる要因だと思う。

911シリーズのなかでもGT3に次ぐスポーティなキャラクターを強調するために改良されたエクステリアデザインは、そうした見た目だけでなく前後の揚力を低減させるなど空力性能もいっそう最適化。そこはポルシェらしく機能とデザインの両立に抜かりはない。

スポーツシャーシの採用によって車高はノーマルの911よりもダウンしているが、GT3ほどではないから、街乗りではあまり気を遣わないですむ。同時にオープンでも適度な段差ならうまくいなしている。とくに突起を乗り越えたあとのダンピングの感じがたまらなくいい。GTSでは新しくカーボンシャーシを使ったのかと勘違いしてしまいそうなくらい剛性は高かった。

喜望峰を目指しながら南極からの風をもっと身体いっぱいに感じたいのなら、やはりカブリオレだ。知ってのとおりポルシェは、オープンカーではソフトトップにこだわる。

今では懐かしいが、15年位前に996カブリオレを愛車にしていたこともあって、個人的にも伝統的なソフトトップを採用する911のオープンには別格の魅力を感じている。開口部が大きく開放的なぶん、タルガトップに比べると車体剛性はやや落ちるが、それは気持ちよさとのトレードオフだ。

ソフトトップを開け放ったカブリオレからアフリカ大陸のなかでも有数の都市、ケープタウンのアイコンとなっているテーブルマウンテンを眺めていると、アフリカの空の広さに驚くばかりだ。

ターボユニットでストレートはGT3を上まわる!

2日目はいよいよGTSのクーペでサーキット走行を行う。コースからもテーブルマウンテンが臨める、ケープタウン市内からそう遠くないところにサーキットがある。

ここは1947年に開設された歴史あるサーキットで、かなり昔になるが、ジャガーXKで走ったことを思い出す。2本のロングストレートを組み合わせた単純なレイアウトではあるが、平均速度が高い高速サーキットだ。GTSを試すにはもってこいだといえそうだ。

サーキットの試乗方法は、インストラクターの先導車に追従するカルガモ走行。後ろ2台の試乗車に我々が乗り込む。かなり昔走ったコースなのでレイアウトは忘れているが、そんなときでもインストラクターの後に続きコンボイで走れば、コースのポイントが早く理解できるというメリットがある。

もちろんこれはどこのインストラクターでも同じだが、インストラクターの習性で先導車にピタリと喰らいつけば自ずとペースは上がり、間隔が開くとペースは下がる。

まず手始めにGTSクーペの7速MTからドライブ。先導車の真後ろに並んだ。インストラクターはポルシェの若手テストドライバーで、ニュル24時間レースのワークスサテライトチーム、「マンタイ・ポルシェ」でもステアリングを握るプロフェッショナルだ。

インストラクターのテールから離されないようにペースアップ。最高出力450馬力/6500rpm、最大トルク550N・m(56.1kg-m)/2150-5000rpmのエンジンは、従来モデル比でプラス20馬力、110N・m(11.2kgm)のスペック。

トルクの大幅な向上と、3600rpmも低くなった最大トルク発生回転数、そしてそれが5000rpmまでフラットに続くところがポイントだ。

だが反対にGTSはターボなので、7000rpmがリミット。そのあたりを頭に入れて、低速トルクの太さを活かし2本のストレートを繋ぐタイトに見えるコーナーも3速ギヤで走ることにした。

ちなみにタイヤは、ポルシェがサーキットリコメンドだというピレリの浅溝が装着されていた。その言葉どおりこのタイヤはサーキット走行を意識したもので、簡単にいえばGT3のミシュラン パイロット スポーツカップ2と同じコンセプトだが、街乗りを少し意識していてウエット性能はこちらのタイヤのほうが良いとのことだ。

実際GTSは、911GT3とほぼ同じタイムでニュルを走ると言われているが、その言葉にウソはなかった。自然吸気のGT3よりもターボのGTSはトルクフルなので、コーナーの立ち上がりを過ぎたストレートは確かにこっちのほうが速い。

コーナーではGT3は切れ味が鋭くドライバーのスキルを試すようなピーキーな特性を隠せないが、2150-5000rpmまでフラットに最大トルクが出るGTSは本当に乗りやすくてホット。トータルで評価すれば、GTSは誰でもスポーツドライビングが楽しめるメチャクチャに速い911ということになる。

乗りやすさでいえば、やはりPDK(ツインクラッチ・2ペダルMT)だろう。日本で販売されるGTSはすべて7速PDKらしいので、7速MTの次に7速PDKを試した。しかし正直に告白すると、PDKではイマイチ走った気がしない。

エンスー的な発言をすれば、ドライバーの五感と全身を使う左ハンドルの7速MTでのドライビングこそが、GTSのポテンシャルを骨までしゃぶって楽しむことができる仕様だと思う。

もちろん一般道路でPDKはありがたいが、GT3並のポテンシャルを持つGTSには、硬派なMTが似合うとあえてコメントしておきたい。

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