子どもを育てながらだと、毎日、献立を考えて手の込んだ料理を作るのは難しい(写真はイメージ)


 オイシックスというと「取れたて有機野菜を産地から直送」というイメージが思い浮かびますが、今回取り上げるのは、5種類以上の野菜が摂れる食事2品を20分で調理できる材料とレシピをセットにした献立キットお届けサービス「Kit Oisix(キットオイシックス)」です。

 このサービスは、子どもを持つ忙しい女性を中心に好評を得ています。売上数は昨年対比で240%の成長を遂げており、「第1回日本サービス大賞 優秀賞(SPRING賞)」も受賞しています。受賞理由は次の通りです。

<健康的な主菜と副菜の2品を20分で調理できる献立キットを宅配するサービスで売上数は250万個を突破(2016年4月時点)。農家との直接契約の強みを活かした安心食材、配達日時指定、調理知識不要など、健康と時間短縮を両立したい働く母親を支えている。お客様宅訪問や子供のモニター「コドモニター」を通じて日々サービスやメニューを改善しており、事業者と顧客の共創サービスを実現している。>

オイシックスは何に着目したのか?

 他の会社の献立キットにはもっと短時間で調理できるものもあるのに、一体なぜこのサービスが優れているんだろう? そう思った方もいるのではないかと思います。

 もちろん、細かく比較してみると、野菜の品数の多さやレシピの豊富さ、注文の簡単さやお届けの柔軟さなどで優っているサービスはあります。しかし圧倒的に違うのは、オイシックスのサービスが応えようとしている「事前期待」だと思います。

 例えば、子供を育てながら働く女性は、献立キットにどんな期待をしているのでしょうか。他の献立キットは、「忙しいから、手間なく手早く調理がしたい」という事前期待に着目しています。だから他の献立キッドの調理時間は10分〜15分程度のものが多いのです。

 それに対してオイシックスが着目したのは、忙しい女性の「罪悪感」です。

「仕事で忙しいばっかりに、子供や旦那さんにスーパーのお惣菜や手抜き料理の夕食になってしまって申し訳ない・・・」 そんな思いを感じながら、毎日の調理をしている女性が多いのです。

 この「罪悪感」に着眼したからこそ、オイシックスの献立キットは、調理時間は10分ではなく、あえてひと手間かける20分であることにとても意味があるのです。

 他にも、5種類の野菜が摂れること、料理が2品作れること、毎週10種類以上ものレシピが用意されていてマンネリ化が防げることも、「罪悪感」を中心に考えるとすべてにとても意味があることが分かります。

事前期待は1つではない

 このように、どんな事前期待に応えようとするかによって、サービスの仕立て方や価値の高め方はがらりと変わります。価値ある事前期待に応えることができるサービスは、自ずとお客様から高い評価をいただくことができ、利用者やリピートの拡大によってサービス事業を成長させることができるのです。

 しかし多くの企業では、何でもかんでも「お客様の期待に応えよう」「お客様の期待を超えよう」と、闇雲に取り組んでいます。これではうまくいきません。まずは「満たすべき事前期待」をサービス事業の中心に据える必要があるのです。

 この価値ある事前期待を見つけることは簡単ではないかもしれません。そこで、今回のオイシックスの献立キッドの事例に学ぶとしたら、それは、価値ある事前期待にはいくつか種類がありそうだということです。

 献立キットを利用する忙しい女性の中には、「料理の手軽さ」に期待しつつも、「料理の手抜きへの罪悪感」を感じている方が数多くいます。しかし、献立キットへの要望として「罪悪感を減らしたい」という要望はあまり挙がってきません。

 それは、お客様自身が、「そこまでは期待しすぎだよね」と思い留まってあきらめてしまっているからです。

 お客様には「あきらめている事前期待」があります。これは、よく「潜在ニーズ」や「潜在期待」と呼ばれるものの一種だと思います。こういった事前期待に応えられると、サービスの価値や評判がグッと高まります。

「あきらめている事前期待」は、業界やサービス内容によって様々だと思いますが、お客様の本音と向き合うことで、それを見つけることは可能です。ぜひ、サービス開発やサービス改革のヒントとして、どんな事前期待に着眼すべきかに関心を向けてみていただければと思います。

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筆者:松井 拓己