18日、マレーシアの情報誌に衝撃的な写真が公開された。金正男(キムジョンナム)氏が女に襲われた直後、空港のクリニックでの様子を撮影したものだ。この後正男氏は病院へ搬送される途中、救急車の中で死亡した。「非常に痛い。非常に痛い。液体をかけられた」が正男氏の最後の言葉であったと現地メデイアは伝えている。

 また午前11時過ぎには殺害に関わったとして北朝鮮籍のリ・ジョンチョル容疑者(46)を逮捕したと警察が発表。さらに地元メディアによると、警察当局は17日、事件に関与したとみられる4人の男を特定。全国の警察に指名手配し、写真を配布したという。マレーシアの中国語メディアは、この4人は50mほど離れたレストランで実行犯2人を監視し、犯行を確認後出国しようとした。


 実行犯とされた女2人に関しても新たな情報が。ベトナム国籍のパスポートを所有していたドアン・ティ・フオン容疑者(28)は逮捕された際、「液体を手袋につけてすぐに金正男に近づき、彼の顔面にかけた」と警察に話し、犯行直後トイレで手袋を外して手を洗ったと供述しているという。また「液体に劇毒が入っていたことは知らない。もし知っていたらリスクを冒して手でやることはしない」と話しているそうだ。

 もう1人の実行犯とされているインドネシア国籍のパスポートを所有していたシティ・アイシャ容疑者(25)。アイシャ容疑者の友人は「(アイシャ容疑者は)犠牲となった人に香水を振りかける広告の役者かモデルとして雇われたと思っていたそうだ。でも実際は(彼女が振りかけたものは)毒だった」と話しているという。


 今回の事件は訓練を受けた工作員による殺害だったのか。それとも全くの素人による殺害だったのか。金正男氏殺害に関与したとして逮捕された女性2人であるが、謎に包まれた容疑者の行動が少しずつ明らかになってきた。

 マレーシアの国際空港で金正男氏殺害に関わったとされる犯行グループは6人。現地メディアによると男4人がフオン容疑者とアイシャ容疑者に指示して実行したという。犯行当時、「LOL(Laughing Out Loud=大声で笑う)」と書かれた服を着ていたフオン容疑者であったが、実行犯が着るにはなんとも意味深である。

 そんな彼女について、実行前に泊まったホテルで不可解な行動が見られたとホテルの従業員は語っているという。従業員によると、殺害の二日前である11日の夕方にチェックインしたそうで、「女(フオン容疑者)は白い車で中国系の男に送られてきた。男は荷物を下ろすと立ち去った。大きなテディベアを持っていた。大きくて白くて可愛らしいぬいぐるみだっだ」ということだ。また「横柄な態度で自分勝手に見えた」としている。そして何よりも印象的だったのが、非常に多くのお金を持っていたという点であるそうだ。「宿泊客は普通、予約をしてから来る。もちろん彼らは大金を持ち歩かない」と語っている。


 また、フオン容疑者は事件前日の12日、チェックアウトの時刻になってもフロントに現れず、部屋に複数回連絡を入れたところマレーシア紙幣の厚い札束を見せ、もう一泊させて欲しいと頼んだそうだ。その後満室であったため12日の正午過ぎにはチェックアウトしたが、その時もやはりテディベアを抱えていたという。フオン容疑者はどこへ向かったのか。

 現地メディアによると、事件前日の12日、女2人を含む6人が空港でスプレーをまくような様子が防犯カメラに映っていたという。前日に予行演習を行なっていたのであろうか。その後、またもテディベアを抱えた姿でクアラルンプールのホテルにチェックインしたという。その際には部屋まで訪れ、なぜかWiFiインターネットのスピードを気にしていたとのことだ。またこのホテルでフオン容疑者は自分で髪を切っており、床には髪の毛が散らばっていたという。


 事件当日の13日にチェックアウトしたフオン容疑者、「4人組の男からいたずらしようと持ちかけられた。私はベトナムで有名なインターネットスターで、いたずらの短編映画を撮影するためにマレーシアに来た。人を殺すとは思っていなかった」と警察に話しているそうだ。また中国メディアによると、アイシャ容疑者は「謎の男から100ドルの報酬を渡すからと言われていたずらの短編映画に参加した。他の男や女とは知り合ったばかりで、他のことは全く知らない」と話しているという。インドネシアの地元紙は「ナイトクラブで働いていた当時、話を持ちかけた男と知り合った」と報道している。

 これが事実であるならば、首謀者は一般人を使ったのであろうか。韓国で暮らす北朝鮮の対外工作活動に詳しい元朝鮮労働党幹部は「計画は長期にわたったようだが、実際のやり方は“アマチュア的”だと思った」と話す。「普通、工作活動は“このやり方”と決めずにいろいろ用意する中、状況に合わせてやるものである」とのことだ。


 一方で韓国政府はすでに、「暗殺には“北朝鮮の対外工作機関”が関与した」とみている。韓国の連合ニュースはさらに詳細に、「“牡丹の花小隊”の構成員だ」としている。専門家などによると、“牡丹の花小隊”とは、20代半ばまでの女性で組織された暗殺工作部隊のことだ。ここでは外国語の習得や格闘訓練などを行い、対韓国用の部隊であるとの情報もある。さらに、連合ニュースは「逮捕された女2人は別の国のパスポートを持っており、『多国籍請負暗殺集団』である可能性が高い」と報道している。

「(女たちは)オペレーションで雇われた人たちだと思う。特別な期間で何年もトレーニングを受けたとは到底見えない」と北朝鮮情勢に詳しい毎日新聞編集委員の鈴木琢磨氏は語る。その上で「もっと多くの人数が関わっているオペレーションかもしれないため、女性2人を含めて6人が全てと言い切れるかは私は疑問である」と考えを明らかにする。


 今回の件を専門家はどのように分析しているのか。日本大学危機管理学部准教授の金惠京(キムヘギョン)氏に話を聞いた。

 金准教授は「(正男氏が)今まで生きていたことが奇跡だと思う」と述べる。留学経験のある正男氏は民主主義や資本主義に深い理解があり、正男氏の息子も政権を独裁と呼ぶなど、北朝鮮からすると「邪魔な存在」であったそうだ。またマレーシアで殺害した理由については、中国に対する配慮があったという。北朝鮮は正恩党委員長となってから5年、中国と首脳会談ができていないものの経済的には依存していて関係を悪化させたくなかったとの見解を示す。マレーシアとの関係は北朝鮮からするとあまり重要ではなかったようだ。


 アジアを揺るがした今回の事件。一体犯人は誰なのか。早急な解明が求められている。

( AbemaTV/AbemaWaveサタデーナイト より)

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