AIの医師国家試験の正答率は55.6%(depositphotos.com)

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 受験シーズン、今や真っただ中だ! ところで、AI(人工知能)は東大入試に合格できるか? そんな奇問にチャレンジしたのは、東大合格をめざす人工知能「東ロボくん」の開発に取り組んできた国立情報学研究所だ。

 2016年11月14日、国立情報学研究所は、「東ロボくん」が2016年度の大学入試センター試験の模試で偏差値57.1を獲得したが、合格圏に達しなかったと発表。今後、「東ロボくん」は、東大合格を目標にせず、中高生の読解力を高める研究や産業用への応用にシフトするという(日本経済新聞2016年11月14日)。

 「東ロボくん」プロジェクトは、入試問題への挑戦によってAIの可能性を検証するために、2011年度にスタート。2021年度の東大合格が大目標だった。4回目の挑戦となった今回の模試では、5教科8科目の合計得点525点(全国平均454.8点)。

 昨年に比べ物理の偏差値が46.5から59へと大きく伸びたものの、数学は低下し、全体では横ばいに留まっている。

 その結果、国公立23大学、首都圏や関西の難関私立大学を含む私立512大学の合格可能性80%以上と判定。東大の2次試験を想定した論述式の模試では、理系数学の偏差値76.2の好成績だった。

 だが、国立情報学研究所の新井紀子教授によれば、「東ロボくん」は、問題を理解する読解力に限界があることが分かったので、センター試験の模試は今回が最後になると話している。
正答率は55.6%! AIは医師国家試験に合格できるか?

 さて、昨年の医師国家試験の合格率は91.5%。医師国家試験が年1回の実施となった1985年以降では、2年連続で過去最高を更新しているが、AIは医師国家試験にもチャレンジしている。

 2015年9月、慶應義塾大学理工学部生命情報学科の榊原康文教授らの研究グループは、医師国家試験を自動解答するAIプログラムを日本で初めて開発した。AIは、その後も進化を続け、医師国家試験の臨床問題の正答率55.6%(過去の合格者の平均正答率66.6%)に達している(日経デジタルヘルス2016/12/12より)。

 AIは、どのように医師国家試験に答えるのだろう?

 たとえば、「70歳女性。左上腹部痛を主訴に来院した。昨夜、久しぶりに孫と遊んでいたら、3時間後から左上腹部に痛みを感じるようになった。食事摂取は良好。原因と考えられる病名はどれか? a.急性膵炎 b.腹壁血腫 c.腸腰筋膿瘍......」などと示される。

 この問題文を入力すると、AIが文章を解析し、「女性」「腹痛」「嘔吐」「下痢」などの単語や、「脈拍88/分」、「呼吸数112/分」などの数値を抽出。前後の単語を根拠に数値の意味を判断し、症状のプロファイルを作成する。

 診断は、AIが判断に用いる解析ルールに基づいて行う。たとえば、S状結腸捻転なら、腹痛1点、便秘0.5点、男性1点、腸閉塞1点、虚血性大腸炎なら、腹痛2点、便秘1点、男性0点、腸閉塞0点というように、AIが疾患に対して主訴、典型的患者像、症状に点数を付ける。その点数の合計点に基づいて診断を下す。

画像付き問題の正答率は64.7%と高いが、時間軸を読み取れない

 さらに、医師国家試験の過去問などの学習素材を追加すると、変数(主訴や症状など)と答え(疾患名)の関係性を認識し、機械学習を重ねるので、正答率がアップし、より適確な診断を下せる。しかも、画像付き問題の正答率は、64.7%と高いという強みがある。だが、課題はある。

 AIは、問題文中にある時系列の情報の意味を理解できない。たとえば、1カ月前に発熱があった、1週間前に発疹が出たなどと羅列されると、その時間軸を正確に読み取れない。自然言語解析の改良が必要になる。

 臨床現場にAIがデビューする日は来るだろうか?

 AIの大きなメリットは、患者の情報を漏れなく取り込み、医師が見逃しやすい情報を提案できることだ。AIがさらに進歩し、医師が気付かない症状をピックアップできれば、医師とAIが補完し合える。

 AIは専門性を持たないので、バイアスも掛かりにくい。AIが臨床的に有意な評価やエビデンスを蓄積すれば、患者に最適な診断・治療・処方を下すのも夢ではない。

 AIは東大に入れるか? 医師国家試験に合格できるか? 東大や医師国家試験の突破は、AIにも人間にも最難関だ。しかし、AIがどれほど進化しても、AIが越えられない、奪えない人間ならではのスキルがある。クリエイティビティ、リーダーシップ、アントレプレナー・マインドだ。

 作家、デザイナー、エンジニアのように、0から発想し知的資産を創発するクリエイター、卓越したコミニュケーション能力で人々を導くリーダー、交渉力のセンスや問題解決力を発揮する起業家、この3つのスキルだけは、AIでも肩代わりできない。だが、医師の職域は、AIでも担える領分があるように思える。

 ただ、答えは1つではない。AIにも医師にも選択肢はある。医師とAIが補完し合い、共同作業に努めつつ、より診断・治療の精度を高め合うAI共生時代が、刻々と迫っている。
(文=編集部)