コンドゥレナムルを準備中の「チョンスコル」の女将。江原道の高地に自生するコンドゥレナムルは、繊維質が豊富で、便秘解消によるダイエット効果が期待でき、コレステロール値を下げる効果もあるという

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日本の料理には主材料を引き立てるために他の食材は脇役に徹したものが多いが、韓国には主材料に他の材料を掛け合わせて複合味を楽しむ料理が多い。

【写真11枚】見ているだけで、気分がほっこり♪ 絶対食べたい「韓国鍋」

その代表がビビンパだが、今回取り上げる肉を使った鍋物を見てもそれは明らかで、肉×魚介、肉×野菜、肉×漢方など、そのカオス感は日本の鍋物の比ではない。

タンナクチ・ジョンゴル(地鶏と手長タコの鍋) ソウル

鶏とタコ、主役はどっち? と言いたくなる鍋だ。

この店の基本メニューはタッコムタン(鶏煮込みスープ)なので、鶏に分がありそうだが、なんでも組み合わせる韓国料理でも鶏とタコはちょっと珍しい。

さっきまで生きていたと思われる手長ダコは、鶏胸肉とともに最初から鍋に入って出てくる。サッと熱が通ると店員さんがトングでつまみ上げ、目の前でバチバチとハサミで切ってくれる。あまりの速さにタコに同情するヒマもない。

放し飼いで適度に運動している地鶏の肉は、ブロイラーのものと違って、ほどよい歯ごたえがあり、肉を食べているという満足感がある。韓国人は噛む味を大事にする民族なのだ。

スープはコチュジャン系だが、辛過ぎないので鶏の旨味がしっかり感じられる。殉職したタコがいいダシとなり、スープにさらなる深みを与えてくれる。鶏のダシを吸ったタコももちろん旨い。焼酎がほしくなる。

鶏やタコをあらかた食べ終え、いい感じに煮込まれたスープの旨味は麺(ククス)とともに味わい尽くす。それでもまだスープが残ったら、餅(トッ)を投入してもいいが、それは食べ過ぎというものである。


ファンピョンチッ
中区仁峴洞2街135-13(ホテルPJの斜め前)TEL:02-2266-6875
11:00〜22:00 公休日休

プデチゲ(ハムやソーセージなどの寄せ鍋) 議政府

プデチゲ(部隊鍋=在韓米軍の放出品で作った鍋)という微妙な出自を隠そうと、その発祥地名を冠し、「議政府(ウィジョンブ)名物チゲ」と名乗っているが、プデチゲはプデチゲだ。

特別な看板料理をもたない大衆食堂のメニューにもあるほど、ありふれた鍋物だが、ソウル中心部から電車で小一時間で行ける議政府には専門店が数軒集まっている。

元祖といわれている「オデン食堂」のプデチゲには、ハム(ポークランチョンミート)、ソーセージ、ひき肉、春雨、豆腐、キムチなどが入っている。

そこいらのプテチゲとの違いはスープの味。発酵の進んだキムチが使われているため、すっきりした辛酸っぱさが特徴だ。プデチゲにはたいていごはんが添えられるが、追加でインスタントラーメンの乾麺を頼み、いっしょに煮こむことが多い。

筆者はラードのコクがスープに加わるのが好きなので、よくハムを追加する。とろったした食感が白いごはんと合うのだ。出自といい、闇鍋的なビジュアルといい、これぞ韓国の庶民料理と言いたいプデチゲ。ぜひ本場で試してほしい。


オデン食堂
京畿道議政府市議政府洞220-58 TEL: 031-842-0423
7:00〜21:00 無休

カムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋) ソウル

直訳するとジャガイモ鍋だが、主役は豚の背骨とそこに付いた肉。これらを唐辛子やショウガ、ニンニク、長ネギなどとともに長時間煮込んだ辛い鍋だ。匂い消しにエゴマの葉っぱを大量に入れることが多い。

カムジャタンといえばソジュ(韓国焼酎)と言うくらい、酒の友というイメージが強い。庶民的な繁華街に行けばたいてい看板に「감자탕(カムジャタン)」と大書きされた店が見つかる。夜、酔客でにぎわっていれば外れはない。

総じてせっかちなことで知られる私たち韓国人だが、日本人と比べるとかなり乏しい根気は豚の背骨の溝に詰まった肉をほじくり出すことで使い果たされる。

残ったスープにごはんやキムチ、海苔などを入れてチャーハンにすることも多い。専門店ではランチ向きのメニューとして、1人用のカムジャタンをピョダギ・ヘジャンクッの名前で出している。

ムルカルビ(豚肉と豆モヤシの鍋) 全州

カルビといっても焼肉ではなく、豚すき焼きに近い鍋物。コチュジャン系の甘辛いタレで味付けした豚肉を、豆モヤシ、春雨、ネギなどといっしょに煮て食べる。ムルカルビのムルとはこの汁のことだ。

豚肉がたっぷり入っているところに、食都と呼ばれる全羅北道・全州(チョンジュ)のプライドと人情味を感じる。春雨とモヤシは無料でおかわりができるので、栄養バランスも心配なし。肉はかたまりのまま煮込まれ、食べごろになるとお店の人がハサミでジョキジョキと切ってくれる。

春雨には弾力があり、地元産の豆モヤシには少々煮てもシャキシャキ感が残っていて、口中のアクセントになる。スープがしみ込んだ豚肉はそのまま食べてもよし、また、豆モヤシといっしょにサンチュで包んで食べてもいける。

残ったスープにはごはんと海苔、野菜を加えてチャーハンにするのが定番だ。

ナムノカルビ本店
完山区豊南洞2街29-5 TEL:063-288-3525
11:00〜22:00 無休

タッペクスク(丸鳥の水炊き) 江原道楊口郡

週末、ソウルの郊外や地方の農村へ行くと、たいてい鶏料理の店に出合う。タッペクスクと呼ばれる丸鳥の水炊きは、その種の店の看板メニューで、ソウルのタッカンマリの原型ともいえる。

その土地ごとに特徴があるが、筆者の記憶にはっきりと刻まれているのが、韓国の北部、江原道の38度線に近い町、楊口(ヤング)郡で食べたもの。真冬、楊口市街から路線バスに乗り、雪の積もった山道を揺られること30分。

その店は「タバコ屋」というとぼけた名前の停留所のそばにあるのだが、半分雪に埋もれたようなプレハブ小屋にたどり着いたときは、そこが人気俳優ソ・ジソプの訪れた店とはとても信じられなかった。店名を「チョンスコル」という。

地鶏とともに煮込まれているのは、高麗人参に似たキバナオウギという生薬や、正体不明の小枝のようなもの、それにナツメやクリ、ジャガイモなど。見た目は少々いかがわしいが、煮立ったスープをひと口すすってびっくり。

ほのかな漢方の香りがすがすがしく、絞めたての鶏の力強い旨味とともに、“山の気”をいただいているような充実感で満ちてくるのだ。

鍋だけではない。つきだしにもこの辺でとれた山菜がたっぷり使われていて、飽きずに楽しむことができた。もちろん、肝臓によいとされる薬草コンドゥレナムル(高麗アザミ)をたっぷりいただいたことは言うまでもない。

チョンスコル
江原道楊口郡方山面松峴里70 TEL:033-481-1094
11:00〜20:00 日曜休