『失敗の本質〜日本軍の組織論的研究』 戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝夫、村井友秀、野中郁次郎・著 左:単行本(ダイヤモンド社) 右:文庫版(中央公論社)

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30年前の名著『失敗の本質』が今、熱い。日本軍の組織的失敗を分析した同書からは、行き詰った日本企業、日本社会の再生へのヒントが満載だ。今こそ、日本的組織の本質を問うべき時がきている。名著が分析した日本軍の敗因は数多くあるが、その中でも日本人の特性を象徴しているのが「空気」の存在。開戦時は多くの日本人が正確な情報を知らぬまま戦争に賛成していた。また、開戦後も軍部の暴走によって次々と非合理な作戦が実施された。なぜ、日本人は「空気」によって不可思議な判断をしてしまうのか。14万部のベストセラー『「超」入門 失敗の本質』の著者が、その秘密を読み解く。

それでも日本人は戦争を選んだ。
戦争賛成派が多かった謎

 名著『失敗の本質』は、1939年に国境紛争として起こったノモンハン事件と、大東亜戦争における5つの軍事作戦の、計6つの作戦を日本軍の組織的な失敗例として取り上げて分析した書籍です。

 戦争は私たち現代日本人にとって忌むべきものであり、二度と起こしてはならないことは明白です。暗く悲惨な戦争の歴史を振り返るとき、「平和」の大切さは一層重みを増してきます。

 しかし、多くの史実から太平洋戦争初期には、戦争に賛成する日本人が多かったことが指摘されています。よく言われるように、一部の軍人が戦争を始めたのではなく、戦争を選んだのもまた日本国民の総意であったと言えるのです。なぜ、あのときの日本人は、戦争に賛成してしまったのでしょうか。

『証言記録 兵士たちの戦争』(日本放送出版協会)等の書籍では、戦争初期に最前線に向かう日本の兵士は比較的楽天的で、日本軍が負けることなどまったく想像していなかったのを伺わせる証言が残っています。

 また、『失敗の本質』で分析された各作戦においては、戦闘方法自体が効果を発揮していないにも関わらず、何度も同じ方法で部隊を投入して、敗北を重ねる姿が浮き彫りにされています。

 70年以上を経た今から見ても、日本軍がどうして「そういう方向」へ向かって行動したのか、わからないことが多々あります。そこには、危機的状況に陥ったときに合理的な判断を奪う、極めて日本人的な特性が見え隠れしています。

 日本人は一つの目標が設定されたときには一致団結して立ち向かう強さを発揮しますが、逆にその強さゆえ、設定した目標自体を揺るがすような意見は徹底的に排除するような特性を持っています。戦時中、反戦思想を持つ国民を誰より強く糾弾したのも、同じ日本人の隣人でした。

 今でも、企業の不祥事や方向転換を拒んで経営破綻した企業のニュースを耳にするたびに、外側から見れば不思議に思えるようなことが多々あります。けれど、当事者からすれば、「そうせざるを得なかった」という極めて日本人的な組織の発想によって行動を左右されている事実があります。

 なぜ、日本人は開戦時、戦争に対して好意的だったのでしょうか。そして、開戦後、なぜ日本軍は合理的な判断ができなくなってしまったのでしょうか。今回は、『失敗の本質』で取り上げられている、日本人の判断に影響を与える「空気」の存在について紹介しましょう。

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