日本の女子ゴルフ界を背負って立つ逸材――そう注目されながら、彼女はどれほどの月日を悶々(もんもん)と過ごしてきたのだろうか。

 比嘉真美子(23歳)。


苦しい時期を過ごしてきた比嘉真美子。今季、完全復活なるか アマチュア時代は、2011年、2012年と日本女子アマチュア選手権で連覇を達成。ナショナルチームの一員としても、常にエースとして活躍した。プロツアーにも参戦し、2011年の日本女子オープンでローアマチュアを獲得するなど、プロの世界でも十分に通用するプレーヤーとして、誰もがその存在を認めていた。

 事実、2012年のプロテストを一発合格すると、ルーキーイヤーとなる2013年シーズンには、ヤマハレディースオープン葛城、リゾートトラストレディスといきなり2勝をマーク。海外メジャーの全英リコー女子オープンでも7位タイという好結果を残すなど、ツアー本格参戦1年目から難なく賞金シード(賞金ランキング8位)を獲得し、評判どおりの実力を遺憾なく発揮した。

 プロ2年目の2014年シーズンも、勝利こそなかったものの、開幕戦のダイキンオーキッドレディスやフジサンケイレディスなどで優勝争いを展開。賞金ランキング45位という成績を残して、2年連続でシード権を確保した。 

 だが、プロ3年目の2015年シーズンから歯車が狂い始める。

 とにかくドライバーが真っ直ぐ飛ばなくなった。それこそ”イップス”と言っても過言ではない状態にまで陥って、17試合連続予選落ちを喫するなど、苦しくて長いトンネルを抜け出せなくなってしまう。

 結果、賞金ランキングは95位まで急降下。ついにシード権を失ってしまった。

 その後、ファイナルQT(※)で18位に入って、何とか翌2016年シーズンの参戦切符を手にしたが、決して復調の兆しが見えていたわけではなかった。ショットが”暴れる”状態は長らく続いて、シード復活なるかどうか、まったくわからない状況。新シーズンに向けて不安を抱えたままだった。
※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 それでも、比嘉は常に前を向いていた。

「悪い状態だからといっても、ビビらず、自分のプレーをやり抜いてきた。自分から逃げないでやってこられてよかったです」

 その言葉どおり、2016年シーズン、比嘉は完全復活への大きな一歩を刻んだ。前半戦は予選落ちを繰り返したが、後半戦に入って徐々にリズムをつかみ、残り8試合でトップ10入り5回という快進撃を見せる。最終的に賞金ランキング34位まで浮上し、2年ぶりにシード復帰を果たした。

 特に、自身の最終戦となる大王製紙エリエールレディスでの戦いぶりは圧巻だった。初日から安定したゴルフを見せて、決勝ラウンドに進むとアグレッシブなプレーで驚異の追い上げを披露。最終日には、2日目から首位を快走していたテレサ・ルーとの一騎打ちに持ち込んで、あと一歩で逆転優勝というところまで迫った。その姿は、まさに年間2勝を飾った2013年シーズンを彷彿とさせるものだった。

 ラウンド後、惜しくも2位に終わったが、比嘉の表情はとても晴れ晴れとしていた。

「(優勝したテレサ・ルーとは)結果的に1打及びませんでしたが、自分なりにいいプレーはできたと思います。勝てなかったけれども、最後にいい終わり方ができたので、オフはすごくいい気持ちで過ごせると思います」

 昨季、土壇場でシード復帰を決めた比嘉。気丈に振舞っていたものの、長い間、不安と戦っていた。それがどれほど苦しい時間だったかは計り知れないが、彼女は見事、どん底から脱することができた。それだけの強い意志、信念が彼女に備わっていたからだろう。

 比嘉はアマチュア時代から努力を重ね、”エリート”として常に注目を浴びる中で、必ず結果を出してきた。そうして、国内外でさまざまな経験を重ねることによって、高いポテンシャルや強いメンタルが培われてきた。それが、今回も生かされたはずだ。

 昨季の後半戦からは、ショットの安定感を取り戻し、自信を持ってドライバーを振れるようになっていた。その自信が、試合の流れもよくしていった。そのことを再確認した彼女の声は今、昨季の開幕前とは明らかに違う。

「このオフは、地元の沖縄でトレーニングやラウンドをこなしてきました。体のキレがいいですし、こんなに調子のいいオフは(プロになって)初めてかもしれません。昨年は不安を抱えていたドライバーも、今ではスッと振れていますし、自分のやりたいスイングができています。試合が待ち遠しいです」

 昨シーズンをいい形で終えて、比嘉のメンタルは間違いなくいい方向に向いている。昨季に続いて、湯原信光や大堀裕次郎ら男子プロとのタイ合宿にも参加。そこでも充実した日々を過ごせたようだ。

「男子プロとの練習は、すごくいい刺激になります。そして、今は本当に充実していて、とにかく早く試合がしたいんです。昨季の最終戦が終わったあとから、ずっといい状態をキープしていますし、いいイメージもありますから。もちろん、ショットに不安がないと言ったらウソになりますが、今はこれから1年間、安定したゴルフができると信じています。技術レベルも上がり、今までゴルフしてきた中で、一番いい状態です」

 比嘉は「早く試合がしたい」と何度も言った。それだけの”自信”があるのだろう。

 プロデビューしたばかりの比嘉は、まだ荒削りな部分があった。それでも、ビッグドライブを武器にして、スコアを伸ばし、ギャラリーを沸かせてきた。その姿は、どのルーキーよりも自信に満ちあふれていた。

「今季は、賞金ランキングを意識するよりも、メジャーで勝ちたいです」

 かつて、韓国勢が猛威をふるう日本ツアーにあって、ギャラリーの誰かがこんなことを呟いていた。

「韓国人ゴルファーの勢いを止められるのは、比嘉真美子しかいない」

 今はまだ、そこまでの力は戻ってきていないかもしれない。しかしそれだけのポテンシャルを秘めていることは、多くのファン、そして関係者が知っている。

 はたして今季、比嘉の完全復活はなるのか。必見である。

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