鳥貴族の店舗(「Wikipedia」より)

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 大阪名物・串カツを専門にした居酒屋「串カツ田中」は2016年9月14日、東証マザーズに上場した。初値は4425円と公開価格の3900円を大きく上回り、上場翌月の10月14日には9090円という信じがたい高値をつけた。現在も6000円前後と公開価格を上回る水準で推移している。

 串カツ田中は、肉や野菜、魚、加工食品などを串に刺して衣につけて揚げる串カツというシンプルな料理を専門にした居酒屋であるにもかかわらず、株価が爆騰した理由は何か。

 それは、成長路線が評価されたからだといわれている。串カツ田中は08年12月に東京・世田谷に1号店をオープンさせた。16年11月期、関東圏を中心に37店舗(直営14店、FC23店)を出店し、期末店舗数は131店に拡大した。既存店売上高は前期比0.3%減にとどまったが、前の期にテレビ番組で取り上げられたことで、浮動客が増えた反動が出た格好だ。それでも、おおむね堅調に推移した。16年11月期の売上高は前期比58%増の39億7000万円、本業の儲けを示す営業利益は57%増の3億1000万円だった。

 今期は直営16店、FC24店の計40店の出店を計画。17年11月期の売上高は28%増の51億円、営業利益は23%増の3億9000万円を見込む。目標は全国1000店舗体制の構築だ。

 居酒屋業界では、手頃な価格でなんでも食べられる総合居酒屋が低迷しているが、その一方で専門に特化したところが顧客の支持を得ている。串カツ田中もその1社だ。積極出店が高い株価を維持するバネになっている。

●焼き鳥280円均一の「鳥貴族」

 また、専門に特化した居酒屋としては、焼き鳥チェーンの鳥貴族が出店を加速させている。21年までに店舗数を現在の500店から2倍の1000店にする。

 鳥貴族は1985年、大阪府東大阪市に1号店をオープンした。05年に東京進出、08年にグループで100店舗に達している。16年12月末時点で関西、関東、東海の大都市圏に510店(直営299店、FC店211店)となり、500店の壁を突破した。

 17年7月期は100店を出店する予定で、それ以降も毎年120店のペースで出店を加速させ、1000店達成の青写真を描く。

 出店攻勢で業績は右肩上がりを辿る。17年7月期決算の売上高は前期比25%増の307億円、営業利益は23%増の19億5000万円と、増収増益を見込んでいる。

 家族連れの取り込みで既存店は好調が続く。既存店の売上高は14年3月以来、16年10月まで31カ月連続してプラスとなった。16年11月に前年割れとなったが、16年12月、17年1月は微増ながら前年を上回った。

 メニューは焼き鳥1品、税別280円均一という低価格がウリだ。鳥貴族の代名詞となった「280円均一」を、今後も守り続けることができるかが1000店達成のカギを握る。鳥貴族の食材は、すべて国産のため、安い食材を安定的に調達できるかどうかにかかっている。昨今、国際的な食材の高騰が低価格のチェーン店に重くのしかかっている。

 ちなみに鳥貴族の大倉忠司社長は、男性アイドルグループ「関ジャニ∞(エイト)」のメンバーである大倉忠義の父親だ。

●24時間営業の海鮮居酒屋「磯丸水産」

 さらに、24時間営業の海鮮居酒屋「磯丸水産」も出店攻勢を強めている。09年2月に東京・吉祥寺に1号店を出して以来、年間10店舗のペース店舗網を広げてきた。17年2月期は35店と出店のペースを速めており、期末には155店になる予定だ。

 水槽から出した新鮮な魚介類を浜焼き形式で提供するのが磯丸水産最大の売り物で、「魚介を自分で焼きながら楽しめる店」が謳い文句だ。

 磯丸水産を運営するのは、東証2部上場のSFPダイニング(旧・サムカワフードプランニング)。手羽先唐揚げの「鳥良」など複数の業態を展開しているが、主力は磯丸水産だ。

 SFPダイニングの17年2月期の売上高は365億円、営業利益は35億円の見込み。16年に決算期を9月から2月に変更したため、16年2月期は5カ月間変則決算となっている。年間で比較できるのは15年9月期で、売上高は285億円、営業利益は30億円だ。磯丸水産が全体の売り上げの73%(16年1〜11月実績)を叩き出している。

 SFPダイニングの親会社は、三菱商事の社内ベンチャーとして発足し、東証1部に上場したクリエイト・レストランツ・ホールディングス(クリレスHD)で、社長の岡本晴彦は三菱商事の出身だ。

 クリレスHDはマルチコンセプトでショッピングセンター内に飲食店やカフェを展開している。M&A(合併・買収)を繰り返し、「つけめんTETSU」など200ブランド860店を手掛ける一大外食グループになった。

 クリレスHDは13年3月にSFPダイニングを買収して磯丸水産を傘下に組み入れた。16年8月末現在、SFPダイニング株式の67%を保有している。

 クリレスHDは多数のブランドを展開しているにもかかわらず、磯丸水産の寄与度は高い。クリレスHDの17年2月期連結決算の売上高は前期比11%増の1150億円、営業利益は2%増の69億円の予定。SFPダイニングが営業利益の半分を稼いでいる。今や磯丸水産はクリレスHDの業績を左右する圧倒的な存在になった。

 ワタミが展開する「和民」や、大庄が展開する「庄や」など、一時代を築いた総合居酒屋が苦戦するなか、居酒屋業界の元気印は、串カツ田中、鳥貴族、磯丸水産といった得意分野を持つ業態だ。
(文=編集部)