「売上」や「行列」を目的とせず、あくまでも新進ガレージキット作家の育成と反映に目的を置くワンダーフェスティバル公式レーベル「ワンダーショウケース」、その第32期として3名が選定されました。なんだかんだと言いながらも毎回、バラエティに富んだ人材をコンスタントに発掘してくるのに加え、基本的に「他の何よりも圧倒的に出来のよい模型であろうとし続けるガレージキットスピリッツ」を体現した人ばかりなので、ある意味、「公式に選ばれるのはやはりこれぐらいの腕前が必要なのだな」というのがわかりやすいです。



ワンダーショウケースのブースに到着



まずはWSC #085 あいし作、コミック「宝石の国」より「シンシャ」。





ワンフェス会場販売分80個限定で税込9500円、ワンフェス以降の一般小売価格は税抜1万2000円。「「元のデザイン画を一応は踏襲しつつもそれを自己流にアレンジし〜」という方向性にて明確にプロ原型師を目指すべきであろう」「「過去に何度かプロ原型師の面接を受けたんですが、全部落ちちゃったんですよ」とのことだが、「そのときのことはきれいさっぱりと記憶から消去し、ここでもう一度猛プッシュをかけるべきだ!」と強く思わずにはいられないのだ」「フィギュアメーカーにおける企画開発担当の方々はぜひともあいしの才能を信じ、そしてここからの彼の活動ぶりにくまなくチェックを入れてみてください。たぶん……いやまちがいなく、彼は「よい仕事」をしてくれるはずです」とコメントされてしまうレベルで、明らかに今回のワンダーショウケースで最も強くプッシュされている感じがします。





実際、Twitter上での事前のツイートでも以下のようにかなり人気があり、原作「宝石の国」の人気によって大きく下駄を履いているとはいえ、この再現度や雰囲気の作り方はかなりのもの。





彩色前はこんな感じ。造形力がこうやって見ると露骨にわかります。





組み立て前の状態を見ると、「そういえば宝石の国でこういうシーンがあったがソレの再現か?」と勘違いしそう。



次はWSC #084 つるぎ だん作、イラストレーター藤沢 孝による創作キャラクターを立体造形化した「宇宙服少女 −休息−」。ワンフェス会場販売分80個限定の価格は税込1万3500円、ワンフェス以降の一般小売価格は税抜き1万7500円。





元のイラストの雰囲気は以下のツイートでつかめます。



何より変わっているのはこの人自身で、なんと役者が生業。そして主な収入源は役者業以外のアルバイトに頼るところが大きいというのも、まさに役者業あるある。しかも「……すでに次期WSCアーティストの選考は終了している段階かもしれませんが、非常に申し上げにくい申し出ではありますが、仮に“立候補”という状況が許されるならぜひ私は手を挙げたいと思い、メールさせていただきました。WSCに選ばれたらどのように世界が変わるのか、あるいは変わらないのか、新しい世界(変化)をぜひ見てみたいと思っています」という内容でメールするという自薦を実行、これまでこういう業界ではいそうでいなかったタイプの人材です。







というか、ワンダーショウケースを毎回見ていて「面白いな〜」と思うのは、こういう作者のバックグラウンド的部分までインタビューして掘り下げてくれるところ。Twitterなどだけだとなんとなくおぼろげにしかわからない人物像が、ワンダーショウケースでは非常にくっきりと見えてくるので、各自のプロフィールを読んでいるだけで「そうか、こういう背景を持って生きてきた人だから、こういう造形をするようになったのだな……」と、妙に納得感が強くなることが多々あります。





ラストはWSC #086 pate作、TVアニメーション『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』より1/12スケール(全高135mm)レジンキャストキット「プリズマ☆イリヤ サファイヤVer.−WSC Edition−」。ワンフェス会場販売分80個限定のワンフェス会場特別価格が税込1万2500円、ワンフェス以降の一般小売価格が税抜1万6500円。





ぱっと見ただけだと「ん?ワンダーショウケースってこういう造形レベルもアリなの?」と過去の選出作品を知っている身からすると疑問を抱くところなのですが、そのことは公式でも「この広報用写真だけを見たら「……まあ、もちろん上手いには上手いけれど、でもコレがWSCに選ばれるような作品なの?」と思う人もいるかもしれません。」「'80年代中盤的な(ある意味「古臭い」としか表現しようのない)美少女フィギュア造形黎明期のテイスト」「のっけから否定的としか受け取れないようなことをズバリと書いてしまうが、pateの美少女フィギュア造形には目新しい表現はほぼまったくと言ってよいほど存在していない」と散々な書かれよう。



では何が注目点であり、選出作品になったポイントなのかというと、「唯一にして最大の特徴は「なぜ1/12などという小スケールのフィギュア(ベースを含まぬ全高でたかだか120mm程度)でここまで髪の毛の細密表現にこだわるかな!?」というところ」とのこと。



一般来場者でも「これってデジタル造形ですよね?」と勘違いする人が多く、「つまり3DCGツールを用い全高250mm程度の設定でモデリングしたあと、それを全高120mmほどに縮めて立体出力していると考えたほうが自然に見えるということである」と解説されています。サイズ感を考えるとそう見えなくもないのですが、実際には3DCGとかそういうのではなく、きちんと「ポリエステルパテで途中までそれを造形し、一度シリコーンゴム&レジンキャストにて髪の毛のパーツを複製、そうそう簡単にパキパキ折れない(レジンならばしなり剛性が高い)状態に置換したのち細密表現にこだわっているだけ」とのこと。確かにワンダーショウケースは「他の何よりも圧倒的に出来のよい模型であろうとし続けるガレージキットスピリッツ」を重視しているので、そういう視点で考えると納得。



なお、プリズマ☆イリヤあるあるとしてよく発見される誤字「プラズマ☆イリヤ」をワンフェスカタログがやっちまったという意味でも記念碑的なものとなっています。