イルディゴ・エンエディ監督 写真:Abaca/アフロ

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 第67回ベルリン国際映画祭の授賞式が2月18日(現地時間)に行われ、金熊賞にハンガリーのイルディゴ・エンエディ監督作「On Body and Soul」が輝いた。

 エンエディ監督はカンヌのカメラドール受賞歴を持ち、本作が18年ぶりの長編。男女のラブロマンスを主題にしながらも、夢を導入したユニークなストーリーとシュールな設定が特徴である。映画祭の冒頭に上映され、評価は良かったものの金熊の前評判まではなかっただけに、ダークホースの受賞と言える。2015年にカンヌでグランプリに輝いた「サウルの息子」のネメシュ・ラースローに続いて、ハンガリー映画シーンが再び注目されることになった。

 銀熊賞審査員グランプリには、キンシャサを舞台にしたアラン・ゴミの「FELICITE」が、また銀熊監督賞にはアキ・カウリスマキの「The Other Side of Hope」が輝いた。カウリスマキ作品はコンペの中でもっとも人気があっただけに、彼の名前が呼ばれると金熊を期待していたとみられる会場の人々から驚きの声があがったほどだ。銀熊男優賞は、ドイツ映画「Bright Night」で気難しい父親に扮したゲオルグ・フリードリヒが受賞。SABU監督の「Mr. Long ミスター・ロン」に主演したチャン・チェンという選択もあったはずだが、地元映画に敗れることになった。一方、銀熊女優賞はホン・サンスの「On the Beach at Night Alone」のヒロイン、キム・ミニ(「お嬢さん」)の手に渡った。サンス映画らしく、淡々とした日常のなかで、不倫の相手への思いに揺れるヒロインの心を繊細に表現し、女性映画が少なかった今年のセレクションのなかで目立っていた。銀熊脚本賞には、チリのトランスセクシュアルの女性が被る受難を真摯に見つめた「A Fantastic Woman」のセバスチャン・レリオ監督と共同脚本家のゴンザロ・マサが輝いた。

 そのほか銀熊芸術貢献賞には、カリン・ピーター・ネッツァー監督の「Ana, Mon amour」の編集を担当したダナ・ブネスクが選ばれ、通常若手監督の前衛的な作品に捧げられるアルフレッド・バウアー賞は、大ベテランのアニエスカ・ホランド(「Spoor」)の手にわたった。

 日本映画のなかでは、パノラマ部門に出品された荻上直子監督の「彼らが本気で編むときは、」が、LGBT映画を対象としたテディ賞の審査員特別賞を授与された。

 全体の授賞傾向として、賞はバランスよく振り分けられ、審査員長のポール・バーホーベンが予言していた通り、ベルリンといえば社会派映画というこれまでのイメージからはやや距離を置き、ベテランよりも若手のサポートを目ざした印象である。(佐藤久理子)