加えて、何らかの要因で肝臓が弱っている場合についてこう述べる。
 「便秘が続くと有害物質が血管を通って脳に達し、肝性脳症を起こす危険すらあります。もちろん便秘や“宿便”と言われる現象が続くと、肝臓障害の“終着駅”と言われる肝硬変のリスクが高まり、肝細胞の再生が不能となる。何日間も便が出ないときは1人で悩まず、医療機関の診断を受けるべきなのです」
 人間の腸の中には、驚くことに、普通の人でもただでさえ日常排泄される便以外の“宿便”を3〜5キロ持っていると言われるため、注意しなければならない。

 別の専門家は「我々医者は“宿便”という言葉は使いません」と言う。
 「近い意味では“滞留便”があります。胃や腸の働きが、生活習慣や食事内容の乱れなどが原因で便が停滞し、腸のぜん動運動が弱まります。そして肛門から出す排泄便が詰まる。これが滞留便であり、宿便という表現になります。ですから、便秘になるとかなりの量の便が溜まっていることになります」

 厄介なのは、この排泄されない滞留便が腸内の悪玉菌を増やし、いわゆるオナラも発生する点だ。オナラは尻から出るだけでなく、腸から血液に吸収され、さらに肺に送られて「口臭」として発せられるほか、「体臭」となって現れるというからショッキングだ。
 こうしたことから、排便をコンスタントにしたいと願い、医者に便秘薬を処方してもらう人も多いが、外出先にも持参しなければならなくなると大きなストレスとなる。
 「そのストレスも体にとってはよくない。交感神経が優位になり、神経伝達物質のアドレナリンが大量に分泌されるからです。アドレナリンは心拍数を増加させたり、血流を増やし、血管を収縮させるため、血圧が上昇する。それだけで心臓の負担も増えるし、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎への危険を高める結果となるのです」(専門医)

 そうした流れが、便秘のため腸内発酵で生じる毒素が体外に出なかったり、滞留便による毒素が腸粘膜より吸収されてしまうなど、腸内細菌叢が悪玉菌優位の状態となり、悪玉菌が出す毒素が大量に門脈(胃や大腸、膵臓などで吸収されたものを運ぶ血管)から肝臓に入る。こうして肝臓の働きが低下すると、処理されるはずの毒素が静脈血に入り、全身の細胞代謝に障害を引き起こすという。
 そうならないためにも、まずは便秘を予防すること。対策として管理栄養士の前田和子氏は、「普段から食物繊維が多く含まれる野菜や玄米と言った食品を積極的に摂ってください」と、食生活改善への取り組みを勧める。
 「便秘が増えると言われる冬場なら、シメジやエノキ、シイタケなどのキノコ類や、ゴボウ、白ネギ、春菊、白菜などの野菜をたっぷり使った鍋料理がお勧め。また、乳酸菌が豊富なヨーグルトや納豆などの発酵食品も効果的です。肝臓機能が低下している人は、ビタミン不足になりやすいので、ビタミンと繊維質を同時に摂れるミカン、リンゴなどの果物を毎日食べること。便秘防止と肝機能向上の一石二鳥につながり、有効な手段だと思います」

 さらに便秘と脂肪肝の両方を防ぐ近道は、やはりウオーキングなどの無理のない運動で腸を刺激することだ。