嘘と目の動きに因果関係はなかった

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 「あ!今、目をそらしたから、嘘をついたでしょう?」「昨日の出来事を聞いたら、右上を見上げた。あなたは嘘をついている!」

 このような発言をどこかで聞いたことがあるかも知れません。私もセミナーや研修で非言語から嘘を見抜くというテーマでお話をすると、ほぼ必ず、冒頭の目の動きから嘘は見抜けるのか否か、という質問を頂きます。

 結論から言うならば、「目をそらす」「右上を見上げる」という動きから嘘を見抜くことは出来ません。一つ一つその理由と活用法についてご説明しようと思います。

 人々が信じる嘘のサインを明らかにしようと、科学者のチームにより大規模調査が行われました。この調査によると、「嘘つきは目をそらす」という信念は世界中の人々によって抱かれているということがわかりました。しかし、様々な科学実験は「嘘つきが目をそらすこともあれば、真実を言う人が目をそらすこともある。」ということを支持しています。

 それは一体、どういうことでしょうか?

◆正直者だって目をそらす

「目をそらす」という動作は、私たちが物事を集中して考えたり、想像したりするときに起きる現象です。例えば、「一昨日の夜、夕食に何を食べましたか?」という質問に答えようしたとき、目が上や下に動いたと思います。この動きは、目の前の視覚情報をシャットアウトし、思考のための資源を効率的に使うためです。上を見上げれば天井が、下を見れば床があります。目を上もしくは下に向けることは目を前に向けているより、視覚情報が少なく集中できるのです(集中していることを意味する他の目の動きとして「眼球を動かさず一点を注視する」「目を閉じる」という動きがあります)。

 嘘つきが嘘をつくとき、それが露呈してしまわないように、辻褄を合わせたり、自分がついた嘘の内容を記憶したり、証拠が出てこないような発言をしようと、頭をフル回転します。

 正直者が正直なことを言おうとしても、冤罪を避けるために、信じてもらえるように懸命に詳細を語ろう、出来事をしっかりと思い出そうと、頭をフル回転します。

 結果的に、嘘つきも正直者も、話をするのに集中を要するため「目をそらす」という現象が起きるのです。

「右上を見上げたから、ウソ」

 これもよく耳にする、そして様々なウソを見抜く系の書籍に書かれている有名なウソのサインです。この考え方の源流は、NLP(神経言語プログラミング)の理論です。

 NLPの理論によると、右利きの人が、右上を見上げることは想像している状態を意味し、左上を見上げることは過去の記憶を思い出している状態を意味すると説明しています。元々のNLPの理論では、右上を見上げる=想像している状態=人がウソをついている状態、という図式を提示しているわけではないのですが、多くのNLPの実践者によってこの考え方からウソを見抜くことが出来ることが提唱されています。

 NLPの実践者が嘘のサインとして提唱している考えは、右上=想像=ウソ・左上=記憶=真実というものです。

 この考え方でウソが見抜けるのか否かが、1980年代くらいから様々な科学実験によって検証されてきました。「ウソをつく人」「真実を話す人」それぞれの目の動きの差異を検証したり、NLP理論を学んだ実験参加者とNLP理論を学んでいない実験参加者に目の動きからウソを見抜くテストを受けてもらい正答率を比べたり、実際の犯罪者の目の動きを計測したりと、様々な手法で実験がなされましたが、右上=ウソ、左上=真実という関係は見出されませんでした。

◆目の動きから嘘を見抜く方法はあるのか

 それでは目の動きから嘘は見抜けないのか?ということですが、工夫次第で推定することは出来ます。