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By Bill Alldredge

アメリカ同時多発テロを機に編成された運輸保安庁(TSA)では、空港内を動きまわる不審者を身ぶりなどから判断する「行動検出プログラム (behavior detection program)」を導入して警備にあたっています。しかしその実効性めぐっては、職員の中からも「科学的な根拠がない」など疑問視する見方が挙がっています。

Bad Trip: Debunking the TSA's 'Behavior Detection' Program | American Civil Liberties Union

https://www.aclu.org/report/bad-trip-debunking-tsas-behavior-detection-program?redirect=bad-trip

TSA knows its airport behavior detection program is ineffective | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2017/02/tsa-knows-its-airport-behavior-detection-program-is-ineffective/

アメリカで制定されている情報公開法(Freedom of Information Act: FOIA)に基づいてアメリカ自由人権協会 (ACLU)がTSAの文書を入手して作成した報告書によると、文書には行動検出プログラムの実効性に疑問を投げかける声が内部から多く挙がっていることが記されているとのこと。このプログラムには、過去10年間で15億ドル(約1700億円)の予算をかけて全米176の空港に3000人のスタッフが配置されています。

(PDF)dem17-tsa_detection_report-v02.pdf



このプログラムは、空港内において緊張状態や恐怖、ごまかしなどの兆候が見られる人物を行動から見つけ出し、調査と尋問を行うというもので、2001年のアメリカ同時多発テロが起こったことを受けてテロリストをあぶり出すことを目的に導入されています。しかし、その手法をめぐっては科学的でない、効果的でない、予算の無駄遣いなどといった問題点が指摘されてきたとのこと。さらには、職員による判断が人種差別的な色合いを帯びているとする指摘が挙がるに至るなど、さまざまな角度から問題が噴出する状況に陥っている模様。

ACLUはこの調査報告書を公表するにあたり、「学術的な研究およびTSAの内部資料から、行動検出プログラムは非科学的で信頼性の低いものであるという見方が裏付けられています。TSAは複数回にわたって連邦議会議員および政府説明責任局(Government Accountability Office:GAO)に対して行動検出プログラムの科学的な有効性を過剰評価してきました」と、否定的な見方を示しています。



By Wayne Surber

これに対しTSAは、空港内のテロリストを行動や言語的な要因から特定するSPOT(Screening of Passengers by Observation Techniques:乗客を観察により審査する技術)プログラムの効果を擁護する、次のようなコメントで反論しています。

「TSAの行動検出プログラムのアプローチは、行動により示されるサインや心理学的なしきい値を用いた客観的なプロセスをもとに、悪意のある目的を有するなどリスクの高い人物を特定して接触し、さらなる安全審査へと進めることを目的に計画されています。これは、公共輸送に対する脅威を軽減するためにTSAが行っている取り組みの一つの要素であり、航空に脅威を与えようとする意図を持つ人物を抑止、検知、妨害するために重要なTSAのシステムです」



By Nick Gray

今回のACLUの報告書に先立つこと4年前、政府説明責任局は、TSAがプログラムの有効性を証明するプロセスについて不備があることを2013年に指摘していました。その当時に行われた400件の調査では、実際に他人をだまそうとする行動を取っていた人物を見つけられる確率は、コイントスで表と裏を言い当てるのと同程度でしかなかったとのこと。また、同局が2011年から2012年の実態について調査したところ、49の空港でおよそ8700名の人物が疑いありとして調査を受け、365人が逮捕されるに至っていますが、その大部分は薬物関連の犯罪か不法入国に関する罪を犯している者であり、テロリストではなかったことが明らかになっていたとのことです。



By Chris Davis