中朝国境地域に住む北朝鮮の人々は、中国キャリアの携帯電話を使い、中国や韓国との通話を行なってきた。金正恩党委員長は、これを国内への情報流入、国外への情報流出の元凶と見て、取り締まりを強化するよう繰り返し指示してきた。

しかしいくら指示を出しても、根絶には至っていない。それどころか今年に入ってからは、通話量がむしろ増えつつある。その訳を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、中国や韓国への通話は過去と比べて難しくなっており、今年に入ってからは国境の統制も厳しくなったのは事実だが、通話をしている人は意外と多いと述べている。

昨年までは、通話が摘発されると重罰を免れなかったが、平壌の国家保衛省(秘密警察)が各地方の保衛部に上納金を支払うよう指示を出したことで、状況が変わったと情報筋は伝える。

つまり、地方の保衛部は、通話を黙認する代わりにワイロを払わせ、それを上納金に当てるのだ。

両江道(リャンガンド)の情報筋も「統制は厳しい」としつつも、通話量が増えていると証言した。その7割以上が、毎月一定額のワイロを道の保衛部に納めた上で行われているものだ。

保衛部や保安署(警察署)は、通話の取り締まりを行い、携帯電話を没収しているが、ワイロを払えばすぐに返してくれるとのことだ。つまり、通話を黙認しても、取り締まってもカネが転がり込むという仕組みになっている。

通話を完全にブロックすることは、ワイロが手に入らなくなり、自分たちの金づるを失うことを意味する。表向きは厳しく取り締まるふりをして、実際には黙認しているというのだ。そのため、中央がいくら取り締まりを指示しても、根絶は事実上不可能だ。

送金ブローカーは「内部情報を流出させない」と保衛員や保安員と約束し、高額のワイロを支払うことで持ちつ持たれつの良好な関係を維持している。送金手数料が、送金額の20〜30%(韓国の北韓人権情報センター調べ)と非常に高額なため、ワイロを支払っても十分に儲かる仕組みだ。

地方の保衛部が、高額のワイロと引き換えに中国キャリアの携帯電話を貸し出すというビジネスに乗り出したケースすらある。

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脱北者団体のNK知識人連帯の調査によると、調査対象の脱北者のうち51.7%が「北朝鮮に送金したことがある」と答えている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民と連絡を取っているある脱北者は、別の脱北者と共同でブローカーを通じて北朝鮮の家族に送金しているが、その額は一ヶ月あたり2000ドル(約22万4000円)にもなるという。また、米国務省が2014年に発表した報告書によると、脱北者が北朝鮮の家族に送金する額は、少なくとも年間1000万ドル(約11億2000万円)に達することが明らかになった。

脱北者は韓国だけにいるわけではない。中国には数万人から数十万人、ロシアには1万人、欧米諸国には2000人いると言われている。彼らの送金額を含めると、北朝鮮に流入する外貨は莫大なものになると思われる。