北朝鮮当局は、自動車のドライバーが重大な交通事故を3回起こした場合、理由を問わず車両を没収するとの方針を示したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、この方針は昨年12月に人民保安省(警察庁)から示された。重大な交通事故の定義は示されておらず、情報筋は、死亡事故や、大きな損害をもたらした事故のことを指すと推測している。

人民保安省は、没収した車両を別の機関や企業所に与える方針を示しており、情報筋は「取り締まりを利用して、車両不足を解消しようという当局の意図が見え隠れする」と述べた。

北朝鮮では、個人の車両所有は認められていないが、国の機関や企業所の名義を借りて登録し、個人運送業(ソビ車)を営む人が急増している。韓国の統計庁によると、北朝鮮の車両台数は2014年の時点で27万5800台。また、2015年までの3年間で倍に増えたと言われており、交通事故も多発している。

とくに路面が凍結する冬場には事故が多い。2015年1月には、金正淑(キムジョンスク)師範大学の学生を乗せた両江道(リャンガンド)貿易局の車がスリップで横転し、14人が死亡する事故が起きている。

この方針を伝え聞いたドライバーたちは、自分の全財産である車を奪われまいと、少しでも天気や道路事情が悪ければ、車を出さなくなってしまった。そのため、運送用のトラックが不足気味になり、運送料が上がってしまった。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の別の情報筋は、今回の方針を受けて車の購入を取り止めたとし、「個人の車を奪う目的かどうかは断定できないが、ドライバーの立場からするとそう考えるのも無理はない」と述べた。全財産である車を奪うのはあまりにも罰が重すぎるということだ。

しかし、ドライバーの方にも問題は多い。

ある対北朝鮮情報筋は韓国の朝鮮日報に「交通事故の増加は飲酒運転と乱暴な運転が原因」だと述べた。中でも、金正恩党委員長からプレゼントされた高級車に乗る高級幹部がひどいという。北朝鮮では一般的な「車を持つことが富の象徴であり権力」という認識が、乱暴な運転に繋がっているという。

北朝鮮は2012年、刑法を改正し、交通事故で人を死亡させたり、財産に損失を与えたりした場合には、1年以下の労働強化刑(懲役)に、ひき逃げの場合は5年以下の労働強化刑に処す(刑法179条)という条項を新設した。また、当局は繰り返し「交通事故を起こせば厳罰に処す」との方針を示している。しかし、交通事故は一向に減らないのが現状のようだ。