――今回は誰にも相談しなかったそうですが、家族にはどんな形で報告をしましたか?
 
 家族には前もって、それとなく『行こうかな』と言っていたんですよ。『それで、どんな反応を示すかな?』と様子を窺ったら、その時は聞き流された感じで。『あ、そういう反応』 って。シーズン中だったし。
 
――現実味がないというか。
 
 たぶんそうだったんでしょうね。 でも、自分では『もう、行こう』と決めていて。最後に伝えたのは、契約する数時間前です。『今からハンコ押してくるよ、いいね』って言ったら、『ちょっと待って』って。
 
――奥さんが?
 
 はい。それで泣き出しちゃって。でも、俺は『押して来るぞ、もう行くから』って。で、子どもたちにも『もう決めたから』って言ったら、『えーっ!?』みたいな、そんな感じでし た。
 
――家族のみなさんも、川崎に愛着がありますもんね。
 
 そうですね。でも、決めるのは俺ですから。今回はチームメイトにも言わなかった。前回は(中村)憲剛さんとかに言ったんですけど。
 
――それで、みんなから慰留されたんですよね。
 
『一緒にやろう』と言われると悩むし、迷うんですよ。だから、今回は一切相談しなかった。そうしたら、俺が家を出る直前に嫁さんが憲剛さんの奥さんにLINEで連絡して、憲剛さんの奥さんが憲剛さんにLINEして、『嘉人、ちょっと待ってくれ』って。『今すぐ(契約)するな』 みたいな。でも、『俺、決めたから行きます』って。
――大久保選手も川崎に愛着を持っていて、サポーターにも感謝しているけれど、それと移籍とは別だと。
 
 まだまだ成長したいですから。あと何年やれるか分からないし、自分がどこまでできるかチャレンジしたい。とことん突き詰めたいです。
 
――ところで、大久保選手は川崎時代、FC東京と8試合対戦(J1と天皇杯)して5勝1分2敗。直近の4試合は全勝で、7ゴールも決めているんです。
 
 確かに負けたイメージはあまりないですね。むしろ、やりやすいというか。
 
――FC東京には、どんな印象を抱いていました?
 
 ポテンシャルのある選手ばかりで、外から見ていても可能性を感じさせるチームだなと。でも、何かが足りない。それはやっぱり、ずる賢さだったり、激しさだったり。ちょっと緩いところがあるなっていうのも感じていましたね。
 
――それは試合中に?
 
 そう。もう1歩、2歩寄せてくれば、俺も嫌なのに。そこで止まってしまうから、簡単に前を向かれてシュートを打たれたり、ドリブルをされたりする。そういうのは外から見ていないと分からない部分でもあるので、伝えていきたい。
 
――1月22日の海邦銀行とのトレーニングマッチでは、いきなりハットトリックを決めました。ホッとしましたか?
 
 いや、まだ始まったばかりですからね。でも、点を取れて良かったですよ。入りが良いと悪いとでは違いますから。
 
――その海邦銀行戦の3ゴールはいずれも太田宏介選手、永井謙佑選手、室屋成選手とサイドの選手のアシストからでした。実戦をこなしてみて、FC東京の攻撃のイメージ、自身の ゴールのイメージは湧きました?
 
 サイドにスペシャリストが多いですよね。みんな上手いし、クロスやパスの精度も高い。良いクロスは入ってくるから、あとは自分がいかに合わせるか。うん、イメージはできてきましたね。
 
――その練習試合では1トップで出場しましたが、トレーニング中はトップ下に入ることもありました。どちらのポジションでプレーしたいですか?