特定保健用食品(トクホ)は、テレビCMなどでもよく見掛ける。「体脂肪が気になる方に」ヘルシア緑茶(花王)や「脂肪の吸収を抑える」メッツコーラ(キリン)を試したことのある読者も多いのではないだろうか。一体、トクホとは何だろうか。
 消費者庁のウェブサイトには「からだの生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、血圧、血中のコレステロールなどを正常に保つことを助けたり、おなかの調子を整えたりするのに役立つ、などの特定の保健の用途に資する旨を表示するもの」とある。
 さらに、「特定保健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)は、食品の持つ特定の保健の用途を表示して販売される食品です。特定保健用食品として販売するためには、製品ごとに食品の有効性や安全性について審査を受け、表示について国の許可を受ける必要があります」と示している。

 トクホは、医薬品ほど厳格ではないが、人間における有効性や安全性を確認される必要がある。このデータをもとに消費者庁で認可される。果たして、問題はないのだろうか。認可が医療や保健の専門である厚労省ではなく、消費者庁であることにも疑問が残る。
 高橋久仁子・群馬大学名誉教授は、著書『「健康食品」ウソ・ホント』(ブルーバックス)の中で、認可の根拠となった論文の科学的妥当性を検証している。例えば、メッツコーラ(キリン)に含まれる難消化性デキストリンが脂肪の吸収をどれほど抑えるかという実験を行った。そこでは実験参加者10人に、日本人の1日の平均的な摂取量である脂質55グラムを食事で摂ってもらい、排泄された糞便を集め、その中の脂質量を測定した。難消化性デキストリン15グラムを摂取した群では1.44グラム、非摂取群では0.77グラムというわずかな差の結果だった。実際の商品に含まれる難消化性デキストリンは5グラムにとどまり、実験の3分の1の量であることから、実用的な意味に疑問があるとしている。

 '15年6月に登場したのが機能性表示食品だ。トクホは、人間を対象とした試験が必要であるため、製品化にはコストや技術的に中小企業にとって敷居が高かった。一方、機能性表示食品は、トクホのような人間を対象とした試験は必須ではない。しかし、機能性を表示する成分について、文献的な調査を行い、消費者庁に“届け出”をする必要がある。ポイントは、消費者庁の認可ではなく届け出であるという点だ。トクホに比べ、かなり簡単に機能性表示食品を謳える。このような簡易な制度になった背景には、機能性表示食品制度の意図が産業の活性化を目的にしているからだ。

 健康食品は、あくまで「食品」であって医薬品ではない。医薬品のように効果を宣伝できない。しかし、販売業者は、あえて行間を読ませる手法のCMを流し、過大な効果を消費者に植え付けようと必死だ。
 トクホや機能性表示食品も、メーカーが宣伝するための一つのアイコンだということを念頭に置いておくことが大切だ。その商品がどれだけの効果が期待できるのかを理解した上で、本当に自分が必要な商品を取捨選択していかなければならない。さもなければ、販売者側とって、ただの都合のよいお客さんに成り下がってしまうだろう。