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3四半期連続の減収減益とiPhoneの減速から一転、iPhoneが前年同期比5%の伸びとなり、過去最高の売上高を記録した米Appleの2016年10〜12月期決算。ところが、Appleの減収減益とiPhoneの減速は続いているという議論が広がっている。

きっかけはUnderpassの開発者であるJeff Johnson氏によるブログ記事「A Record 14 Weeks」の指摘だ。会計年度の1四半期を13週間としている場合、13週間×7日×4四半期=364日になる。1年=365日/366日に足りないので4〜5年に一度、14週間の四半期を設けて調整する。Appleは13週間を1四半期としており、昨年の10〜12月期が14週間の四半期だった。入学シーズン、ホリデーシーズンなど、ビジネスは季節的な影響を受けるので、決算における売上高や販売台数の増減は前年同期との比較が重視される。昨年10〜12月期のiPhoneの販売台数5%増は、一昨年の10〜12月期と比べた伸びだが、昨年は14週間で一昨年は13週間だった。

Appleの2016年10〜12月期の数字は以下の通り。

・売上高:783億5100万ドル (前年同期比 +3%)
・iPhone販売台数:7829万台(前年同期比 +5%)
・iPad販売台数:1308万1000台(前年同期比 -19%)
・Mac販売台数:537万4000台(前年同期比 +1%)
・サービス売上高:71億7200万ドル(前年同期比 +18%)

1週間の違いを調整して比較するために、週平均の販売台数および売上高を算出して、昨年10〜12月期を一昨年と比べると以下のようになる。

・売上高:55億9650万ドル/週 (前年同期比 -4%)
・iPhone販売台数:559万2000台/週 (前年同期比 -3%)
・iPad販売台数:93万4000台/週 (前年同期比 -25%)
・Mac販売台数:38万4000台/週 (前年同期比 -6%)
・サービス売上高:5億1200万ドル(前年同期比 +10%増)

「過去最高の四半期売上高で1年ぶりの増収、iPhoneとMacの販売台数に伸び」が、週平均の数字で比較すると「4四半期連続の減収減益、iPhoneとMacの減速ふたたび」になる。

10〜12月期が14週間だったのは規定に従った調整であり、「過去最高の四半期業績」であることに間違いはない。しかし、14週という特別な期間であったのを考えると、過去最高とするのは「ミスリーディングである」とJohnson氏は指摘している。わずか1週間だが、1四半期=13週間の1週間は7.6%に相当する。そして実際に14週間であったことが減少を増加に変えている。「メディアは忠実かつほとんど無批判にAppleのために素晴らしいニュースを拡散している。だが、それらのヘッドラインはフェイクニュースである」と手厳しい。

実は私もAppleの決算記事に「Apple、12月期決算は売上高過去最高、iPhone/サービス/Macが記録更新」というヘッドラインを付けた。今回はどのように判断するか、とても迷った決算だった。決算発表のカンファレンスコールのライブストリーミングを聞いていたのだが、Appleの表現も慎重だった。「過去最高」を強くアピールせず、「好調な四半期」「記録的な業績」というような言い方にとどまった。

カンファレンスコールでは何度か13週間と14週間に言及しており、その違いにも気づいていた。過去最高にふさわしいか、過去の数字も再チェックした。その上で、どのように判断するか。昨年9月にiPhone 7シリーズは、一昨年のiPhone 6sシリーズよりも1週間早く発売された。大きな市場に成長した中国市場での苦戦に変わりはない。それにも関わらず、グローバル規模の数字は悪くない。さらにドル高に加えて、特許訴訟に関する5億4800万ドルの支払いもあった。そうした1週間のプラスを帳消しにするような要因を考え合わせて、Appleのデバイス販売やサービス販売に活気があったかどうか。私は2015年のホリデーシーズンよりも勢いを感じて見出しに「過去最高」と入れた。

過去には逆のケースがあった。2013年度の第1四半期(2012年10月〜12月)だ。過去最高の売上高、iPhoneとiPadが過去最高の販売台数を記録した。その前年同期が14週間で、2013年度第1四半期は一週間短い13週間、それにも関わらず記録的な業績を達成した。ところが、新興市場だった中国対策となるiPhoneの廉価モデルがないことと成熟市場の飽和への懸念、PC市場減速の兆候などから、時間外取引でApple株は一時10%以上も落ち込んだ。その時に私が書いた決算記事の見出しは「Apple決算、過去最高の収益も時間外取引で株価下落」だった。短い期間で販売台数と売上高の記録を塗りかえても、市場が厳しく反応することもあるのだ。

投資家やアナリストは売上高や販売台数だけを単純に比べて評価しているのではない。決算の数字を表面的に写し取ったような決算のニュース記事が多いのは否定できないが、同じようにAppleの10〜12月期を記録的な業績と評価する決算記事になっても信頼性は様々、しっかりとした分析結果を提供しているメディアもある。Johnson氏は「フェイクニュース」と批判していたが、14週間の1四半期も真実であり、フェイクという批判は乱暴過ぎるように思う。14週間の議論で、私はAI記者が対応できるのか興味を覚えた。数字の正確さが問われ、記事が形式化しているから決算からAI記者の採用が広がっていると思うが、数字の背景まで読み取って伝えられるようになるのだろうか。Appleの昨年10〜12月期期決算や2012年10月〜12月期決算にどのようなヘッドラインを付けるのか読んでみたいと思った。

(Yoichi Yamashita)