txt:マリモレコーズ 江夏由洋 構成:編集部

現場の声を詰め込んだSHOGUN INFERNO

12G-SDIに対応したSHOGUN INFERNO。機能満載で登場した

SHOGUNという言葉を、現場で聞かない日はないといっていい。ATOMOSがこの数年間で注ぎ込んだあらゆる技術が、我々のワークフローに寄り添っているのだと思う。そして、昨年発売になったフラッグシップのレコーディングモニターであるSHOGUN INFERNOは、実に「全部入り」の機能満載で登場した。4K60p収録、10bitモニター、HDR対応、1500nit高輝度パネル、まさに次世代の仕様となっている。

SHOGUN INFERNOで記録された4K60p素材で編集

ATOMOSの意欲的な商品展開にも表れているが、昨今「レコーディングモニター」の技術的発展が著しい。従来ならば映像を記録するのはカメラ本体で、モニターはあくまでも「監視」するための機材であった。色や露出やフォーカスはもちろんのこと、フレーム内で起きるあらゆる事象を確認するために外部モニターが必要であったわけだ。実際、モニターにはいろいろな機能が求められた。波形やヒストグラムの表示、マーカーグリッドの表示や色温度の調整、時として音声レベルの確認などをOSDで表示させるなど、カメラマンが捉える情報が現場で意図とされるものかどうかを確かめるために外部モニターは今でも大切な機材といえる。

撮影現場におけるセットアップ。SHOGUN INFERNO一台で、ワークフローが一気に効率化される

そんな中ATOMOSはProResという最強のコーデックとともに、レコーディングモニターの地位を確固たるものにしたといっていいだろう。あれよあれよという間にSHOGUNの名前が浸透したのは、現場のあらゆる要求に応えていったからだ。

カメラが変わってもATOMOSは必需品

また、デジタルシネマの時代になって、デジタル一眼とレコーディングモニターとの相性がいい。もともとSDカードなどのメディアでの動画収録を実現するために、DSLRやミラーレスのカメラは、ある程度ビットレートの低いコーデックで内部収録が進む。ところが現行の多くのカメラがHDMIからのYUV非圧縮出力をもたせることで、より高画質な映像を外部モニターに委ねることができる形になっている。最近は、Logで収録できるミラーレスがある中で、LUTを付加できる機能が付いたATOMOSの商品ラインアップはもはや必需品といっていいだろう。

日本を代表する国宝3点を撮影。美術品の美しさこそ4K60pで捉えたい

ATOMOS製品を普段から使っている筆者だが、今回4K60pの撮影でSHOGUN INFERNOを投入した。システムとしては、Sony PXW-FS7と組み合わせて、S-Log3/S-Gamut3.cineによるLog収録を4K60pで撮影。最終のタイムラインは4K30pのため2倍のハイスピード撮影になるということだ。

被写体は日本の国宝3点。2017年2月5日にリニューアルオープンした熱海のMOA美術館の所蔵品だ。野々村仁清の「色絵藤花文茶壺」と、尾形光琳の「紅白梅図屏風」など、日本の美術を代表する作品である。美術品には鑑賞用の照明以外に別途照明をあてることができないため、S-Log3の利点が上手に使えたと思う。

FS7のHDMI出力をSHOGUN INFERNOに入力すると、カメラ側の出力制限で4K60pは4:2:0の8bitの記録になってしまうのだが(4K30pまでであれば4:2:2 10bit)、FS7の純正拡張ユニットであるXCDA-FS7との組み合わせでは、XCDA-FS7のSDI端子からSony独自のFS RAW形式で出力が可能になる。これをSHOGUN INFERNOのSDI入力に接続すると、自動的にFS RAWを認識しモニタリングとProRes収録が実現する。このFS RAW経由では、4K60pにおいても4:2:2 10bit収録が可能なだけでなく、FS7のSlow&Quickモードを使うと、2K 240fpsでの連続記録にも対応する。まさにSHOGUN INFERNOはカメラの記録部を超えるハイエンドのスペックを有していると言っていい。

いよいよ富士フイルムのX-T2とSHOGUN INFERNOがつながるように。これでF-LogをProResで収録できるようになった

ミラーレスとの相性抜群。いよいよX-T2にも対応

美術館での撮影でもう一台カメラを使った。それは富士フイルムのミラーレスX-T2である。昨年の発売から、人気が絶えないカメラだ。X-T2は4K30pの映像を内部で記録できる一方で、HDMIから富士フイルムの独自LogであるF-Logを4K 8bitの非圧縮で収録することが可能だ。従来のファームウェアだとSHOGUN INFERNOとの相性が悪いといわれていたが、遂に最新のSHOGUN INFERNOのファームウェアである8.11で正式対応を果たした。

SHOGUN INFERNOの入力からHDMI2.0を選択すれば、4KのF-Logが収録できる。これにより富士フイルムのミラーレスも、4Kデジタルシネマの撮影現場で重宝されることになるだろう。F-Logについてはまた別の機会でいろいろと記していきたいと思うが、富士フイルムの持つフィルムストックと色再現の技術は4K映像にもしっかりと受け継がれており、今後の活躍が楽しみである。

ファームウェアが更新。使用できるSSDメディアも一新された。またATOMOS株式会社のFacebookでは、日本語でファームウェアアップデートの情報だけでなく、活用方法など様々な役に立つ情報を発信しているので、こちらも確認しておくとよい

10bit・1500nitsが描く世界

一つ前のSHOGUNと比べると、SHOGUN INFERNOは格段に進化している。まず、10bitの1500nit高輝度パネルは、とにかく見やすく美しい。明るい海岸や、屋外の撮影時でも映像をしっかりと把握できる。もちろんリファレンスとして確認できることが外部モニターの役割だが、4Kの撮影であっても、実際は1920×1200の解像度のSHOGUN INFERNOは、あたかもそれが4Kパネルであるかと思わせるような表現力を持っている。

今回は美術品の撮影であったため、その作品の質感やディテール、さらには時代を超えてきた空気感をしっかりと捉えたいという思いが強かった。そのためPXW-FS7のモニターではもちろん監視は難しい。ところが7インチというコンパクトさにもかかわらずSHOGUN INFERNOが映し出す映像は、はっきりと、その撮影素材のクオリティの良し悪しを映し出す力を持っていると感じた。

そのパネルの見やすさは圧倒的。7インチとは思えない表現力を持つ。10bit・1500nitsはSHOGUN INFERNOの一番の武器だ。海辺でもしっかりと見える!

LUTを内蔵できることで、ワークフローが一気に効率化

特に内蔵のLUTを充てられる機能は、大変有用だ。S-Log3からRec.709への変換をSHOGUN INFERNO内で行うことで「適正露出」への確信を得ることができる。Logによる撮影は、色温度と露出が大きなカギになってくる。S-Gamut3.cineの色域の撮影をRec.709のモニターでそのまま確認すると、色味の薄い、眠い画になるので、ストレートにモニタリングするだけでは、色味や露出を監視することは不可能だ。したがってLog撮影の際は必ずLUTをかけた画でモニタリングしなければいけない。

ちなみにS-Log3/S-Gamut3.cineにおける撮影において、18%グレーを41%で露出を合わせると、S-Log3が持つ最適な諧調を得ることができる。但しダイナミックレンジの範囲を確認するだけではなく、ノイズのS/Nを稼ぐために、できるだけ光学的に露出を稼ぐ手法をとっておきたい。そんなときにSHOGUN INFERNOのパネルは現場において「最適」「最高」の露出へと導いてくれる。公開されているLUTや自作のLUTをプリセットに入れておけば、いつでもポストプロダクションへのシームレスな撮影が行えるというわけだ。最終の色味への近道が、ワークフローを大きく効率化させてくれることは言うまでもない。

LUTのON/OFFがワンタッチで行えるのがとても便利。Rec.709に変換することで露出の設定が正確に行える

次世代のフォーマット、4K60p

そして4K60pの収録が可能であることも、実に素晴らしい。これからの4K放送は60pが基準となってくるし、次世代のフォーマットとしてスタンダートになってくるのが60pの世界であろう。加えてこの4K60pの映像をProResで手にすることができるというのが大きな魅力だ。ProResにはあらゆるビットレートに合わせてLTや422、HQなどが用意されているし、さらにATOMOSのシリーズはDNxHRも記録コーデックとして準備が整っている。

今回の撮影では、国宝の重厚感を画で見せるためにあえてハイスピードで記録した。レールやハンドヘルドでの動きを少し早めに動かすことで動きを安定させて、それを2倍のスローでみせるというやり方だ。スモールユニットで4KのLogで撮影するという実に贅沢なシステムが組めるというのも、SHOGUN INFERNOがあるからこそだと思う。

4K60pの撮影の際には、使用するSSDに注意を払う必要がある。今回はSanDisk製のExtreme Proを使用した。SSDは揮発性が高く、扱いには注意が必要で、対応するSSDのリストはATOMOS社のWebページを参照してほしい。

実は2017年5月にSonyからPro用のGシリーズラインアップのSSDが発売になることになった。「ソニープロフェショナルSSD」と名付けられるこれらのSSDは最高で500MB/sの書き込み速度を持ち、Sony独自の技術で2400TBWの長寿命と高信頼性を実現した映像記録用のSSDである。もちろん4K60pをしっかりと捉えてくれる一枚になるのだが、おそらく今後はこのSSDとATOMOS製品との組み合わせが大きな安心を我々に与えてくれることになりそうだ。個人的には国内メーカーのSSD、しかもSonyのGシリーズとなれば、現場での信頼性は高まると確信している。

新しく発表されたSonyのGシリーズ、ソニープロフェショナルSSD。高速だけでなく、長寿命と高信頼性に大きな期待が注がれる。5月発売予定

ATOMOSの製品は、どれもアシスト機能が素晴らしい。これはSHOGUN INFERNOに限ったことではない。ヒストグラムやウエーブフォーム、フォルスカラー、ゼブラといった露出を監視するアシスト機能や、ピーキングや等倍・拡大表示などフォーカスのアシスト機能も「十分」なスペックだといえる。これらの表示のオン・オフ、操作などがREC中にも行えるというところも大変評価が高い。こういった有用な機能の数々が、HDR表示(Atom HDR)や4K60p記録、10bit・1500nitsパネルというハイスペックを支えているといっていいだろう。

アシスト機能が充実しているのもATOMOS製品の特長だ。十分すぎるといってもいいだろう

自分に合った一台を選ぼう

ちなみにSHOGUN INFERNOが発売になり、ATOMOSのラインアップも新しくなった。フラッグシップモデルであるSHOGUN INFERNOを筆頭に、FLAMEシリーズ、BLADEシリーズと用途に合わせて様々なモデルをピックアップできる。HDMIやSDI、HD、4Kなどといった、撮影のスタイルやスペックに合わせて相応なものを選べる。当然SHOGUN INFERNOで全てがまかなえるものの、SDIを使わない人や、4K60pが必要でない場合など、スタイルに合った一台をシステムに組み込めばいい。

ミラーレスとの相性は抜群だ。システムに合わせてATOMOSのラインアップから選べばいい

今回の撮影では、FS7の内部収録のXAVCとSHOGUN INFERNO ProRes422(HQ)の4K60p素材が同時に記録された。バックアップが得られているということも安心でありつつ、どちらもオンラインで使用が可能な画質であるということも頼もしい限りだ。

編集はAdobe Premiere Pro CC 2017を使用し、タイムライン上でLUTを充て、グレーディングを行った。撮影一日、編集一日という、信じられないほどのスピードで4K納品を果たした。HDRとしても使用できる作品制作であったことを考えれば、いやはや現場でのモニタリングの重要性が分かっていただけるだろう。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2017/02/ATOMOS_Review4_12.jpgポスプロはAdobe。ProResはもともと編集コーデックであることからも、その運用は「サクサク」だ
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総括

現場のニーズを超えるほどのスペックを持つSHOGUN INFERNO。今後PanasonicのGH5の登場で、4K60pをHDMI経由で10bit収録できるという、夢のような世界も待っている。ATOMOSのレコーディングモニターの将来に期待したいことは、広色域表示である。これから時代はBT.2020をターゲットとしたHDR(PQガンマ、HLG)に向けてワークフローが整えられていくだろう。すでにPQガンマのHDRにコンバートして出力機能を持つSHOGUN INFERNOではあるが、パネル自体が更にBT.2020表示へと進化することを期待したい。もちろん、ATOMOSの商品はどれもコストパフォーマンスが非常によく、これ以上の性能を求めることは「わがままな」かもしれないが、時代の先を行くINFERNOには是非とも夢を形にし続けていってほしい。