北朝鮮の金正恩党委員長の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏が殺害された事件が、脱北者や、対北朝鮮ビジネスに関わっている中国人に大きな衝撃を与えている。その反応を米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

脱北者でソウル在住のイ・ヨンスンさん(仮名)は、外国でもよく知られた人物だけあって、比較的安全と考えていた金正男氏が殺害されたことについて「衝撃的だった」とし、金正男氏が北朝鮮の改革開放に舵を切る人物だったかもしれないと残念がった。

そして、「権力を奪われまいと見境なく人を殺している」「実の兄なのに、どうして殺せるのか」と金正恩氏を強く非難した。

同じく米国在住のハン・バウルさん(仮名)は、金正恩氏を次のように非難した。

「腹違いの兄を殺すなんて人間じゃない。しかし、叔父も殺したほどなのだから、兄とて殺せないわけもない」

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またハンさんは、金正日党委員長の異母弟の金平日(キム・ピョンイル)氏や、金正男氏の息子の金ハンソル氏の身を案じている。

このような厳しい声は、北朝鮮から逃れてきた脱北者だからという理由もあるが、文化的な背景の方が大きいと言えよう。身内、それも血の繋がった年上の人間を殺す行為は、儒教の影響が色濃い朝鮮半島では、他の文化圏以上に激しく非難される行為だ。

羅先(ラソン)経済特区を頻繁に訪れる中国人ビジネスマンは、北朝鮮当局が、このニュースの国内での拡散を防ぐために締め付けを強めるだろうとの見方を示しつつも、北朝鮮の人々に知れ渡るのは時間の問題とし、張成沢氏の処刑より、今回の金正男氏の殺害が衝撃を持って受け止められるだろうと述べた。