CCTVオンラインが地方チャンネルとして放映する香港フェニックステレビ

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 バレンタインデーの夕方に金正男氏殺害という衝撃的な一報が衝撃を世界を走った。

 実際には前日の13日の午前中に発生した事件だったが、金正男氏は、マレーシアのクアラルンプール空港の主にLCCが離発着する第2旅客ターミナル(KLIA2)で犯人に襲撃されて病院へ搬送中に死亡したとマレーシア当局が発表した。

 そもそも今回の事件は、マレーシア発の中国語メディアが伝えているものが多い。しかし、当初、殺害方法が毒針だったのが布やスプレー噴射に変わったり、襲撃現場も搭乗口近くから自動チェックイン機前へ変わったり、容疑者として防犯カメラが捉えた北朝鮮女性とされた人物はベトナム人だったり、実行犯も2人の北朝鮮女性工作員から多国籍6人へと変更されたりと情報が錯綜しており、それを基に報じる各国マスコミも翻弄されている。

 こうした情報について、事件に関心が高い日本や韓国は大きく取り上げているが、北朝鮮と親しい中国ではどのように報じられたのか?

◆沈黙を守る政府系メディア

 日本同様に中国も地方紙や電子メディアは大きく伝えている。例えば、『時代丹東』電子版のような地方紙では、金一族の家系図や金正男氏の経歴、2001年5月の日本への密入国事件、その後の発言や行動などをかなり詳細に伝えている。大手検索エンジン「百度」でもトピックニュースとなり関連ニュースが掲載されている。

 が、政府系である『新華社』や『環球時報』は、15日もトップニュースどころか国際面でも伝えておらず沈黙しており、政府系とその他メディアで温度差がある。

 中国政府は、15日午後の外務省の定例記者会見で、「事件については我々も報道を見て初めて知った。マレーシア政府の調査進展を見守る。調査結果が出るまでコメントは差し控える」と答えた。

 中国政府が事件について何ら言及しないことからも、政府系メディアには事件について報じないように通達を出したと考えられる。

 このように考えられるのは、こんな一件があったからだ。

 15日、環球時報微博版の編集長論評が事件に触れ、「マレーシア政府が金正男氏が死が暗殺だと正式に認めるようなことがあれば、世界中が激しく非難するだろう。どのような政治闘争があっても暗殺という野蛮で過去のやり方は歴史の博物館へ収めるべきものだ」と事件を非難したのだが、その後、同論評が削除されたのである。このことからも、中国政府も神経を尖らせていることを感じさせる。

◆一般中国人は無関心

 では、一般の中国人は今回の事件をどう思っているのかというと、多くの中国人は金正男氏を知らない。金正恩党委員長や金正日総書記は中国でも知られているが、金正男氏は、表舞台に出ていないので、ほとんど知られていないのだ。金正恩党委員長の異母兄と報じられ、そんな人がいたんだという感想を持った中国人も少なくないようだ。

 その一方で、少数民族の朝鮮族は、金正男氏を知っている人が多く、長春在住の朝鮮族男性は、「金正日総書記の後継者として正恩氏が登場するまで正男氏が朝鮮を発展させてくれると期待していただけに残念です。残された息子さんは違う道で生きて欲しいですね」と話す。

 一部では、温和な性格の金正男氏は、親中的な切り札として中国政府が北朝鮮戦略のため庇護していたなどという噂もある。その噂の視点で見ると、昨年来の中韓関係の急速な悪化により、結果的に疎遠になっていた中朝関係が盛り返しつつあったことで、中国政府にとって金正男氏の利用価値が下がってしまっていたともいえる。あくまでも憶測に過ぎないが、今回の一件は、そんな「絶妙なタイミング」を見定めて起きた、、、とも考えられる。

 聯合ニュースは、金正男氏の子息など家族をすでにマカオで保護したと報じているが、別の韓国メディアでは、22歳の長男であるハルソル氏はフランスの大学を卒業後、そのままフランスに滞在していると伝えておりとこれまた情報が錯綜している。

<取材・文/中野鷹>