DMM亀山会長の儲け哲学「面白そうなビジネスが集まる環境づくりが大切」

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 エロからエコまで――。3Dプリンター、ロボット、家事代行とさまざまな事業展開で今や年商2000億円を誇る「DMM.com」。創業時から同社を率いる亀山敬司会長は、いかにビジネスを成功に導いたのか。儲けの哲学を聞いた。

◆アダルトコンテンツはもはや急成長市場ではない!?

――「最近のビジネスは少し便利になることで、急成長を遂げる」という部分があるように、DMMのオンデマンド配信はまさにその先駆けだった気がします。

亀山:DMMはもうすぐ19周年。その頃からオンデマンド配信はやっている。最初は俺が頭の中で考えていて、アダルトコンテンツを保有していたから「TSUTAYAの代わりになろう」っていう発想から始まった。レンタルビデオを雨の日に借りに行くのは大変でしょ? インターネットのほうが便利だし。当時はビジネスも比較的わかりやすかったから、発想できた。

――アダルト産業というのは今後も半永久的に儲かりそうなイメージが正直あります。それこそ“儲け”という観点で言えば、安定成長していきそうな分野であり、ほかのビジネスを手がける必要がない気がするのですが……。

亀山:もう伸びないかな。これ以上伸ばすのはけっこう大変。日本人が出演している作品だから、世界展開もちょっと難しいしね。むしろアダルトでも二次元のほうが可能性はあって、アニメなら国籍がないから世界的にいける。アニメやゲームならアダルトじゃなくても伸びると思う。最近は日本人も現実の女性よりアニメのほうが好きな人が増えていて、実際にウチも二次元のほうが売り上げは多い。いつまでも1つのジャンルにこだわるのではなく、需要のある仕事を手掛けていかないとね。そういう意味で『艦これ』とか『刀剣乱舞』とかみんなが好きなものを手掛けられた。俺はやったことないけど(笑)。

――あれほどの人気ゲームを手掛け、やったこともないのに投資できる発想はどこにあるんですか?

亀山:30分くらいはやったよ(笑)。でも、『艦これ』は「女のコが戦艦になる」とか言われても意味がわからない。わからないから「あるかもね」とは思った。そのビジネスが“当たる”かどうかはわからないけど、“当たらないもの”はわかるんだよね。あとは「アイデアが良くても君にはできないよね?」みたいに、人で判断することもある。アイディア的な部分と人的な部分、その両方の条件を満たしたビジネスの中から“当たらない”ものを外して、あとは打って出るだけ。だから、儲からなかった失敗企画もいっぱいあるよ。でも、別に後悔はない。失敗は失敗でしょうがない。1回1回悩んでも仕方ないし。最近は歳とってくると忘れっぽくなるから楽なんだよ(笑)。

――事業の多くは企画の吸い上げからスタートするわけですね。一方で、急成長するアフリカ市場への進出を見込んで立ち上げた『DMMアフリカ』のような事業もあります。こちらは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

亀山:4年に一度、仕事を忘れて海外に一人旅をするんだけど、アフリカに旅行したんだ。サバンナを見にね。で、仕事のこと一切考えてなかったんだけど、最後の3日間。日本に帰るために、都市部に来なきゃいけないでしょ? そのとき、アフリカの人たちがみんなスマホを見ていて、街に活気がある。その光景を見たらさ、目がチャリーンって¥マークになっちゃった。商売人が俺の運命かと思って、日本に戻って立ち上げた。さっきも話した通り、まずは不明確でも面白そうな場所に人が集まって価値が高まる。『DMMアフリカ』もそんなイメージで、「行きたい」っていう社員を行かせた。

――会長は旅行以来、アフリカは訪れたんですか?

亀山:1回も行ってない。あとは「お前ら行け!」って。遠いから自分で行きたくないもん(笑)。俺が行くよりもみんなにチャンスを与えたほうがいいでしょ。面白い場所に10人行かせると1人くらい何かを見つけるでしょ。で、ほかの企業がアフリカ進出したいってときに、相談にのるとビジネスになるわけ。その頃には、うちは人間関係が築けているからね。実際、20年前に社員にインターネットを勉強させて、自分の周りにインターネットをわかる人間が増えると、早い段階でインターネット業界を知ることができた。それと発想は同じだと思う。そうなったら、偉そうな顔できるでしょ(笑)

――新しい分野に早めに手をつけたほうが勝つということですか?

亀山:負けるときもあるけどね。ただ、勝つかどうかはわからないけど、今の仕事で利益に余裕が出たら、先のありそうなビジネスに投資していくというのが大切。例えば、今ならFXやゲーム事業で利益を出している間に、何年後に来るかわからない3Dプリンターに投資するみたいなことだよ。

 余裕があるうちに挑戦していかないと、みんな飲み代に消えちゃうでしょ。いいマンション買っちゃったりね(笑)。それなら、後々化けるかもしれないビジネスに投資したほうがいい。利益は全部投資に回してもかまわない。儲ける仕組みを作り続けないと。「俺はいつでも儲けられるけど、お金持ってない」ってのが一番強いよね。

――上場企業では内部留保する企業が増えています。DMMはそうした会社とは違う?

亀山:今多いよね、そういう会社。ビジネスというのは投資してから、5年後か10年後に芽が出るかもしれないってものが多い。でも、上場企業は毎年の決算で評価されるから、気軽に投資ができない。ウチは上場企業じゃないから、株主の顔色を見ず気楽にやれる。それで、『DMM.make AKIBA』や『DMMプラネット』を作ったけど、やったら結構ウケるわけ。儲からないし思った以上に赤字だから「やめようかな」って思ったら「いいことやりますよね」って褒められる。ただでさえエロを売って評判悪いから、少しは良いこともしておかないとね(笑)。

――それは、非常にやめにくいですね(笑)。今後も赤字が続いたとしてもやっていくということですか?

亀山:社会が求めていることをやるのも悪くない。例えば最近始めた『DMMアカデミー』は学歴構造とか機会格差を無くす目的で始めたわけだけど、後々儲かるという気持ちもある。もちろん何年も先だろうけど、会社にゆとりがあるなら社会的に支持されることをやっていたほうが、会社も人生も良くなると思うんだよね。さっきの若い連中が面白いものを作って人を集めるのと一緒。一応支持されることをやってると、後々良くなるという気持ちでやっている。まあ、これは一時的な気の迷いかもしれないけどさ(笑)。

――目先のことばかり考えずに将来性を考えるということですか?

亀山:個人でもそう。明日食べていくのに必死な人は、勉強しようとか考えないでしょ?『DMMアカデミー』で衣食住を用意してやるから「東京来いよ」って言うと、とりあえず安心できる。で、明日食えるなら勉強してみようかなって思う。そうしないと、大きく儲けようってやつも育たない。機会と予算を与えて「1回やってみたらいいよ」って背中を押してやるのが俺の仕事かな。

――『DMMアカデミー』はまさにそうした考えのもと、実行されている事業だと思います。そのなかで、会長の中ではビジネスで結果を出す猶予期間は決めているのですか?

亀山:期限は別に決めないよ。例えば、DMM英会話とかもどんどん海外へ進出しているけど赤字。将来儲かるみたいな思いはあるけど、別にトントンでもいい。それよりも、世界各国に講師を持ってくれれば、次のグローバル展開がやりやすいとか、広がりがある。そういうネットワークができれば、赤字だろうと続けていく。

 『DMMアカデミー』であれば、そこで勉強した人の中から意外と儲けるやつが誕生するかもしれない。または、卒業生が「お世話になりました」って恩を感じて、俺に仕事を持って来てくれるかもしれないしね。そんな美味しいことを期待している(笑)。

◆「面白いビジネスができそう」という雰囲気作りが大切

――今までいろいろお話を聞いてみて、人がお金を生む=人的投資をされている印象があります。そういう仕事ができる人を集めるにはどうすればいいのでしょうか?

亀山:集めるには、気前良くしたり酒を飲ませたり(笑)。人をまとめるには恐怖という手段もあるんだけど、恐怖で抑えるのは結構しんどい。歳をとってくると、だんだんヨボヨボになるしさ。それなら、むしろ「あのじいちゃんに、昔よくしてもらったら仕方ねえなあ」って情に訴えるたほうがいいよね。怖かった人もいつか絶対にフニャフニャになるって、恐怖が消えたら恨みしか持たれない。

――一緒にいたら何か面白いことができそう、という雰囲気作りが大切ということですか?

亀山:俺というよりは会社。前向きにいろんなことやっているほうが会社としては面白いよね。稼いだからって、トップがプライベートジェットやヨット、オンナにお金を使っているより、「投資だー!」と言っていたほうがマシに見えるでしょ(笑)。社員の給料を上げてくれるのが一番かもしれないけど、未来が見えるようにしてあげるっていうのも大事。

――会長は今後のビジネスにおいて、お金を生むのに大切な要素は何だと思いますか?

亀山:最終的には信用かな。一時的に儲かるものというのはパッとしない。みんなに支持されるサービスは継続的に利益を生みやすいよね。それはアダルトであっても同じ。ウチは真面目にアダルトをやってきたから信用があるわけよ。だから、FXとか始めてもみんな来てくれるし、アダルトだけど「DMMは詐欺しないよね」みたいな雰囲気がある。それが次のビジネスにも繋がっていく。

【亀山敬司氏】
株式会社DMM.com取締役会長。1961年生まれ。19歳で始めた露天商から株式会社DMM.comを創業し、CMなどでお馴染みの企業に成長させる。ビジネスの多角化を推し進め、現在は動画配信、FX、太陽光発電、ゲーム事業などを展開している。最近はオンラインで有名人と繋がれる「DMMオンラインサロン」も運営

※同記事は2/14号週刊SPA!掲載のインタビューを再構成したものです。

(インタビュアー/杉原光徳<ミドルマン> 撮影/難波雄史 構成/石井カイジ)